#7 なぜ“医療安全”から始めるのか?──医療安全AIで“ベテランありき"から“仕組み”で支える病院組織を作る「Loomo AI」
この記事は、ポッドキャスト「医療DX通信」第7回の書き起こし記事です。音声を聴く時間が取れない方や、資料として残しておきたい方はぜひご活用ください。
この番組は、医療介護領域にて「医療DXを加速させる」をミッションとして掲げる ispec(アイスペック) が配信しています。医療安全、医療インフラ、電子カルテといった領域で、医療DXの推進に取り組んでいます。
番組では、医療DXの最前線でキャッチした最新のニュースや政策動向をお届けします。パーソナリティーは、ispec CEOの谷村がつとめます。
谷村:
今回は、弊社が開発を進めている「Loomo AI(ルーモエーアイ)」を中心にお話しします。これは医療安全DX、つまりインシデントレポートをAIで支援するサービスです。なぜこのシステムを開発しているのか、その背景やストーリーを、今日も医療従事者のKさんとの対話形式でお届けします。
Kさん:
よろしくお願いします!
谷村:
ispecでは、Loomo AIという医療安全AIの開発を進めていて、病院の方々とお話しする機会が多くあります。それから病院以外にも、医療システムを提供している企業や起業家の方々とも対話する中で、「なんで医療安全なの…?」みたいな質問をよくされるんですよね。
病院の中では医療安全は「そりゃ大事だよね」って認識ではあると思うんです。とはいえ、はたからみると「…?メインストリームではないんじゃ?」という印象があると思うんですよね。
通常業務の中心というよりも、インシデントレポートは日常的に書く病院もあれば、何か問題が起きたときだけ書く“イレギュラー業務”として扱われることもあるのかなと。
そういったところで、「何でわざわざ医療安全をやってるの?」「インシデントレポートの領域って、そんなに課題があるの?」「会社の人からしたら儲かるの?」みたいなお話をいただくので、何でやってるのかみたいなところの背景をちょっとお話できたらなと思っています。
なぜあえて「医療安全」から始めるのか
谷村:
私たちは、インシデントレポートにおける事実関係の整理をAIが支援し、再発防止策の立案も一緒に考えられる機能を提供しています。さらに、インシデントデータの分析機能も整えて行こうとしているんですが、Kさんは、医療安全やインシデントレポートの領域にAIサービスを提供することについて、どんな印象をお持ちですか?
Kさん:
僕は病院で医療安全の業務も担当しているので、以前からAIで何とかできないかとは考えていました。生成AIが登場してからは特にそう思っていて、インシデントレポートは日本語のずらずらと並ぶ文章なので、生成AIとの相性は良いだろうと思ってはいました。
ただ…なにせ儲かりしろがないよなということも思っていまして。(笑) 医療安全の業務は、講演会を企業からお金をもらってできる分野でもないですし。何て言うんでしょう…治療に関する新技術であれば、企業も積極的に投資してくれるでしょう。新しい治療法や効率化ツールなら、メーカーに声をかければ開発してもらえるんかな、とか思うんですけど。
でも、医療安全の業務、特にインシデントレポート、報告書周りは地道で泥臭い作業なので、マネタイズが無理だよな、とか思っていたんで。なんか…本当に何でこんなところに突っ込んでるんだろう…っていうのが率直な感想です。 (笑)
谷村:
そうですよね。(笑)一応、自分の認識としては、競合の製品がない領域ではないとは思ってるので。”インシデントレポートシステム”自体が確立されていますし。ただ、 それ自体が全部の病院に100%入ってるっていうものでもないんですよね。
医療安全という業務は、病院として絶対にやらないといけないことではあって。レポートの件数に差はあるとは思うんですけど、全体としての件数がどんどん増えていってる中で、この業務量の増加は、現場の負担となっていたりもします。
それと、医療安全の本来の目的は、単にインシデントレポートの件数を増やすことでは全くないと思っていまして、そのあたりの目的も踏まえると、短期的に大きな収益が見込めるビジネスモデルではないとは思っています。
どのような思いを持って開発しているのかについて、もう少し詳しくお話しします。
Loomo AIのコンセプト──ベテランに依存する病院組織と、その限界
谷村:
インシデントレポートの話に入る前に、この製品「Loomo AI」のコンセプトについてお話しします。
私たちが最終的に目指しているのは、「ベテランありきから仕組みで支える病院へ」という転換です。インシデントレポートからはだいぶ飛躍した話に聞こえるかもしれないんですけど、最終的にはそこを実現したくて。インシデントレポートは、そのきっかけ作りという位置づけです。
Kさん:
今のコンセプトを聞くと、いわゆるナレッジマネジメントや、暗黙知を形式知化する取り組みの話なのかなという印象があるんですけど。これは結構難しい領域だと思っていて。いろんなの企業がナレッジマネジメントに取り組んでいて、成功している事例もありますが、うまくいかずに苦戦している企業の事例も見たことがあるんで。
そのあたりについて、どういう考えで進めているのか気になります。
谷村:
ありがとうございます。たとえば、院内のマニュアルなど。形式知化されたものをどう扱うかが重要だと思っているんですよね。
どちらかというと、今の病院はそもそも形式知化されていないことが多いんです。俗人性の高い組織だと思っていて、知識やノウハウは、それぞれの人の中に眠っている状態です。ベテランの方がたくさんいて、そこに若手がついて学ぶという構造はありますが、知識は個人の中に蓄積されたままになっています。特に所属長や師長といった立場の方との対話の中で、職人的に一対一で背中を見ながら、失敗しながら学んでいくというイメージが強いですね。それ自体は大切なことだと思っています。
ただ、その知識をどう形式知化していくか。その流れを作る最初のきっかけから整備していかないと、既にある知識をマネジメントしようとしても、うまくいかないのではないかと考えています。
Kさん:
なるほど。確かに企業とか自治体では、職人技術を残すためにコンサルティング会社が入って、作業工程を全て録画・記録し、それをAIで分析するといった取り組みが行われてますよね。
それに対して病院って、めっちゃ数多いですし…そんなことにお金を出すのかっていうと、当院も絶対出さないと思うんで…。まずは何かそういう機運をつくるというか、きっかけを作るという戦略は、なるほどな、と。
谷村:
実際、マニュアルや研修といった仕組み自体は病院にも存在しています。ただ、それが形骸化していたり、実際の現場業務とうまく結びついていないケースも多いと感じています。
Kさん:
具体的にはどんな例があるかって話せたりしますか?実際に見て、「ちょっとやばいな…」と感じたこととか。
谷村:
医療安全の研修についての事例ですかね…。病院によって事情はもちろん異なりますが、特に中小規模の病院では、医療安全になかなか多くのコストを割けないのが実情ですよね…。看護部長が医療安全管理者を兼務しているケースも少なくないですし。
そうなると、できることは限られてきます。例えば、どこかの業者が提供しているeラーニングの中から「直近はこれを見てほしいな〜…」というものをピックアップして届ける。
ただ、受講する側からすると「見なければいけないから見る」という感覚になりがちで、なぜ今この研修が病院にとって必要なのかが伝わりにくいんですよね。
もしかすると、看護部長の中には「最近こういう事故が多いな」という感覚値があって、それを踏まえて研修を選んでいるのかもしれない。でも、それはあくまで感覚的なもので、現場にはほとんど伝わっていない。
結局、とりあえずeラーニングを受講はしてもらえるけれど、それが自分ごととして共感を持って受け止められているかというと、このお話の医療安全の担当者も「あまりそうではない」とおっしゃっていました。
それでも、コスト面を考えると、今はこういった運用が精一杯だという話を伺ったことがあります。
Kさん:
なるほど。受ける側も、やる側の話も聞いてみて、どちらも「やらなきゃいけないからやってる」という、やらされ感みたいな印象が、外から見ても中から見ても…ありますね。(笑)
谷村:
そうなんですよね…。それからマニュアルについても結構課題があります。定期的な見直しは半年に1回、あるいは1年に1回という頻度であったりしますが、「更新しなければならないから更新する」という形になりがちです。そのタイミングで、直近で印象に残っていることや最近発生した事例は反映する。ただ、1年に1回の更新サイクルでは、1年前にあった傾向やパターンまで遡って反映することは難しい。かといって、「それなら月1回更新しよう」となると、そこまでのコストは現実的に払えない…という状況になってしまうんですよね。
マニュアル化については、正直なところ病院さんの方が弊社よりもずっとしっかりやっている印象があります。実態と全くかけ離れているわけではないですし、「こういう場合の手順はここに書いてある」というように、かなり整備されている印象はあります。
ただ、微妙なラインで実態とうまく合っていなかったり、少しずれが生じていたりするんですよね。それに、膨大なファイルが棚にばーっと並んでいて、その中から必要なものを探し出す時間もなかなか取れない、という状況もあったり…。
結局、新人研修のときはしっかり勉強すると思うんですが、それがのちのち自分の感覚値になって、「これはこういうものだよね」と業務を進めるうちに、実はマニュアルとずれているということが発生してしまう。そういった話は、いろんな病院の方とお話を伺う中で、よく耳にする課題だなと感じています。
Kさん:
「なんで安全報告書やレポートの領域から取り組むのか…?」と思っていましたけど、確かに…。今のお話を伺ってなるほどと思います。
マニュアル改定の時に思い出した事例は反映されるけれど、忘れられた事例は反映されない。本当は過去に報告書が出ていたはずなのに…。みたいな状況が起きているんですね。確かに、言われてみればそういうこと…あるなと。
谷村:
研修については、「今こういう傾向が見られるから」という背景が、もう少し定量的に把握できて、それが各メンバーにきちんと伝わるだけでも大きく変わると思うんです。「こういう意図があって、こういう事例が多いから今回この研修をやっている」「確かに最近、ヒヤリハットだけどこういうことがあったな」という認識が共有される…。それだけで、受講する側の姿勢もかなり変わってくるんじゃないかなと感じています。コンテンツ自体が悪いわけではないんですが、受講する側の姿勢をどう作るかも含めて、研修はすごい大切だと思うんです。
蓄積されたデータをしっかり分析して活用することもできますし、まずはデータを集めること自体がとても重要です。質の高いデータを集める必要がある…ただ、質の高いデータを集めるために、報告書やヒヤリハットの作成に毎回1時間もかけてくださいというのは現実的ではないですよね。そこの折り合いをどうつけていくかというところで、技術が使える、AIが使えるんじゃないかなと。
忘れられていく“現場の知見”をどう残すか
谷村:
インシデントレポートそのものを切り取っても、やっぱり時間的な負担がかかります。それに、報告した際に「これって結局、そもそも患者さんはどうだったの?」「対応したと思うけど、その後の結果が書いてないじゃん」といったやり取りが発生することもあって、「ごめんなさい、自分のミスなので…」と、少し反省文のようになってしまったり…。
本来、そのレポートはマニュアル改善や研修などのための大切な材料であるはずです。でも、それが反省文的になって心理的な負担が上がってくると、なかなか報告しようというポジティブなマインドにもなれないと思うんです。
そんな時間的負担、心理的負担に加えて、先ほどの話に挙がった”分析”についても、レベルが高いものは分析されるけれど、低いものはなかなかちゃんと集計・分析されていない。小さい病院だと、そこまで手が回らないという実情もあります。
結局、カテゴリーごとやレベルごとの推移を出して「最近ここが多いな」で終わる、みたいな。そうすると、せっかく報告しているレポートがあまり生きている感じもしないし、最初のデータが集まるところも落ちていってしまうと思うんです。
そこで、最初のきっかけのところから入っていく…つまりインシデントレポートとから参入することが、病院組織を「仕組みで支えられる病院」に転換していく上で必要なんじゃないか、という仮説を持って今取り組んでいるという感じですね。
Kさん:
なるほど。現場の人が報告してくれているレポートの背景にある気持ちや思いを、上の人が汲み取れているかというところも、課題を担っていると思います。僕は結構そこに注目していたんですけど、そこだけじゃなくて。
次に何をするかとか、実際に動くときに「こういうことがあったから、こういうアクションにつながっているんだよ」というのが、今はかなり見えにくいなと思ったんです。
そこを「こんな感じだから、こういうことになっています」という記録がちゃんと残っている状態にできれば。それが周知に使えるようになったら、確かにもうちょっと納得感を持って「これ、こういうことがあったからやらなきゃいけないよね」って思えますよね。
これって多分、組織の歴史というか、そういう類のものだと思うんですけど、やっぱりうちの病院でも「なんでこんなことしてるんだろう」っていうのがあって、「聞いたら院内に2人だけが知っているこういう事情がある…」みたいなことがあったりするんですよ。(笑)
谷村:
(笑)
Kさん:
「なにこれ…」みたいな感じで…。(笑)そこをこっそりコメントで追記したり、マニュアルに追記したりしていた時期もあったんですけど、膨大過ぎて「そんなのやってられるか…っ」って心折れちゃったんですけどね。でも、やっぱりそういうのって、簡単にできるなら絶対残しておくべきだと思うので。
すごく「なんで報告書の領域なんだろう」っていうのが結構つながって、確かにめっちゃ大事だなって思いました。
谷村:
ありがとうございます。 今の話を聞いてちょっと思い出したこと言っていいですか…?
うちの会社では、いろいろな契約書の雛形があるんですが、その中で契約書の変更履歴…つまり「どういう意図でこの文言が入っているのか」って情報が、Google Docsのコメント機能でずっと残っているんですよね。「こういう事情があってこれは追加されたんだ」というコメントがずらっと入っている。そうすると「これはこういう背景があったから…確かに消せないのか〜」というのが、人を超えて伝達されていくんです。
それって、マニュアルを見るときも同じだと思うんです。研修をやるときも「こういうインシデントがあったから、この情報が追加されたんだ」とか。「このプロセスって、一見どうでもよさそう」って思うかもしれないけど、背景を知ると「いや、これがなかったらそりゃインシデントになるわ」って納得できる。そうすると、すごくその意味が感じられるんですよね。
マニュアルは本当にシンプルな方がいいのはもちろんなんですが、そこにどれだけ意味や背景を、手間をかけずにちゃんと乗せていけるか。それをきちんと現場に還元できるかというところが、使う側、見る側の姿勢を相当変えると思うんです。それは本当に実現できるといいなと思っています。
Kさん:
や〜なんか…。うち2-3年に1回、同じことやろうとするんすよ。 なんていうか。 こういう問題がある。 これ改善できるはずだ、って。うちの院は改善に力を入れているので、それに向けて動こうとするのはとってもいいことなんですけど。
情報システム部とか医事会計とか病棟とかいろんな部署に聞きにいって、最終的に「これ…数年前にも同じことやったみたい」…ってなる。(笑)結局、もう過去に限界までやりきっていて、実際無理だったみたいな。これ何の時間だったんだ…なんてことがあります。
谷村:
(笑)いうて、人間なんで、忘れて、また思い出して…っていうサイクルはどうしても一定は起きちゃうとは思うんですけど、その幅をどれだけ小さくできるかみたいなところは、すごい大事なんだろうなと思うんで。
Kさん:
そうですね。「同じこと言い続けるのも大事」とはよく言いますけど、それって進歩がないってことでもあるんですよね。進歩していくためには、やっぱり記録を残していくしかないと思うんです。
人材不足の時代に、病院をどう“仕組みで支える”か
採用難と現場負担の時代に、病院が向かうべき構造改革
谷村:
昨今は人の入れ替わりも激しいなと感じていまして。病院もそうですけど、今って人・モノ・カネ…全ての経営資源にパンチを受けている状況だと思うんですよね。流動性が高くて、人材紹介を通じていろんなところに転職する人が増えている。小さい病院でも紹介費用だけで数千万円かかっているという話も聞きます。人員配置の基準があるのでどうしてもそうなってしまうんですが、個人的には制度自体をもうちょっとどうにかならないかなとも思います…。
ただ、現状はこの環境の中でどうしても採用しないといけない。必ずしも「欲しい人材」じゃなくても採用せざるを得ないし、海外から看護助手の方を採用したり、スポットバイトで来てもらったりするケースも徐々に増えてきています。そういう状況の中で医療の質を確保し続けるのは、かなり難しいポイントだと思うんです。
だからこそ、仕組みで支えるという発想が大事だと思っています。ベテランの方々も徐々に定年を迎えていく。でも「副看護部長もいないし、私は絶対にやめられない…」みたいな、ちょっときつい状況になっている現場も多いと思います。
もちろん、システムが入ったから全てが改善されるという簡単な話ではないです。でも、もう少し仕組みで支えられる状況にしないと、病院って「すごく稼げるから人がどんどん入ってくる!」みたいな市場ではないのは間違いないので。
それをどう支えていくかというのは、病院経営的な目線でも必要なことだと、今の情勢を見ていて考えています。
Kさん:
確かにそうですね。やっぱりお金って、医療に関しては新しい治療とか薬とか機械とかに行きがちなんですけど、でもそもそも今までやってきたことが同じようにできますか、っていうところもありますよね。
っていうか、同じじゃ駄目で、本当は質を高めなきゃいけないのに、同じことすらできてないみたいなところに、本当はもっと目を向けた方が、そもそもの医療提供体制としては良いような気がするというか。
インシデントレポートが暗黙知を形式知に変える瞬間
谷村:
病院は専門職集団であり、職能集団的な組織なので、簡単に変えられないとは思うんです。ただ、インシデントレポートには大きな意味があると思っています。それは、暗黙知が形式知へと転換されていく瞬間を捉えられるからです。
報告者に対して所属長がレビューを行い、「こういう対応がいいんじゃないか」とカンファレンスが開かれる。その中で「この対策が良さそうだ」と徐々にアップデートされていく…このプロセスが、きちんと文書として形式的に記録される機会は、実はそれほど多くないと思うんです。だからこそ、これはとても良い文化だと感じています。
あとは、情報をどれだけ生かせるか。そこで終わらせずに次に繋げられるかが肝心。そこが、暗黙知がちゃんと表出されて言語化される瞬間でもあります。その起点をうまく活用できたらと、今、インシデントレポートに取り組む中で考えています。
大事なのは、報告者に対してフィードバックが伝達されるだけでなく、それが病院の知として蓄積されていくことです。個々のスタッフがさまざまな医療行為を行う中で、また新たな暗黙知が習得されていく。それがまた病院の知として蓄積されていく…このサイクルは、インシデントレポート以外にもあるとは思いますが、日々行っている業務の中で最も大きな瞬間だと感じています。だからこそ、そこを起点にできないかと考えながら、今、取り組んでいるところです。
Kさん:
確かに、ストレスがかかる場面だからこそ、組織が変われるタイミングでもあるかもしれないですね。
谷村:
そのバランスが重要だと思っています。現状のインシデントレポートシステムって、紙でやっていた報告業務を電子化して、チェックリストを付けた形式が多いんですよね。承認フローがきちんと回るようになって、その後のRCA分析などに一応つなげられる、といった点はありますが。結局は入力フォームを提供しているだけという形になっている。
確かに、集計作業は楽になるとは思うんですが、まだまだ効率化にこだわれる部分がある。もっとアシストできる部分がないと、システムを導入する価値があまりないとも思われてしまいます。「Excelでいいじゃないか…」と。
だからこそ、技術でどこまでアシストできるのかというところが課題です。
特に、現場での医療行為そのものは、現状では技術で代替できる部分がありません。だから、裏側で仕組みをどれだけ支えられるか…そこに技術を活用できれば、良いすみ分けになるのではないかと考えています。
まだ仮説を持ちながら探索している段階なので、途中で「これは違ったな」ってなることもあるかもしれませんが…(笑)
Kさん:
そこはスタートアップの良いところですよね。(笑)
谷村:
今のところは、こういう仮説で進めてるという感じですね!
Kさん:
めっちゃ…何て言うんでしょう。ここは恐らく、これまで誰もが「マネタイズが難しい」と感じて手を出せなかった領域だと思うんです。今はまだ、全然完璧なものができているわけではないとは思うんですけど。
今後、実際に使われながら成長していって、良いものになったら、みんな嬉しいんじゃないかなと思いました。僕も嬉しいですし。(笑)
谷村:
ありがとうございます。(笑)
引き続き頑張っていきますので、ぜひ皆さんからもいろいろな知見を共有していただけるとありがたいです。
Kさん:
コンセプトや全体の繋がりについては、確かにそうだなと。具体的なシステムの内容というよりは、「なぜこれをやるのか」という部分が、理解できた気がしています。
Loomo AI Insightの構想──報告書・マニュアル・研修をつなぐ知識の循環
谷村:
終盤にさしかかってまいりましたので、今後の展望についてお話しします。
まずは「インシデントレポートのシステムの開発」…そこからスタートします。現在は、Loomo AIサービスの 「Insight(インサイト)」というサービス名称で開発を進めています。
この「insight」に続く、マニュアル管理サービスも、今後検証を続けながら追加開発する構想です。
先ほど触れたような「こういう事例があったから、このマニュアルは変更した方がいいのではないか」といった提案や、「過去にこういう事例が複数あったから、現在こういう状況になっている」といった情報をマニュアルに紐づけていく。
さらにそこから、医療安全の研修サービスにも繋げていきます。年間を通じてどのような事例が発生しているのかを把握した上で、病院として重点的に取り組むべき課題を明確にし、その状況を現場に伝えながら、具体的な対策…たとえばe-Learningなど様々なアプローチがあると思うんですけど、そうした研修をどう組み立てていくかという背景づくりにも使えるのではないかと考えています。実際のコンテンツ制作については、システムや技術側でどこまで支援できるかという課題はありますが、一定の情報が揃っていれば、それを動画化するといったことも、今のAI技術の進展を見ていると十分可能な領域だと感じています。
これらのサービスは、もちろん、人によるレビューは前提としつつも、そうした支援ができれば、暗黙知を形式知として体系化し、それを病院全体の知として蓄積する。そしてさらに研修などを通じて組織全体に還元していく…一連のサイクル全体に対して、技術側で支援できる範囲が広がっていくのではないかと考えています。Loomo AI自体も、そこまで発展させられればというのが、今後の展望です。
Kさん:
まず報告書を簡単に書けるようになっていて、それを書いたら「手順書のこの部分に追記すればいいですよ」みたいな提案をしてくれて、あとは委員会を通すだけでOK、みたいな依頼が来るということですね。
谷村:
…になればいいなと思ってます。(笑)
「この変更は、文言をこういうふうに変更しました」「ここを追記しました」「この背景はこうです」といった情報を残していく形ですね。
自分はエンジニア出身なんですけど、エンジニアはこういう管理の仕方をすごくするんですよね。履歴がどうなっているかをちゃんと追ったりとか。変更の背景だったり、変更内容の情報を含めて管理する。それって、病院にとっても重要な知見だなと思っているんです。だから「今どうなっているか」もそうですし、やっぱり「歴史」がすごく大事だと思うので。
そこも含めて、どこまでできるか、どういう形でするべきかというのはあるんですけど。エンジニアと全く同じやり方をやっても、医療現場の方はずっとパソコンに向き合っているわけではもちろんないですし。なので、やり方はいろいろ考えないといけないと思うんですけど、そこに向けて頑張っていきたいなと思っています。
Kさん:
Git管理ですね。院内文章もGit管理しましょうみたいな。
谷村:
よくご存知ですね。(笑)
実際にGitで管理するとなると現場は大変だと思うんですけど、考え方としてはすごく近いものがありますよね。
AIを活用した医療安全管理システム
医療安全に関わる皆様へ、弊社の取り組みを紹介させてください。
『Loomo AI Insight』 AIが報告から分析まで伴走する、医療安全AIアシスタント
Loomo AI Insight(ルーモ エーアイ インサイト)では、AIが現場の報告と分析をやさしくアシストします 報告内容を自動で蓄積・整理し、医療安全の観点から傾向を分析して、対策の方向性を示唆します。
番組詳細
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— 株式会社ispec (@ispec1nc) December 2, 2025
11月開催の医療情報学連合大会、ランチョンセミナー18にご参加いただき、誠にありがとうございました🙇♀️
アンケート回答にご協力くださった皆様には、11/19-20に講演資料をお送りしております🤲📄
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