「のこらないもの」を残したかったわたしが、残るものに執着している
子どものころは運動が苦手だった。
だから、リレーのバトンをもらう瞬間はいつも
手にぐっしょりと汗がにじんでいた。
そんなわたしに、noteしりとりリレーが届いたのである。
モクモクさんから託されたバトンには、
「の」から始まるタイトルで書き始めてくださいとある。
走るのは遅くても、文章のリレーなら
わたしにもできるかもしれない。
……でも、締め切りは数日後に迫っていた。
(時間がない……)
焦ったわたしは、noteの下書きをあさり始めていた。
***
このエッセイは、マイキーさん企画のバトンを受けて書かせていただきました。
夕飯準備をする前に、冷蔵庫や冷凍庫の中身をチェックする。
「よし、これならいける!」と夕飯に取りかかるときの自分が重なっていた。
食材ではなく、言葉を探しているだけの違いだ。
そして、noteという名の冷蔵庫のなかに「の」の言葉を見つけたのだ!!!
残らないものほど、残しておきたくなる……その通りですね😌
写真を見ると、そのときの感情を追体験できて、さらに戻れない時間を「今」の目を通して懐かしく眺められる。
だからわたしは写真を撮るのが好きです😊
先日、ライティングコミュニティの先輩のXにこんなリプを返した。
その後で、しみじみと言葉の意味を噛み締めて、
いつかnoteに書き残しておきたいかも……と思いコピペしていたのだった。
まさかこのときのメモが、こんな形で役に立つとは思ってもみなかった。
それもそのはず。
こんな言葉のリレーが自分に回ってくるとは、
夢にも思っていなかったのだから。
縁というものはまったく不思議なものである。
話を戻すと、わたしは昔から写真を撮るのが好きだった。
心がハッと動いたとき、
その形になれない瞬間を残しておきたくなるのだ。
そのときに感じた自分の感情、空気や光、頬にあたる夕日の温もり。
それらを写真におさめる。
そうすると、どこか安心する。
安全な格納庫に冷凍保存した心持ちになる。
すると、そこにはいつもと変わらぬ日常の風景がもう戻ってきていて、
(間に合った……)と安堵している自分さえいる。
やがて時間は過ぎ去り、
忘れたころに何気なく写真を見ると、あのときの感情や風景が再び浮かび上がる。
もう戻れない時間のなかにいる「過去の自分」と、その姿を「今」から眺めている自分。
ふたりの自分が、同時に存在するような感覚。
そんな不思議な時間が愛おしくて、
無意識のうちにデジカメやスマホにおさめてきた。
食事をして、歯を磨いてお風呂に入るように。
Tシャツに染みついたまま取れなくなったコーヒーのシミのように。
写真を撮ること(記録すること)がわたしの一部であり、習性になっているのだった。
***
ところが……
残らないものを残したかったはずのわたしが、ここ最近おかしい。
どうやら最近のわたしは、
残るものに執着しているみたいなのだ。
「キャンピングカーがほしい」
それも、猛烈に。
数年前までは「いつか……」の夢だった。
でも、ビルダーさんからカタログを取り寄せ、YouTubeをみて情報を集めていたら、その欲求は膨れ上がっていくばかり。
パートナーは数年前と変わらず「いつかね……」
のスタンスを変える気はないらしい。
きっと彼は、家のローンと太陽光パネルのリフォームローンのことで
頭がいっぱいなのだろう。
(あい分かった!)
心のなかで返事をしてから、わたしは行動に移した。
ちなみに、ほしいキャンピングカーは新車1280万円。今後もっと値上がりするだろう。
そして、今のわたしには逆立ちしてもその資金がないのである。
引き寄せの法則を使うしかない!
とにかく今は、自分にできることをするだけだ。
・家中にキャンピングカーのカタログを飾った。
・会う人にキャンピングカーの話をした。
・キャンピングカーで旅する画像をAIで作り、待ち受け画面にした。
・「2029年キャンピングカー生活に近づく行動は何?」とふせんを貼った。
・宝くじを買い始めた。


しかし現実は、当たらぬ宝くじを見ては肩を落とす日々。
ついに宝くじに見切りをつけて、人生初のミニロトを買い始めたのだった。
過去の当選数字を見ながら毎週数字とにらめっこし、
メモ帳に何やら書き込んでいく嫁の姿は、さぞ滑稽なようで……
呆れた眼差しが降ってくる。
冷静に考えれば、自分でも何やっているんだろう。
もっとやることあるよね、と思う。
滑稽そのもの。欲の塊。
それでもわたしは、ありとあらゆる方向から
キャンピングカーを引き寄せようとしていた。
***
「今日の夜、ミーティングするよ」
仕事から帰ってきたパートナーが、キッチンにいたわたしに声をかけた。
はて? ミーティング???
夕食後のミーティングで彼の口から出たのは……なんと……
「ランクル売って資金つくろうと思う」だった。
たぶんそれを聞いたわたしは、彼を二度見したんじゃないかと思う。
彼にとってランクルは、まさに「愛車」なのを知っていたから。
1台目は盗難された。諦めきれず、苦渋の決断で手に入れた2台目だった。
「オレもキャンピングカーほしくなったんだよね。でもランクルもキャンピングカーも家のローンも、全部はキツイ……。何かを手放さないと。
それにオレも、やっぱりみんなで旅に行きたいし」
それまで、自分の行動を異常だと思い、
執着はときどき人間を滑稽にするとさえ思っていた。
でも、その執着のおかげで、行動に踏み出せることもある。
「欲しい」気持ちが自分を動かしていた。
そして気づけば、横で苦笑していたパートナーまで動かした。
執着って、悪いものみたいにいわれるけど、人を動かす燃料でもあるんじゃないだろうか。
キャンピングカーが欲しすぎて……。
— いさな | ebookライター×ストーリー (@isana97_) August 4, 2026
見えるところに
カタログを飾ったり、
カレンダーに
メモを貼ってみたり。
そして
宝くじを買ったりした。
「みんなでキャンピングカーで
旅したいだろう?
だからお願いだよ。ねっ、宝くじ」
パートナーがいよいよ
インコと亀にお願いをし始めた😂 pic.twitter.com/afmFXyiczc
結局わたしは昔から同じなのかもしれない。
残したいのは「モノ」ではなく、そのモノと一緒に生まれる時間なのだ。
ふと我に返りながら、思考を反芻する。
だから、本当に欲しいのはキャンピングカーではない。
その先にある、家族と旅する時間なのだと思う。
パートナーとインコ、28年生きているご長老亀を乗せて、
日本中のおいしいご飯を食べて、朝焼けや夕焼けをみながら形になれない瞬間を写真におさめる。
そうして、車に乗れないくらいおばあちゃんになったときに、傍にいるヨボヨボのおじいちゃんと昔の写真を眺めては、
「あのときは、こうだったよね、ああだったよね」と一緒に笑って、そのときにタイムスリップするような多幸感を味わいたいだけなのだ。
なんてシンプルなんだろう……。
でも、人生はあっという間に過ぎていく。中身はさほど変わらぬのに、鏡の前の自分はやけに母親に似てきた。
長いようで、じつは短い人生のなかには、キレイなことよりも泥臭くて滑稽なことがじつは多いような気もする。
それでも、そのちょっと隠したくなるような部分もまるごと含めて「わたし」という名の人生なのだ。
だから、やれるうちにできることをやっておきたい。
……なんて余韻にひたりながら、
今日もミニロトの当選番号を確認する。
やっぱりまだまだ、資金が足りない……。
***
このエッセイは、マイキーさんの「#エッセイしりとり」コンテスト2026夏の陣のバトンを引き継ぎ、参加させていただきました。
初参加なので、ドキドキとわくわくが止まりませんでした🪄
ありがとうございました。💞
わたしにバトンを手渡してくださった、モクモクさんにも感謝いたします🙏
モクモクさんの気づきの視点、自然を愛する気持ちが大好きです😊
モクモクさんとお父さまの温かいエッセイはこちら。
今の年齢になったからこそ分かる気持ちに共感する方も多いはず。
そして、わたしがバトンをお渡ししたいのが
noteといえば……ゆずさん。
noteや本に対する想いが誰よりも熱い。その熱量に憧憬してしまうほど。
この企画のラストを飾るにふさわしい方だと思い、バトンを託します!
以前、ゆずさんに選書をしていただいたこともあります。わたしにとって、忘れられない思い出となりました🥹🎫
ゆずさん、突然バトンを手渡してしまいすみません🙏
お忙しかったら、スルーしていただいてかまわないそうです。
もしバトンを受け取っていただけるなら、
わたしのタイトルの末字「る」から始まるタイトルでお願いします。
マイキーさん、モクモクさん
素敵な企画に参加する機会をいただきありがとうございました。
めっちゃ楽しかったです🤭💞
この企画の輪から、素敵な記事がたくさん生まれていくことを楽しみにしています。
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