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【映画】『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』見た。


その感想を書いていく。

相変わらずネタバレ全開で書くので見に行く予定の人は閉じてください。


………………………


「ちいかわ」は断片的にしか知らない。

書店員なので年中、関連本を並べる。発注もする。

ただどういうキャラクターがいて、どういう話なのかあまりわかってない。

店に来た子どもが「ハチワレがー!」とか言ってても数多いるキャラクターのどれがハチワレだかあまりわかっていない。そんな状態のおっさん(52歳)が見た。


「なるほど」と思った。 

よく「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」の映画版が「大人でも面白い」と話題になることがある。

この『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』も「大人でも楽しめる」みたいな論評を散見した。

その上で言うと「楽しめるというか、大人でないと分からない」構造が見える。


あらすじを書く。


〈ある日、ちいかわとハチワレは空から降ってきた一枚のチラシを手にする。
「カンタンな討伐で報酬100倍」「限定スイーツやラーメンが実質無料」という内容に釣られ、ちいかわたちの先生筋にあたるラッコも交えて一同は島へ向かう。
上陸したちいかわたちを島民は歓迎するが、島には島民たちを襲うセイレーンという巨大な怪物がいた。
ちいかわたちもセイレーンに襲われ、窮地に追い込まれるが危機を脱出。島の奥地で飲食店を営む「島二郎」の助けを借りながら、セイレーンを討伐するため立ち向かう。
やがて巨大なセイレーンたちが関わる島の隠された秘密と試練が明らかになっていく…〉



小学生の頃、私はテレビで放送する「ドラえもん」が大好きで毎週楽しみに見ていた。

あるとき、ドラえもんには映画館で上映する長編があると知って父親に連れてってもらった。

が、「たしかに出てくるのはドラえもんたちなんだけど、話がよくわからなかったかな…」となることが多かった。

普段見ているTVシリーズのドラえもんは15分で勧善懲悪または因果応報的な話が展開されて一話完結するが、映画は2時間であり、壮大なストーリーが展開される。

そうなると、子どもの時は「のび太たちが遠大な出来事に介入して、ピンチになりつつドラえもんひみつ道具で挽回して敵をやっつけて、現世に戻ってくる」ということしかわからず、話の細部がどういうことなのかよくわからないまま見終わっていた。


大人になった今はよくわかる。

2時間の話にするには単純なストーリーでは余り過ぎるので、

「主人公たちが普段自分たちがいない世界(=村、国)に行き」

「その世界(村)に隠された秘密があることを知り」

「行きがかった人たちを圧制で抑圧したり、対立して恐怖を与えているエネミーと対決し」

「途中予想だにしないアクシデントが起きつつ、ひみつ道具と仲間たちの助力、奮闘で敵をやっつけ」

「現世に戻ってくる」

という構造にして、その細部に細かい演出をつけていくのがわかりやすいフォーマットになる。


今回の「ちいかわ」も基本的には同じだった。違うのは、敵にあたるセイレーンにはセイレーンなりの「村人(=島民)を襲う」理由があることが提示されることで。

そして、その原因を作った島民側にも「そうせざるをえなかった」理由が示される。かわいい絵柄で。


私はずっと横溝正史の金田一耕助シリーズみたいな話だな、と思っていた。

「八つ墓村」「犬神家の一族」はおどろおどろしい場面が見た人の印象に残るが、構造としては「閉鎖的な因習を持ったコミュニティや家族が、外部から来た人間と接触することでハレーションが起きる」である。

「ちいかわ」の世界でいうと、もともと限られたコミュニティだった島に「新住民」としてセイレーンと人魚がやってきて、そこでハレーションが起き、事件が起こる。

その争いに巻き込まれたちいかわたちは金田一耕助みたいなだな、と思っていた。


ちいかわ、島民および島二郎は結束してセイレーン を駆逐する。

セイレーンは島民たちに恐怖を与えていたので、これで解決…のような形が示されつつ、「いや本当に解決?」というモヤモヤが見る側に残される。

ちいかわたちが本来やるべきことだったのは「別の価値観を持った新移住者とどうやって共存するか」の模索だったと思うのだが、それは子ども向けアニメでは難しすぎるのだろうか。

事実、令和になっても幼児向けアニメは「アンパーンチ!」が一番人気で、結局エンタメってこれなのかな、と考えたりする。


「ちいかわは労働マンガである」という指摘を見かけたことがある。

ちいかわとハチワレは「カンタンな討伐で報酬100倍」 という島に行く途中の船の中でさえ、『草むしり検定5級』の勉強をしている。

 ちいかわの世界では資格が何より最重視されているらしい。

「夢のない世界だな」と一瞬思ったあとに「いや、むしろ『資格』が本当に個人の評価に完全反映される世界なら、それはそれで夢の世界なのか?」とも考えたりする。

世界は個人の力でどうにもならなく、どうにかできない世界であってもおいしいものを食べればちょっと幸福になる。

どうにもならない世界で祈りを込めるようにハチワレは「なんとかなれー!」と叫ぶ。

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