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ある海外駐在員の回顧録 #2


⭐ここでは…私、ひすいが創作いたしました

 小説をお届けしたいと思います。⭐


 第ニ話  針のむしろと熱気


 美佐子は逞しい。俺が全てを白状すると、怒りをぶつけ、
罵り、泣いた。そして一日半考えた後、俺に言い放った。
「一生、家族の面倒を見てね。」
勝ち誇ったような笑顔を浮かべ、知り合いにメールやら、電話やらをし始める。美佐子は海外赴任を命ぜられたエリート社員の妻を演じ始めた。
 
 俺が飛ばされたグループ会社には日本人はいない。それどころか、英語を話すスタッフはほとんどいない。話せたとしても、お互いカタコト同士、なのに現地従業員に本社の意向を伝え、この社を動かさなければいけなかった。これまでは日本語が堪能な現地社員が、ここを仕切っていたらしいが、ヘッドハンティングされて、あっさり辞めてしまったという。まるで統制がとれていない状況だった。そして悪い噂ならぬ赤裸々な真実もここまで広がっており、人の目から逃げられた、と思っていたのは間違いだった。
 
 従業員は女性が8人、男性が5人で、明らかに女性たちは俺に敵意を持った目をしていた。現地語で、俺の目の前でヒソヒソ話を始終している状況で、不愉快極まりなかったが、とにかく『俺はここのボスだ』というスタンスだけは崩さずにいようと誓っていた。
 業務に必要ない私語は慎むようにと、男性社員のカタコト通訳を介して、現地語で伝えさせる。案の定すぐに態度は直るはずもない。
現地語を理解できないボスなのだから、当たり前か…。

俺は首都にある支社に連絡を取り、現地語のレッスンをあてがってくれるよう申し込んだ。
 
 暑いこの国では、仕事は朝早く始まり、夕方は早く終わる。眩しすぎる太陽と熱風を顔で受けながら街にあるカフェに、カンパニーカーで乗り付ける。ショーファーがドアを開けてくれる。

左遷された社員とは思えない待遇だ。

 カフェの案内係が俺の名前をチェックして、中庭を指さす。ソファで人影が動いている。逆光になっていて顔がわからない。
「こんにちハ。米田さんデスか?」
浅黒い肌の中年女が、長い爪の手を顔の横で振りながら笑いかける。
 
 英国名、ヴァネッサ。ひと目見るなり、俺の語学習得時間がぐっと縮まった気がした。週2回、このカフェでヴァネッサに現地語を学び、彼女の結婚生活の愚痴も時折りリスニングした。
 
 習い始めてから、三カ月が経とうとしていた。正面に座っているヴァネッサが、急に俺の横に座って来る。
この国の女はハングリーだ。日本人にはない強い精神。這い上がるためには、手段を選ばない人も少なくない。

ヴァネッサは俺の何が欲しいのか?

「毎回じゃなくて良いんだけど…あなたの会社を通さずに、直接、私に日本人の生徒を紹介してくれる?」

ヴァネッサはギブアンドテイクだと言った。
見返りに、表向きは『ビジネスホテル』、本当は、『現地人御用達のラブホテル』に、連れて行ってくれた。

 ヴァネッサの唇から漏れる八角と見知らぬスパイスの臭いが、俺の熱気を煽ってくる。
しばらくヴァネッサの汗を俺の体に擦り付けながら、今度はヴァネッサの過剰な営業活動を受けて、俺は…満足した。


              続く

             writing by ひすい


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宇宙ニャンズ 「毎回、同じ飯は食わねぇじぇい!」という贅沢な猫、『ジャック』にご飯を食べさせるのに苦労する毎日です。ご支援いただけたら、ありがたいです。