デジタルタトゥーを消したい アマノ文筆クラブ
甘野充 様、いつもお題をご提供頂き有難う御座います。
短編、約1900字になります。
お楽しみいただけましたら幸いです。
※ご注意
成人と未成年の少し特殊な関係性を扱っております。ご覧になる前に気になる方はお戻りください。
Claude氏にも内容上の理由で校正を断られた作品です。
「こんにちはー」
中学生位の女子が元気よく挨拶して扉をくぐった。
「あら、メイちゃんいらっしゃーい」
夕飯の支度でもしていたのだろうか、年配の女性がエプロンの裾で手を拭きながら少女を迎える。
「これママがお裾分けですって。……リンちゃんいますか?」
親に頼まれた用事もそぞろに、幼馴染のお姉さんの所在を確認する。
「リンなら部屋にいると思うわ。リーン、メイちゃんが来たわよー。さあ、メイちゃん上がって、上がって」
「はーい。おじゃましま~す」
勝手知ったる他人の家、迷わず2階へ上がっていく。
「ふふ。ホントメイちゃんリンの事好きねぇ」
「うん!大好き!!」
屈託の無い天使のような笑みが浮かんでいた。
***
ガチャ
「リンちゃーん、来たよ〜」
ドスッ
言うやいなやリンに突撃するメイ。
「うぐぅ…………メイちゃんいらっしゃい。今日も元気ね」
かなりのダメージを負ったように見える20代始めの地味ながら清潔感を漂わせた女性、リンが苦笑を浮べ少女を出迎えた。
「だってリンちゃんに会うんだから、いつだって一番の私をみてもらいたいの!」
「愛されてるわねー」
そういいつつも、まんざらでもない感じでリンは顔を綻ばせる。そのままメイの頭を撫で始める。
「うふふ〜だぁ~いスキ♡」
「有難う。私もよ」
和やかな空気が部屋に広がろうとした矢先。
「じゃあ、何で彼氏作ったの?」
さっき迄の可愛らし声から一転し殺気の籠もった声が中学生から発せられた。
「え?」
変化についていけず戸惑うリン。
「この間駅前で見たの。リンちゃんが男の人と楽しそうに手を繋いで歩いていたのを」
下から覗く目は真剣そのものだった。
「あ、あれは……」
「言い訳なんて聞きたくない!リンちゃん私と結婚してくれるって約束したのに……なのに、それなのに……」
声と共に身体が小刻みに震え始める。
「違うの、あれはただの友達で……って、メイちゃんが幼稚園のときした約束覚えてたの?」
「当たり前でしょ!私がどれだけ嬉しかったかリンちゃんにはわかんないよね!」
リンの身体に小さな爪が食い込んでいく。
「いいお嫁さんになれるようお料理や家事のお手伝いをいっぱい頑張って、リンちゃんが馬鹿にされないように勉強だって!いっぱい、いっぱい頑張って来たよ!なのに、何で!何で彼氏なんて作れるの?私いらない?ガキだから?だったら最初から結婚するなんて、夢見せないでよ!バカにして!バカにしてぇ……」
「い、痛いよメイちゃん。少し落ち着こ?ね?」
何とか納得してもらうよう落ち着かせようとするが上手くいかない。
……
沈黙破ったのはメイだった。
「リンちゃんこれ……」
メイがスマホの画面をリンに向ける。
「何?……これって!まさか!」
画面にはかなり露出過多の過激な衣装に纏った高校生ぐらいの写真で埋め尽くされていた。
「何で……メイちゃんがこの写真を……」
「偶然、SNSやってて見つけたの。これ高校生の時のリンちゃんだよね?」
「け、消して!」
「嫌よ。私の宝物だもの。家にもちゃんとバックアップ取ってあるからね?それにしてもこんなえっちな格好してリンちゃんのスケベ」
青ざめた顔のリンをメイが中学生とは思えない笑みを浮べ追いつめる。
「だ、だってあの時は受験のプレッシャーで……つい、発散したくて…すぐアカウント消したハズなのに……いやぁ」
「みんなに見せたらどう思うかな?ね、リンちゃん?」
「や、やめて……表歩けなくなっちゃう……」
崩れ落ち、顔面蒼白となってメイに縋るリン。
「じゃあ、どうしてくれればいいかわかるよね?」
「……」
「そう。じゃあ明日からズット家にいる事になっちゃうね!大丈夫よ。私は毎日遊びに来てあげるからね」
「わかった……」
「リンちゃん、聞こえないよ?」
「別れる!別れて将来、メイちゃんと一緒になるから!お願いします。消してください……」
うずくまるリンに向かいメイは勝利を確信し包み込むように抱きしめる。
「わかってくれたならいいのよ。じゃあ末永く大事にしてね?リンちゃん」
その微笑みは既に中学生から成長した、一人の女のものであった。
***
メイが満足気な笑みを浮かべて帰った後も、リンは暫く表情を隠しうずくまったままであった。
やがて、背中が震え出し、暫くするとくっくと泣くような笑うような声が漏れ出してきた。
「うふ、これで、メイちゃんは私と一緒。うふ、うひ、フヒヒヒヒ……」
(メイちゃんだって大きくなれば心変わりするかも知れない。男装で協力してくれた友達には後で改めてお礼をしなければ。
あの写真まで残っていたなんて、予想外。
……でも、お陰でもっと素敵な思い出になった)
デジタルタトゥーを消したい。
……いや、消えなくて良かったかも。
「早く大きくなぁーれ」
了
