友からのシンプルな問い
息子が昨年2歳になり、声で話すようになると、
何を言っているのか分からないことが増えてきました。
保育園で先生や友達の話から吸収した言葉を
声に出すことがうれしくて楽しくてたまらないというかのように、
朝からずーっと話しています。
機嫌がいい時は「とんとんとんとん、あんぱんまん~」と
ひとりで歌っています。
声で話す前は、自分の欲しいものや、してほしいことを
手話や身ぶりで表していました。
けれど、それもなくなりました。
ああ、息子は、いまは声で話すことがとってもうれしい時なんだな。
きこえる子どもを育てる、ろうの親なら誰もが通る道だなと
わたしは冷静に受け止めていました。
しかし、息子は自分がしていることに目を向けながら話すことも多く、
口を読み取ることができません。
その度、「お母さんは聞こえないから手話で話してね」
と伝えていました。
が、息子の知っている手話は少ないため、わたしに伝える術がなく、
話が分からないまま終わってしまうことも。
この状況の突破口が見つからないまま、
「わたしは聞こえないから、ゆっくり話してね」と言い続けていましたが、
だんだん苦しくなってきました。
耳が聞こえないことをわが子に「~ない」と
マイナスの意味が含まれている言葉で説明するのはつらいな・・・。
きこえる娘を育てている、ろうのママ友にその気持ちを話すと、
逆に聞かれました。
「もし、相手がきこえない子どもだったら?」
わたしはハッとしました。
息子が自分と同じろうだったら、きこえないことを
わざわざ繰り返して説明することはしないな。
その時、きこえるママ友がきこえるわが子の話が分からないことは
よくあると言っていたことを思い出しました。
その時、彼女は忙しい時は適当に相づちをうって
やり過ごすと言っていました。
確かにわたしも自分の子どもがろうで、その子が表している手話が
分からなかったとしても重大な問題として捉えないな。
そう思った時、わたしは息子の話が分からないことを、
きこえないことに結び付けて深刻になっていたんだと気づきました。
さまざまな思いが胸中を駆け巡る中、友達は質問を重ねました。
「あやちゃんは何を伝えたいの?」
「えっ?」
わたしはあまりにもシンプルな問いに戸惑いました。
(後編はこちら「おかお、みせて」の約束)
(本文は、中日新聞 2026/4/21掲載のコラムを修正したものです)
