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dezazine氏に弟子入り⁉︎─迂闊に始めるZINEのススメ

先日、私はあるワークショップに参加した。それは、dezazineさんが開催した、ZINEを作るものだった。

ZINE。読み方はジン。

ここ数年、何度か耳にしたことはある。はっきり覚えているのは、VTuberのぽんぽこさんが「ZINEのフェスに行ってきた」と話していたことだ。


ZINE? フェス?

それはアーティストなのか。アイドルなのか。いや、たぶん違う。私はその正体が、ずっとふわっとしたままだった。


答えは、思いのほか近くにあった。

ある日の雑談である。


きっかけは、エヴァフェスの準備で、研修生M氏こと『みわ』さんと話していたときのことだ。私は何気なく聞いた。


「ジンって本があるじゃない? みわちゃん出版関係だし、どういうものか知ってるの?」


すると返ってきたのは、予想よりもずっと核心に近い返事だった。

「私、ZINE用のアカウントも持ってて、ワークショップもやってますよ」


えっ、そうなの。

ZINEについて調べる前に、こんなにも近くにZINEを作る面白さを広めようとしている人がいたとは。灯台下暗しにもほどがある。




ZINEって何だ

では改めて、ZINEとは何か。私と同じく、『聞いたことはあるけど、説明しろと言われると困る』という人のために、いったん整理しておく。

ZINE(ジン)とは、個人や小さなグループが自主制作する小冊子のことだ。語源は「magazine」や、SFファンの自主出版物を指した「fanzine」にあり、1930年代のファン文化から始まり、1970年代後半のパンク文化で大きく広まったとされる。商業出版より自由で、少部数でも作れ、文章でも絵でも写真でも日記でも批評でも、何を載せてもよい。
要するに、自分の手で作って、自分の言葉で届ける、小さくて自由なメディアである。


……ということらしい。


「らしい」というのは、ここまで書いておいて何だが、この時点の私はまだ、分かったような分からないような顔面をしていたからである。

なので私は、ネットで予約を取り、代々木の会場へ向かった。分からないものは、行って見ればよい。だいたい私はそういう雑な方法で生きている。




何も調べないで行くと、全てが奇跡になる

会場に着くと、そこにはたくさんのZINE作家さんが出店していた。

入口でスタンプカードのようなものをもらう。購入したお店でシールをもらうと、小さな特典がもらえるらしい。


そして最初の店から、私は衝撃を受けた。

可愛い。絵がすごくいい。どこかInstagramか何かで見かけた気もする。いや、気のせいかもしれない。でも、すごく素敵だ。

やはり私は、何も調べずに行くのが好きだ。

もちろん、事前に調べて準備するのも大切だと思う。
でも私の性格だと、すべてが答え合わせになってしまうのである。最悪の場合、「調べてたところの何割しか回れなかった……」と、誰にも頼まれていない反省会を始めてしまう。

しかし、無防備で行くと良いことがある。たった一つ素敵なものに出会っただけで、「奇跡が起きた」と思えるのだ。お得な性格である。



作家さんと少しお話もできた。

イギリスのドラマ『ドクター・フー』や『シャーロック』の話をして、好きな役者の話をする。なんと穏やかで、心の躍る時間だろう。私は一冊購入し、シールをもらった。


お隣はペーパークラフトのZINE。

これもまた、すごく好みだった。どうやらCGで立体を作り、そこから型紙を起こしているらしい。へええ、と感心しつつ、これも購入。
シールももらう。


イラストと文章で描くエッセイの作家さんにも、一目惚れして買った。
シールももらう。



ある作家さんとはRGB印刷の色味について盛り上がり、リソグラフという印刷技法の話も聞いた。しかも、手頃で質の良い印刷所まで教えていただいた。優しい。
シールももらう。


次は、次は……。

そうしているうちに私は、ワークショップにたどり着く前から、すでに両手いっぱいのZINEを抱えていた。スタンプ帳のシールも三枚を超え、完全にニコニコ顔でテーブルについた。



荷物を大量に抱えて現れた私を見て、みわ氏は少し驚いていた。

そりゃそうだ。さっきまでZINEについて何も知らなかった男が、数十分で沼に転げ落ち、泥だらけで帰ってきたようなものだから。無理もあるまい。




A4サイズの沼

定刻になると、ワークショップが始まった。まず、ZINEとは何かの説明を受ける。

そのあと、山盛りの画材や説明シートなど、必要な道具を貸してもらえる。文房具どころか、心構えもアイデアもない、完全な手ぶらで参加できるのがありがたい。
実際、dezazineさんの活動は「お家にあるもので作るZINEレッスン」を掲げていて、初心者でも気軽に参加できる形をかなり意識しているようだ。


今回挑戦したのは、A4の紙一枚を折ったり切ったりして作る、小さな本。
印刷所に持っていくわけではない。自分で切って、書いて、折れば完成する。


折り参考

実に気楽だ。

いきなり「本を作るぞ」と言われると身構えるが、「A4一枚を折ります」と言われると急にできそうな気がしてくる。この心理の差は大きい。


作り方の説明を受け、紙を選び、切り方を試したら、いよいよ描くことになる。

お題は特に考えなくてもよい。今回示されたのは三つ。
「今月の私」「おすすめの春の〇〇」「あなたの好きなこと」。


お題まで示されると、ぐっと考えやすい。自由というのは、時々ちょっと広すぎるのだ。


私はなんとなく、古代遺跡について書きたくなった。

そこで、説明を入れる一ページ目に火焔土器を描き始めた。
描きながら、「この土器はシルエットにして、その中に説明を書こう」と思いつく。そうなると早い。
さらりとアウトラインを描いて、外側を塗っていく。A4のコピー用紙を挟めば、裏移りもしにくい。そういう小技がすぐ効くのも、紙の面白さだ。



ワークショップの作画時間は一時間ほど。
急がねばならない。サラーッと塗ると、次のページに移る。


そこは、やはり土偶だろう。

土偶を描き始めた。こちらはベースの紙の色を生かしたかったので、線画で進める。


三ページ目と四ページ目は見開きにしたかった。

見開きかあ。迫力を出すなら、やはり風景だろう。
私は2024年に行った、佐賀の吉野ヶ里遺跡の広大な風景を思い出しながら描いた。少しだけ色をのせる。でも、あまり描き込みすぎると時間がない。さらり、さらりと進めていく。



次のページが問題だった。

群馬県人としては、古墳も描きたい。だが、ここも見開きにすると芸がない。なので左ページに、上空から見た古墳の形を描いた。


そして残る最後の一ページ。

これが決まらない。最後にふさわしい遺跡とは何か。埴輪か。国宝の埴輪も三体ある。土偶も、まだ描きたい。しかし考え込んでいる時間はない。


何かないか。最後のページにふさわしいもの。何か。何か。


そのとき、私の頭にふと、コワモテのおっさんの顔が浮かんだ。

彼は言う。


「ジョウモニズム」


そう、岡本太郎である。

1970年の大阪万博で、「人類の進歩と調和」というテーマに対して、あの太陽の塔を突き立てた人だ。
岡本太郎は縄文土器や土偶の造形に強く惹かれ、日本の美の源流として高く評価したことで知られている。私が愛してきた縄文から続く遺跡や造形、その果てに置くなら、最後のページはもうこれしかない。太陽の塔である。

しかも、偶然にも1ページ目からここまで、時系列順(縄文→弥生→古墳)に並んでいたのだ。


最後のページの絵が決まると、いよいよ表紙に取りかかる。

もう時間がない。あまりに楽しくて熱中してしまい、光陰矢の如しとはよく言ったもので、時間がやたら早い。


そこで私は表紙をガバッと開くと、真ん中に大きく遮光器土偶の顔を描いた。

こうすれば、一枚描くだけで、半分に折ったときに表紙と背表紙が同時に完成する。子どものころからのズル賢さを、私はこういう場でのみ遺憾なく発揮する。



最後にマッキーを取り出し、タイトルにこう書いた。

imaZINE


ima studio の ZINE で「imaZINE(イマジン)」。
英語で『想像する』の imagine にもかかっている。われながら、悪くない名前だ。




⌘Zの効かない世界

少しだけ時間をオーバーして、初めてのZINE作りは終わった。

私は、心地よい疲労感に包まれていた。

クライアントさんのOKもいらない。誰のためでもなく、誰かの評価にも縛られず、ただただ描きまくる。⌘Zも効かない。拡大縮小も修正も効かない。一発勝負である。


なんか、サウナに似ていた。ほとんど何も考えない、無の解放感がある。

デジタルで作ることに慣れていると、失敗しないように、あとで直せるように、つい考えてしまう。

でも紙の上で、しかも時間制限つきで描くと、迷っている暇がない。手が先に動く。すると、思った以上に自分が出る。これはかなり面白かった。




迂闊に始める

描き終わったあと、少しだけみわちゃんに話を聞いた。

dezazineとしての活動では、多くの人が『自分にはできない』と思い込んでしまう、そのハードルを下げることを大事にしているそうだ。
だからこそ、手ぶらで来られる形にする。事前準備をいらなくする。
時間制限を設けて、迷いを捨ててもらう。

最初から完成度の高いものを目指すのではなく、まずは“小さく一冊できる”ところまで連れていく。
そういう設計が、ワークショップ全体に通っている。

Instagramでも『センス0でも表現できる』と掲げ、折本ZINEのワークショップを実際に開いている。


小さい本にも、ちゃんと意味があるのだという。

小さいからこそ、書き込みすぎない。文字が大きければ、それだけで埋まる。自分が書く字のサイズも変わる。シリーズにも展開しやすい。しかも、この折本は切り離さなければポスターにもなるらしい。


なるほどなあ、と思った。

ただ「簡単なものを作りましょう」ではないのである。小ささにも、時間制限にも、手ぶら参加にも、ちゃんと理由がある。

色々取り組みを聞いて、私はしみじみ思った。
みわちゃんの「敷居を下げる」取り組みは、すごい。


というのも、あの会場に行くと、周りの人たちが皆すごく見えるのだ。

絵も上手いし、作り込みもすごいし、「うわあ、これは参入障壁が高いぞ」と思いがちになる。SNSでも、上手い人の作品はいくらでも流れてくる。すると、つい「ああ俺って絵が下手だなあ」と思ってしまう。


でも、冷静に考えたら、別に競争ではない。
ZINEも世の中も、そういうものではなかったのだ。


そう思うと、ずいぶん気が楽になる。そして気が楽になると、人は案外、きちんと作れる。


敷居を下げる。ハードルを下げる。
私がやりたかったことと、とても似ていると思った。誰もがいきなり一等賞を目指すのではなく、まずは始めて、ひとつ終わらせるところまで持っていく。これの積み重ねで作品は増えていくし、技術も上達する。

そう考えると、ZINEというのは、案外いい入口なのかもしれない。


皆さんも、うっかりZINEを作り始めてみてはいかがだろうか。
きっと、楽しい時間を過ごせると思う。


記事:まるのすけ



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