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nako0627
たんぼのなかのレトリバー
昔、ゴールデンレトリバーと暮らしていたことがある。
どの家の子もそうだと思うが、うちの子が1番可愛い。
ふわふわとした金色の尻尾をふりふりしながら、ゴールデンは歩く。名をオリバーという。
「オリちゃん、散歩に行くよ。」
当時中学生のわたしより優に体格もよく、わたしは、ひっぱる彼にしきりに追いつこうと必死だ。
これでは、どちらの散歩だか…。
青々と茂る夏の田んぼの畦道をゴールデンレトリバーはのしりと歩く。
ちょうど散歩コースの中腹頃、閉まった酒屋さんの軒先にそれはあった。
自販機だ。
自販機って不思議だ。
例えいつもと同じ飲み物を選んだとしても、あのベンディングマシンを通って出てきたそれは、なんだかキンと冷えていて、特別な味がする。
早速お小遣いをかちゃりと入れて、私は好みのサイダーをごくりと飲み始める。うん。美味しい。
足元では散歩が中断されて、じれている金色のゴールデンレトリバーが、これまた恨めしそうな顔で見上げてくる。
ピンクの下をはっはっと出して、まるで、
「それ、僕の分はないの?」と言わんばかりだ。
「君のはこっち。」
ついであげた水をとても美味そうにゴールデンは飲む。
今でもあの田んぼのなかの自販機はあるのかな?
私は、自販機のスイッチを押すたびにきみの可愛い顔を思い出しているよ。
