日本語|「銃殺」の意味
◆「もみじ」と2日連続で言葉ネタをやるのは気が進まないが,またしても,書けるネタが何も思い浮かばず……

週刊モーニング,2025.12.4. (No.51), 講談社
◆銃で撃ち殺すから,「銃殺」。
それはそうだ。
何も間違ってはいない。
ただし,辞書によっては,こういう書き方になる。
銃殺(じゅうさつ)
(刑罰として)銃器(特に小銃)で射殺すること。
そう,「刑罰として」だ。
僕の感覚では,「銃殺」とはあくまで「銃によって "処刑する" こと」であり,死刑以外での銃による殺害は「射殺」である。
戦時下であったり,あまり民主的とは言えないどこかの国でのこととしては,誰かが十分な手続きを経ずして銃殺に処せられた,などというのはよく聞く話だが,現代日本においては,ほぼあり得ない話である(無為無策のために国民からそっぽを向かれて,危うく与党の座から滑り落ちそうになったどこかの政党の偉い人たちは,どうやら戦争がやりたくてやりたくて仕方ないようなので,2,3年も経てば,我が国も日常的に誰かが特定秘密保護法やらスパイ防止法やらで引っ張られては「銃殺」(正しい意味の方で)されるような愉快な国に「昇格」しているかもしれないが)。
ただし,定義上「射殺」には弓矢やボウガン(弩)による殺害も含まれるだろうから,犯罪統計などで厳密性を重視して,特に銃による射殺事件を専門用語的に「銃殺」とカテゴライズするならよい。
だが,日常会話レベルであれば,注釈なしで「射殺」と言えば,普通,銃による殺害に決まっているので,わざわざ「銃殺」という妙な言葉を使う必要はないと思う。
・日本刀で斬り殺すのは「斬殺」
・鈍器で殴り殺せば「撲殺」か「殴殺」
・紐で縊り殺すなら「絞殺」
だと僕は思うのだが,
「銃で殺すんだから,『銃殺』でいいじゃ〜ん」
とおっしゃる皆さんは,当然,それぞれ
「刀殺」
「鈍殺」
「紐殺」
とおっしゃるわけですよね?
ふむふむ,なるほど。
◆「銃殺」の定義として,単に「銃で殺すこと」としている辞書もある(ウィキペディアのように)んだから,べつにいいじゃないか,と言う人もありそうだが,それは,
「『御用達』には『ごようたつ』という読みもあると辞書に書いてありますよ」
とか言い出す人と同じで,辞書には,現代日本の日常会話では一般的に用いられない用法や読み方だって記載されているのだ。
なろう系などなら,失礼ながら,それほど言語感覚が鋭くないようにお見受けする執筆者さんも混ざっているから,まだわかるのだけれど,こういう商業誌や市販書籍などでも,ちょいちょい「銃殺」を見かける。人気のあるミステリ作家なんかが,当たり前のように書いていたりする。気になってしまう。
◆同様に,自分の感覚では「誤用」に相当すると感じられる用法が,普通に世間でまかり通っているなあ,と感じられる例としてはーーこれはまさに「なろう系」でとりわけよく見かけるものなのだけれどーー「頷く」の意味で「首肯する」という言葉を使うことが挙げられる。
僕の感覚では,これはもっぱら慣用句的に,納得がいかない場合などに「首肯できない」「首肯し難い」などという形で使う言葉であって,物理的に首を縦に振って頷く場合に,「頷く」という明快な言葉を退けて,わざわざ「首肯する」などと表現する意味はないと思う。
おそらくだが,誰か人気のある作家で,この誤用を頻繁にしていた人がいて,これを見かけてカッコいいと思ってしまった人たちに,どんどん「伝染」していってしまったのではないか……と想像する。
◆補足。
今回ネタをいただいた,イズミダフユキ「夜鷹ふたたび」。
先週からの新連載で,8年前に引退した元・伝説の殺し屋,今は部屋でゴロゴロしているだけの社会不適合者(33)・夜鷹サンが主人公のお話。
まだ2話目ですが,面白いです。絵も綺麗だし。
アラサー主人公の「たるんだ身体」の描写がちょい癖ツヨですが,それはそれ。

宙に飛ばした武器をノールックでキャッチ。
基本です。第2話では,これのスマホ版も。

ギャップの人。
本業では天才的で他の追随を許さないが,生活力はてんでヘッポコ……というキャラクターには,何か既視感があるなあ……と思ったら,テレビドラマシリーズ「ドクターX」の大門未知子だった。
◆ちなみに,今週の「週刊モーニング」,こんなおまけが付いています。セイレーンのBIG しおり。
かわいいだけじゃない,「ちいかわ」のダーク要素が煮詰まっている「セイレーン編」に一家言ある「ちいかわ」ファンの皆様は,ぜひ。
おっさん漫画誌である「モーニング」におまけがつくのは,きわめてレアケースだと思われます。

