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【サッカーW杯】ミリ知らワールドカップご飯:第08戦|エジプト料理編🇪🇬

飯田橋のピラミッド

次なる相手はエジプトである。

エジプト。
ピラミッド。
スフィンクス。
ナイル川。
ツタンカーメン。
小学生の頃から、憧れの国である。聖書も読んだ出エジプト記。

そして私は、飯田橋で Grand Pyramid という店を見つけた。

グランド・ピラミッド。

名前がもう世界遺産である。

店内に入ると、いきなり豪華絢爛だった。
壁も、椅子も、テーブルも、金色である。

黄金のスカラベ。


何かがおかしい。

ここはレストランなのか。
それとも、飯田橋に突然出現した古代エジプト系テーマパークなのか。

メニューを開く。


ファラフェル。
サンボーサ。
フールメダメス。
タッブーレ。

おお、いい。
いかにも異国の前菜たちである。

しかし、ここで私は重大な事実に気づいた。

1ドリンク制。
そして、メイン料理も必須。

しまった。

調べずに来た私が悪い。
これは最初に言っておきたい。店は悪くない。
ちゃんとメニューにも書いてある。

ただ、私は完全に油断していた。

エジプト料理をちょっと食べよう。
そんな軽い気持ちで来たのだ。

ところが、メイン料理のページを見て、私はナイル川のほとりで立ち尽くした。

一番安いメインでも、だいたい3,750円
牛の足、3,950円。
子羊のスネ肉、3,950円。

ファラオも平伏す価格である。

いや、繰り返す。
店が悪いのではない。
調べずにノコノコやって来た私が悪い。

ここはそういう店なのだ。
古代エジプトを浴びながら、きちんと食事を楽しむ店なのだ。

私は古代エジプトが好きだ。
ピラミッドも好きだし、神々も好きだし、ミイラも好きだ。書籍も読んだ。テレビ番組も見た。博物館にも足を運んだ。

たぶん、店内にいる誰よりも古代エジプトに詳しい自信がある。

それなのに私は、財布に千円札が数枚しか入っていない町人が入店してしまった。

品の良さそうなお客さんたちが、ゆったり食事をしている。この中に、財布の中身を心配しながらピラミッドを眺めている者がいるだろうか。

私のほかに。

私は涙をこらえて、グラスの赤ワインと、ファッタ カワレーを注文した。

牛の足である。

3,950円もするのだ。
牛の足でも、ヤギの背中でも、王の棺でも持ってきてほしい。

さらにグラスワインが900円。
サービス料も入る。

合計は、だいたい5,000円を超える。

5,000円。

昔だったらディズニーランドに行けたような気がする。いや、昭和の感想である。いま着ているジャケットだって5,000円くらいだった。
しかも私は、それを買うのに2日悩んだ。

つまり私は今、自分のジャケットを一着、バクバク食べようとしている。


食器入れはアヌビス神だった。

重い。

一瞬、ガラス天板に蓋を落っことしそうになって慌てた。アヌビスだって、よもや自分の体内にカトラリーを収納されるとは思わなかっただろう。


そして、料理が来た。

美しい。

リッツのようなクラッカー。
米。
トマトペースト。
そして、どろりとした何か。

これが牛の足か。

一口食べる。

うまい。

悔しいが、うまい。

トマトの酸味と、肉のコクがしっかりある。
スパイスは強すぎず、思ったよりやさしい。
エジプト料理は辛いのかと思っていたが、全体に丸い。

メニューにも、エジプト料理はスパイスやハーブを使うが、全体的にやさしくマイルドな味わい、と書いてあった。

なるほど。
たしかに、これはやさしい。

財布にはまったくやさしくないが、味はやさしい。

米もうまい。
肉のソースを受け止める。
クラッカーを割って、ソースにつける。

スープも飲む。

随分と奥ゆかしい。遠くに牛の味が聞こえる。レモンを絞る。檸檬…夢ならばどれほど良かったでしょう。

赤ワインを飲む。

葡萄酒。

やはり古代エジプトといえば葡萄酒である。
クレオパトラが真珠をワインだか酢だかに溶かして飲んだ、という話もどこかで読んだ気がする。

一瞬、ビールも迷った。
古代エジプトの労働者はビールを飲んでいた、という話もある。
ピラミッドを作った人々の飲み物だ。

しかし、私は赤ワインを選んだ。
理由は、なんとなく王家っぽかったからである。

味わっているうちに、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
これは食事というより、入場料込みのエジプト体験なのかもしれない。

そう考えると、少し納得できる。

私は飯田橋で、うっかり古代文明に入場してしまったのだ。

エジプト料理、うまい。
しかし、ピラミッドは高かった。

物理的にも、会計的にも。

記事:まるのすけ


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