節約より、自分を「包む」。寒さから身を守ることは、贅沢じゃない。
冬は、いつだって寒い。 これは昔も今も変わらないはずなのに、近頃の寒さは少しだけ、昔よりも肌に刺さるような気がします。
こどもの頃、家の中ではいつも「袢纏(はんてん)」を着ていました。中綿がぺたんこに潰れて、肘のあたりが少しテカテカになったやつ。袖を通した瞬間の、あのずっしりとした重み。腰回りのひもをぎゅっと結ぶと、背中からじわじわと自分の体温が跳ね返ってくる。すこし袢纏の独特の匂いがあった。でも、うまい言葉が探せない。
豆炭炬燵。ストーブの側が特等席。みかんの皮の香りと、ブラウン管から流れる笑い声。部屋全体を暖めるなんて発想はなくて、自分の周りだけを「守る」ことで、私たちは十分暖かかった。
今はどうでしょう。 スマートフォンに届く「電気代確定」の通知を見て、思わず指が止まります。 表示された数字は、去年の自分を軽々と超えていく。 「暖房、もう少し控えたほうがいいのかな……」 そんな迷いがよぎるのは、きっと私だけではないはずです。
けれど、節約という名のガマンで、自分をすり減らしてはいけないとも思います。若い頃なら一晩寝れば消えたはずの「冷え」は、今やじわじわと体の奥に居座り、体力を削いでいきます。 免疫がどうこうという難しい理屈はさておき、ただ、足先が冷えると心まで細くなっていくような、あの心細さが何より辛い。
風邪をひいてから後悔しても、もう遅い。 熱に浮かされて見上げる天井の重苦しさや、思うように動かない体。 治るまでの時間は、昔よりもずっと長く、苦いものになっている。それを体が一番よく知っています。
節約は、確かに大事な暮らしの規律です。 でも、寒さから身を守ることは、決して贅沢などではないはず。
自分を冷えから守ることは、そのまま自分を大切に扱うことだと思います。あの頃の袢纏が、幼い私を優しく包んでくれたように、今の私も自分をちゃんと包んであげたい。
今夜は少しだけ、我慢せずに設定温度を上げる。温かい飲み物を用意する。 そうやって自分を労わることが、これから先も元気に、機嫌よく生きるための、いちばん現実的な知恵かもしれません。
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