【金の亀】生姜の香りと「何もしない時間」を味わう【ものみ湯賛#5】
「ものみ湯賛」
気ままな見物や旅を意味する “物見遊山” に、「湯を讃える」気持ちを込めました。
ここに綴るのは、湯の評価ではなく、湯との思い出です。
点数も星もつけません。
ただその日、湯に浸かって感じたことだけを、ふわっと湯気のように書き留めておきます。
金色の亀
赤坂の通りに、ド派手に佇む「金の亀」。

階段の脇には金の亀。
甲羅に小判が貼られ、“いかにも金運が上がりそう”な風貌をしている。

階段を上がると、そこは静かでほのかに生姜が香る異空間。スマホも、タブレットも、パソコンも触れない。あるのは、静かに流れる空気と、ほんのり甘い生姜の香り。
これは、うっかり「何もしない時間」を味わった男の記録である。
アフターフェスティバル
徹夜明けの眠い脳をシャキッとしたい。そして、あわよくば涼しいサウナのコワーキングスペースで仕事がしたい。
午後の用事の関係で東京の中心部にいた私は、サウナイキタイ(サウナ情報サイト)を開き、近場を探してみた。
今回訪れた「金の亀」は、随分と評判が良いサウナだそうで、男性専用ながらレディースデイもあり。女性からの評判も上々。
「これは行かねば」と進路を赤坂に定めたという寸法だ。
カウンターで受付を行うと「どのプランにしますか?」と質問されたので、「60分で」と答えようとした最中。
フリープラン(9:00-14:00)+サ飯セット
の文字。
1時間1800円とそこそこ高価な為、ちょっと躊躇していたのだが、生姜焼き定食が付いて3800円。
確かに高いが1500円くらいする定食も込みで時間を気にせず過ごせるなら…とフリープランにした。
「まあ、椅子でもあればそこで仕事できるしな」
そんな甘い考えがあったのだ。
しかしながら、「スマホ、タブレット含めて使用禁止」の看板を見つけるのは受付が終わったあと事。
今さら60分に変えてもらうのも気が引けるし、寝不足で判断力が鈍っていたとはいえ、後の祭りである。
かくして電子機器を取り上げられた私は、サウナと真っ向勝負で向き合わざるを得なくなる。
ソリッドな造り

中は本当にシンプル。狭い立地に作った為か無駄なものがない。
脱衣所とシャワーとサウナと水風呂。
そして整いスペースだけのミニマムな構成。温かい風呂すらもない。
そして全てが「生姜🫚」というキーワードでブラッシュアップされている。
1時間ほど生姜サウナで汗を流し、冷たい水風呂に身を沈める。
火照った体が一気に冷え、頭がすうっと澄んでいく感覚。
サウナは熱々、水風呂はキンキン。
どちらも生姜の香りが漂い、水風呂などはまるで生姜汁に浸かっているよう。豚の生姜焼きの下準備かな?…と思うほどだった。
宮沢賢治の注文の多いレストランのそれである。
天井に星が輝く、真っ暗な部屋
サウナの後は、3階の「星空ルーム」へ。
四畳半ほどの真っ暗な小部屋で、天井いっぱいにプロジェクターで星空が映し出される。
本来は有料だそうなのだが、キャンペーンか何かで無料で使えた。
畳の上で大の字になり、ぼんやりと星を見上げていると、脳の中が静まり返っていくのが分かる。
思考が止まり、ただ呼吸だけが残る。
…寝ちゃう…。
寝た。ちょっとだけ。
ハンモックとインフィニティチェア
お隣には別の整いスペース。
涼しい風が吹き抜ける空間に、ハンモックやインフィニティチェア、リクライニングチェアがずらり。
とりわけ、床に寝られる場所があるのはとても良い。
インフィニティーチェアも大好きなのだが、ゴロゴロできるってのも本当に気持ちが良いものだ。
iPhoneもMacも取り上げられて、強制的に瞑想をせざるを得ない状況に追い込まれる。
加速し続けていた思考が、穏やかなリズムに整っていくのを感じる。
大体こういう時に私はアイディアが湧く。
なので定期的にこういう環境にぶち込まれるように心がけている
舌で感じる生姜
2階と3階には、生姜の味噌汁が置いてあり、また生姜が含まれる水も提供されている。口から鼻に抜ける生姜の香りを味わいつつ、失われた水分と電解質を補う。
今回行った時には「おでんの出汁」なるものの用意されていて、これがすこぶる美味かった。生姜の香りと出汁の味わい。
これは近所のドリンクバーにも欲しいくらいだ。
昼時になると、引き換え券を持っていそいそと一階へ降りる。

店内は豚をイメージした内装で、これから豚を食べることが自ずと分かる構造になっている。


いよいよ昼食のお出ましである。


生姜の香りと豚肉の力強さが合わさる、そんな味わいだった。
満腹まで食べた、私は再びサウナに戻るのだった。
何もしない勇気
今回、流れ弾的に『何もしない』を味わう羽目にあった。
いや、“羽目”というと聞こえは悪いが、まさに人間万事塞翁が馬だ。
出たとこ勝負の練習なし一本勝負が人生である。
こんな偶然もたまにはいいもんだ。
慌ただしい日常では、「何かしなきゃ」という焦りが常にある。そんな中で、何もしない時間を過ごし、ただ自分の体と向き合うことが、案外後々良い結果を生むのかもしれない。

湯の精霊か風呂の妖怪か
しょうがないじゃない。そういう日も大切だよ。
ここは生姜だらけだけど。
──赤坂の空の下、湯さんの声が聞こえた気がした。
記事:まるのすけ
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