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【道草喰う道】クレープSucre Beurre/ブラッスリー・ヴィロン 渋谷店

過言

渋谷のうまい店についての雑談の途中で、同僚のSが急に話し始めた。


Sucre Beurreシュクレ・ブールだな」


「しゅくれ……なに?」と私は聞き返す。

「砂糖とエシレバターでさ」

「え、えしれ……バター?」

「本当に何も知らないんだな」


そう言って彼は笑いながら、そのクレープについて語り始めた。
なんでもパン屋さんがやっているクレープで、彼は「世界で一番うまい」と豪語する。

私は半信半疑で聞いていたが、tacowasa氏も「確かに旨い」と証言したので、一旦信じることにした。


いや、疑り深いわけじゃない。

「過言だなあ」と思ったのだ。だってクレープって、だいたい旨い。
でも彼らの言うにそれは、クリームもベリーもない。

ただの生地と砂糖とバター。


「そんなに旨いもんかね?」
そう呟きながら、私はその日のうちに渋谷へ向かった。



巴里

店に着くと、赤を基調にした上品で美しい外観。
まるでパリに来たようだ。(実際には行ったことがない)

窓口の小さなポップには「現金のみ」「すぐにお召し上がりください」と書かれている。
私は同僚の言うままに、「砂糖とバターのクレープ」を注文した。



しばらくして順番が来た。
渡された包みから、あたたかい香りがふわっと立ちのぼる。

焼けた生地と焦げた砂糖、バターの香りが混ざり合い、鼻の奥に届く。



ひと口かじると、私は思わずのけぞった。


「……世界一旨い」


かもしれない。


生地はしっとりとしていて芳ばしい。
バターの風味が濃厚で、砂糖が全体を品よく包み込む。

果物もクリームもない。
素材と技だけの一本勝負。


それは、まるで寿司のたたずまいだった。
外見も店もフランスなのに、心意気は無口な板前そのもの。


甘すぎず、すべてがちょうどいい。
私はその場で同僚にメッセージを送った。


「世界一旨い」

「そうだろう、そうだろう」


宇田川の通りを、私はクレープを片手に歩いた。
その瞬間、そこはシャンゼリゼ通りだった。


鉄道駅に着く前に食べ終わる。
なんの変哲もない京王井の頭線のホームで、私はまだ、パリの余韻を舌の上に感じていた。

こうして私は今日も、友人のすすめるままに“道草を喰う道”を歩いている。



記事:まるのすけ


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