熱帯夜の仲良し夫婦 【シロクマ文芸部】#熱帯夜で始まる短編小説
熱帯夜にもかかわらず、妻が軽いイビキをかきながら爆睡している。最近眠りが浅いからと主治医にハルシオンを処方して貰ったと言っていた。
薬に頼るなんてと思っていたが、日中機嫌よく過ごしているところをみると睡眠の質の向上が、いかに重要かわかる気がした。
今日も東京は熱帯夜だ。なかなか寝付けない。23時か。外に出て、徒歩10分のところにある彼女のアパートへ向かおうとそっとベッドを抜け出した。
マウスウオッシュ口に含み、静かに吐き出した。
外に出た。犬を散歩している人、ジョギングしている人とすれ違った。上京したての頃、東京は眠らない町と聞いていたが、本当にその通りで今更ながら驚いてしまう。
彼女の好きなアイスを買いにコンビニに寄ろう。
起きたら、寝ているはずの旦那がいない。起きてしまった?ハルシオン飲んだのに?あれ?飲むの忘れてる?もしや?そうだ、ビール2杯呑んで、今日は寝れそうだったから、薬に頼らず、飲まないで寝た。失敗した。熱帯夜だし、今から朝まで寝れないのはしんどい。
丁度いい、旦那の浮気相手でも見に行こう。23時23分。こういう時間をみるとラッキーって思う。現行犯でどちらも捕まえてやる。髪の毛をさっととかし、まゆ毛だけ足した。
【ごめん、今日生理🩸アイシテル】しようがない、こんな日もあるさと思い、家に引き返した。コンビニによって気前よく彼女の好きなハーゲンダッツのクッキー&クリームを買ったのに。コンビニ袋の水滴が腿に当たった。ビタビタとビーサンの音だけが熱を含んだアスファルトの上に響いた。
明日があるさ明日があると適当に歌いたくなる東京の熱帯夜。するとマンションの入り口から、寝ているはずの妻が突然現れた。妻は驚く風でもなく、普通に小走りに向かってきた。慌ててコンビニの袋を見せながら言い訳をした。
「寝れなくて、コンビニ行ってきた。ハーゲンダッツ買ってきたよ」寝れないからコンビニでアイスを買ったのは事実だ。
「私も暑くて目が覚めて、きっとコンビニにでも行ったのかと思って、追っかけて来ちゃった。丁度クイックルワイパーもなくなったし。また戻って、買い物付き合って、いいでしょ?」
「いいよ、アイス食べながら歩くなんて、中学生の時以来だよね」妻がコンビニの袋を覗きこんだ。
「わーい、どれにしようかな?バーゲンダッツ?気前いいじゃん。クッキー&クリーム?私がこれ嫌いなの知ってるのに何でこれ買ったの?」
