ショートショート⑫『宇宙人達の晩餐』
極上の食材
銀河の果てに浮かぶ超時空レストラン『エデン』。
メインダイニングは、各惑星から招かれた宇宙人で満席となった。彼らは、グラスを傾けながら、今宵のフルコースの登場を待ちわびている。
スポットライトが壇上を照らした。白のコック服に身を包んだオーナーシェフ──地球での名は「神」──が穏やかな笑みを称えながらマイクの前に立った。
「本日、皆様に、ご提供させていただきますのは、厳選された極上の魂を素材としたコース料理です。私達が愛情を込めて育てた地球人の、プリっとした食感と、口の中で広がるほのかな風味をお楽しみ下さい」
テーブルには、次々と、料理が運ばれ、ゲスト達は、微細に振動する量子の結晶体──地球人の魂を堪能した。

地球人への愛
料理を味わう宇宙人達は、いずれも満足気な表情を浮かべていた。
プレアデス星人は、「 魂の波動が見事なまでに整っていますわ!」と感激している。
隣席のシリウス星人も、賛意を示すようにうなずいた。
「エントロピーの雑味がなく、慈愛の周波数でとろけそうです」
オリオン星人は、巡回しているシェフを呼び止め、「さすがです。どうやってここまで純度を高めたのですか?」と尋ねた。
シェフは静かに一礼した。
「我々は、数千年前から、何人もの調教師を地球に送り込んできました。釈迦、キリスト、老子、孔子、ソクラテス、空海、道元などなど。最近では、皆様の星の名前を拝借し、チャネリングメッセージも送っていました」
プレアデス星人とシリウス星人が顔を見合わせ微笑んだ。
「これにより、愛、感謝、道徳、利他心を学ばせ、祈り、瞑想を習慣とさせて、魂の固有振動数を上げさせたのです」
「なるほど」オリオン星人が感心した。
「我々は、健気な地球人を眺めながら、愛の波動を送り続けました。おいしくなーれ、おいしくなーれ」
シェフが指揮者のようなジェスチャーをした。

魂の選別
ベガ星人が手を上げた。
「しかし、地球人のほとんどは欲にまみれ、憎悪を顕わにする者もかなりいたはず。雑味だらけの魂の方が多かったと思いますが」
シェフは、「その通り」と言って指を鳴らした。
「そこで『最後の審判』が必要となったのです。欲望まみれの魂は、まずくて食えたものではありません。奴らは全員ふるいにかけ、『地獄』と呼ばれるプラズマ溶解炉で処分しました。今回、皆様にお出ししたのは、純粋な光を保ち、『最後の審判』で選ばれた『善なる魂』のみでございます」
宇宙人達は感嘆の声を上げ、極上の魂を舌の上で転がし、口の中に広がる、澄み切った善なる旨味を味わった。

次回の予定
食事が終盤に差し掛かった頃、アルクトゥルス星人が質問した。
「シェフ、次の晩餐会のご予定は?」
「今回、提供させていただきました地球人を、再度食材とするには、数千年の準備が必要となります」
「ああーーー」会場内に落胆の声が響いた。
シェフはその声を制するように、両手を広げた。
「ご安心下さい。別のパラレルワールドでも、今回と同様の手法で、地球人を繁殖させています。また、遠からずうちに、皆様へ、ご案内させていただきます」
宇宙人達は、賞賛の拍手を送り、次の「大収穫期」の到来を祝して、静かに杯を交した。
了
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