大阪が副首都? 奈良は首都、何回かやってますけど
大阪が副首都? 奈良は首都、何回かやってますけど
最近、「副首都」という言葉をよく聞く。
大阪を副首都に。
東京一極集中を是正する。
大規模災害などに備えて、首都機能をバックアップする。
なるほど。
国家の将来を考えるうえで、大切な議論なのだと思う。
(副音声:知らんけど)
私は都市政策の専門家ではないので、副首都構想そのものについて論じるつもりはない。
ただ奈良県民として、どうしても一つ気になることがある。
大阪が、
「副首都を目指します」
と言っている。
その隣で奈良は、
鹿せんべいを売っている。
待て。
奈良、お前、首都やったことあるやん。
奈良県、実は首都経験者です
奈良というと、世間のイメージはだいたい決まっている。
鹿。
大仏。
東大寺。
修学旅行。
柿の葉寿司。
そして、
「大阪と京都の間……ではない方」
である。
(副音声:位置関係までちょっと怪しい)
しかし歴史の教科書を開いてみると、
奈良は突然、強くなる。
飛鳥。
藤原京。
平城京。
日本史の序盤、
ほぼ奈良のターンである。
政治をやる。
法律をつくる。
寺を建てる。
外交する。
国家をつくる。
大仏までつくる。
やりたい放題である。
今でいえば、
皇居があります。
国会があります。
中央省庁があります。
国家プロジェクトもやっています。
みたいな場所だった。
それが現在、
新幹線が一本も通っていない。
どうしてこうなった。
奈良県の履歴書が強すぎる
もし奈良県が転職活動をするとしたら、履歴書はかなり強い。
【職歴】
飛鳥 政治中枢
藤原京 首都
平城京 首都
以上。
採用担当者はたぶん聞く。
「ずいぶん華々しいご経歴ですね」
奈良県。
「はい」
「その後、何をされていましたか?」
奈良県。
「1300年ほど鹿を見ています」
長い。
ブランクが長すぎる。
だが、首都経験者である。
応募条件に、
「首都経験3年以上」
と書いてあれば即戦力だ。
そんな求人はない。
しかも出戻り経験まである
さらに奈良は、
一度都がほかへ移ったあと、
また平城京に戻ってきたことがある。
還都である。
つまり、
「奈良やめます」
と言われたあと、
しばらくして、
「やっぱ奈良に戻るわ」
となった。
これは会社で言えば、
退職したベテラン社員に電話がかかってきて、
「すみません、やっぱり戻ってきてもらえませんか」
と言われたようなものだ。
奈良、
出戻り採用実績あり。
しかも呼び戻したのは、
日本国である。
これは履歴書に書いていい。
(副音声:誰に提出するねん)
ただし京都が来たら黙る
ここまで読んで、
奈良県民が調子に乗り始めたところで、
京都が出てくる。
京都は強い。
平安京。
千年の都。
御所。
文化。
ブランド。
そして何より、
自分たちが京都であることに一切の迷いがない。
奈良が、
「うちも昔、首都やってましてん」
と言ったら、
京都はたぶん笑顔で言う。
「まあ、ずいぶん昔のお話どすなあ」
怖い。
何も悪いことを言われていないのに怖い。
奈良は黙る。
鹿も黙る。
大仏も黙る。
京都とは戦わない。
これは1300年の歴史から得た知恵である。
(副音声:たぶん違う)
では大阪はどうなのか
大阪が副首都を目指している。
これは応援したい。
大阪には経済力がある。
人口も多い。
交通網もある。
新幹線もある。
空港もある。
地下鉄もある。
万博もやった。
いろいろある。
奈良には、
鹿がある。
……。
いや、
大仏もある。
(副音声:急に弱い)
しかし奈良には、大阪にもないものがある。
首都経験である。
大阪が、
「これから副首都を目指します!」
と力強く宣言する横で、
奈良はせんべいを鹿にやりながら、
「首都なら昔やったで」
と言える。
嫌な先輩である。
元首都なのに、いろいろない
あらためて現在の奈良を見てみよう。
海。
ない。
空港。
ない。
新幹線。
ない。
地下鉄。
ない。
プロ野球一軍本拠地。
ない。
IKEA。
たぶんない。
(副音声:そこは調べろ)
しかし、
世界遺産はある。
国宝はある。
大仏はある。
鹿は大量にいる。
そして首都経験がある。
ステータスの振り方がおかしい。
RPGなら、
歴史 99
文化 95
寺社 98
鹿 255
交通 23
夜遊び 7
くらいである。
完全に育成を間違えている。
そもそも奈良県民は、あまり自慢しない
不思議なのは、
奈良県民はこの経歴をあまり自慢しないことである。
「奈良はかつて日本の首都でした!」
もっと言えばいい。
東京駅あたりに巨大広告を出して、
「首都の先輩、奈良。」
くらいやればいい。
しかしやらない。
なぜなら奈良県民自身が、
そんなことを言っても
近鉄の本数が増えるわけではないことを知っているからだ。
歴史で電車は走らない。
国宝で終電は遅くならない。
大仏がいても、
大阪から帰る時間は確認しなければならない。
これが現実である。
奈良はもう、出世しなくていい
考えてみれば、
奈良はもう十分働いたのかもしれない。
日本という国ができる頃、
政治の中心になった。
都もやった。
寺も建てた。
大仏もつくった。
文化も残した。
もういいだろう。
1300年くらい休ませてやってもいい。
大阪が副首都を目指すなら、
どうぞどうぞ。
東京には首都を続けてもらえばいい。
京都には千年の都を名乗ってもらおう。
奈良は、
元首都。
しかも複数回。
この肩書で十分である。
いまさら役職定年後に、
「副首都としてもう一度頑張ってみませんか?」
と言われても困る。
奈良県。
63歳どころではない。
1300歳を超えている。
もう管理職はいい。
大阪が副首都を目指している。
東京は首都である。
京都は千年の都である。
そして奈良では、
今日も鹿が道路を横断している。
車が止まる。
鹿は急がない。
元首都の住民らしく、
堂々としている。
ひょっとすると奈良県で一番、
昔の栄光を忘れていないのは、
鹿なのかもしれない。
大阪が、
「副首都を目指します」
と言う。
奈良は特に反応しない。
大仏も動かない。
鹿も草を食べている。
ただ、心の中で少しだけ思う。
「首都?」
「ああ、それ昔、何回かやったわ」
(副音声:だから何やねん)
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