有限表現・制約保存モデル
原系から有限モデルへ、何が保存されているかを検査する
1|目的
有限モデルによる計算では、結果が高い整合性を示すことがある。
しかし、その整合性には少なくとも二つの可能性がある。
A|表現上の必然
モデルの定義・変換・構成そのものによって、結果が一致するようになっている。
B|原系由来の制約
有限表現へ変換した後にも、元の対象が持つ制約が保存されている。
したがって重要なのは、
有限表現へ変換しても、原系に由来する制約がどこまで保存されるか
を調べることである。
2|基本モデル
対象となる原系を O とする。
そこから複数の有限表現へ変換する。
O|原系
↓
F|有限prefix
↓
P|parity表現
↓
D|path表現
↓
A|affine表現
↓
R|正規化表現
Collatzの場合、
Collatz反復
↓
有限軌道prefix
↓
parity word
↓
非負偏差path
↓
2^j T^j(n)=3^m n+c
↓
ρ=c/((2^j−3^m)n)
となる。
これを、
変換チェーン
として扱う。
3|重要な区別
変換後の数値が一致したという事実だけでは、
原系の新しい性質を発見した
とは言えない。
なぜなら、その一致が変換規則そのものから必然的に発生している可能性があるからである。
そこで各関係を、
定義的保存
定義した時点で保存される。
代数的保存
変換式・恒等式によって必然的に保存される。
構造的保存
表現を変更しても対応関係として残る。
経験的保存
有限計算では残っているが、必然性はまだ示されていない。
未確定
に分離する。
4|逆向き検査
通常は、
原系 → モデル
の方向に対象を変換する。
このモデルでは逆に、
モデル → 原系
の方向へ条件を一つずつ剥離する。
たとえば、
ρ
← affine条件
← path条件
← parity条件
← finite prefix
← 原系
と戻りながら、一つずつ制約を外す。
そして、そのたびに対象としている性質が保存されるかを見る。
5|制約剥離テスト
ある性質 Q を調べる。
Collatz研究では例えば、
Q : ρ<1
を置ける。
最初は原系に対応するすべての条件を課す。
そこから、
条件集合 C₀
↓
一条件を除去
↓
C₁
↓
さらに除去
↓
C₂
↓
…
と弱めていく。
各段階で、
C_k の条件だけから Q は依然として成立するか?
を検査する。
6|壊れ方を見る
ある段階まで
Q=true
が必然的に維持され、
条件 X を外した瞬間に
Q=false
を許す対象が生成できたとする。
その場合、
Xを含まなくても成立していた部分
→ 表現内部の必然で説明できる可能性
Xを除去した地点で初めて失われた性質
→ XがQを維持するために担っていた制約の候補
として分離できる。
重要なのは、
壊れたこと自体が結果になる
ことである。
7|Collatzへの適用
現在の対象では、
実軌道
↓
first-crossing finite prefix
↓
parity条件
↓
非負path条件
↓
affine remainder c
↓
合同条件によるn
↓
ρ
という制約群が存在する。
現在までの有限観測では、
ρ<1
が維持されている。
しかし、ここから直ちに一般的な結論を出さない。
代わりに問う。
ρ<1を成立させるために、本当に必要な条件はどれなのか?
8|具体的な剥離候補
例えば次の順序で条件を弱められる。
完全条件
実現可能なCollatz first-crossing prefix
↓
実軌道条件を弱める
parity/pathとして許容されればよい
↓
合同条件を弱める
pathから得られるcとnの結合を外す
↓
path条件を弱める
非負性だけ残す/一部を除去する
↓
first-crossing条件を弱める
最終crossingだけ要求する
↓
自由化
m,c,nを独立に動かす
各段階で、
ρ≥1
を生成できるかを調べる。
9|このモデルで知りたいこと
目的は、
ρ<1を大量に確認すること
ではない。
目的は、
どの条件を失った瞬間にρ≥1が可能になるか
を特定することである。
これによって、
数値が整っている理由
そのものを研究対象にする。
10|結果の分類
検査結果は次のように分類する。
I|構成上の必然
定義や代数だけで成立する。
II|有限構造上の必然
有限prefix・parity・pathなどの制約から導ける。
III|原系依存の制約候補
原系との対応条件を外すと初めて崩れる。
IV|有限観測
計算上は成立しているが、理由はまだ分からない。
V|未確定
有限モデルからは判断できない。
この分類によって、
観測された整合性の強さ
を区別する。
11|モデルの核心
このモデルが調べるのは、
「有限モデルは正しいか」
ではない。
また、
「有限モデルから無限を証明できるか」
でもない。
調べるのは、
原系を有限表現へ変換したとき、何が必然として残り、何が失われ、どの条件がどの性質を支えているのか。
である。
そのため、
整合する
だけでなく、
どこで整合しなくなるか
が重要な観測結果になる。
12|現在のCollatz研究での位置
これまで、
Phase 1|計算的厳密性
有限計算の独立再検算。
↓
Phase 2|代数的厳密性
affine → crossing → ordinary stopping → ρ → M/g を固定。
↓
Phase 3|制約保存性の検査
各条件を剥離し、ρ<1がどこまで維持されるかを調べる。
という流れが成立する。
Phase 3の中心問題は、
有限観測で現れているρ<1は、どこまでが構成上の必然で、どこからがCollatz原系との対応によって生じる制約なのか。
である。
ここを特定することで初めて、
有限モデルの内部整合性
と
原系から保存された制約の境界を分離する。
