見出し画像

#2 医療機関を取り巻く経営環境と、病床数適正化支援事業の全体像【書き起こし】

この記事は、ポッドキャスト「医療DX通信」第2回の書き起こし記事です。音声を聴く時間が取れない方や、資料として残しておきたい方はぜひご活用ください。

医療DX通信は、医療介護領域でシステム開発を行う株式会社ispecが情報発信する番組です。電子カルテをはじめとする医療基幹システムのクラウド化・モダナイズや、AI 活用による医療DXを手がけるispecが、医療DXの最前線でキャッチしたニュースや政策動向をお届けします。パーソナリティーは、ispec CEOの谷村がつとめます。

テーマ:医療機関を取り巻く経営環境と、病床数適正化支援事業の全体像

今回、お話しするトピックは以下の2つです。

  1. 「医療機関を取り巻く状況について」
    厚生労働省が4月23日に公表した資料から、主に医療機関の経営指標を取り上げます。
    https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001479599.pdf

  2. 「病床数適正化支援事業(病床削減の助成金)」
    同じく、厚生労働省が4月11日に発表した、病床削減を行う医療機関への支援制度について解説します。
    https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001475465.pdf

1. 医療機関を取り巻く環境(厚労省資料より)

一つ目の「医療機関を取り巻く環境」ですが、これは厚労省の鉛直医療から4月23日に出された資料でして、いろんな指標が載っていて結構おもしろいんですよ。日本の人口推移とか医療費の推移、それから1日当たりの医療費の推移なんかもあって、ザッと見ても基本的に全部が右肩上がりになっています。

病床利用率

まず気になったのが病床の使用率ですね。コロナが流行し始めた令和 2 年度あたりから一気に下がり始め、もともと80%くらいで推移していたところが、 77%、76%と落ちていき、今は 75%前後で落ち着いています。
つまり、コロナが収束したあとも入院数が戻らず、使用率が低いまま続いている。指摘されているポイントかな、という感じです。

経営状況(補助金影響を除外)

もう1つ。メインの経営状況の話です。まず病院に限定して見ていきましょう。
大抵の資料は「コロナ関連補助金を含む数値」と「除いた数値」が両方載っていますが、ここでは補助金を除いた数字だけに絞り話をしていきます。この前提で見ると、利益率は全体的にじわじわ低下中。ただし病院のタイプによって差が大きいようです。

  • 一般病院 … ▲2.7%

  • 精神科病院 … ▲1.0%

  • 療養型病院 … +1.3 %

…という具合です。つまり療養型を除けば、平均的にどの病院も赤字に転じているのが現状です。

さらに詳細にみていくと…さらに細かく見ると、とりわけ公立病院が厳しい状況です。

  • 一般病院(国公立を含む全体) … ▲6.7%

  • 一般病院(医療法人) … ▲1.3%

  • 精神科病院 … ▲4.0%

  • 一般診療所(医療法人)… +8.3%

ただ、同じ一般病院でも「民間かそれ以外か」で差がかなり大きいのが実情です。一般診療所(医療法人)いわゆるクリニックは+8.3%と、ここだけは黒字が続いている形ですね。
つまり「病院の経営が危機的状況」と言われているのは、基本的には「病床を抱える施設」を指していることになります。

費用構造(100床あたり / 2023年度)

今回の資料には収支構造の動きも載っていて、100床あたりの損益を2018年の状況と比較する形でPLがまとめられてます。

  • 収益:+10%

  • 費用:+15%

費用を押し上げる要因の筆頭は人件費(全費用の57%)となっています。更に、具体的に数値を見ていくと、以下の通りです。

  • 事業収益 16.8億円

  • 事業費用 17.1億円(うち人件費が約9.5億円、全体の57%)

収益+10 %に対し、費用+15%と伸びが上回り、医薬品・医療材料・給食費などインフレ要因も大きく影響しています。

また、このPLは2023年の数値となっているので、2024年度から本格適用されるベースアップ評価料がまだ乗っていない状態です。
職種にもよりますが、スタッフの平均年齢も少しずつ上がっていて、その分定期昇給も金額が増える見込みで、これからさらにコストが膨らむ可能性が高い状態です。

病床数適正化支援事業(4月11日発表)

4月11日、厚労省より都道府県に対し、病床削減に取り組む医療機関を支援する「病床数適正化支援事業」の配分額が通知されました。事業全体の予算は428億円で、今回計上された配分額は294億円です。対象となる病床は7,770床で、削減した病床1床あたりおよそ400万円が補助される仕組みになっています。
当初は約8,000床の申請を見込んでいましたが、実際にはおよそ5万床もの応募がありました。多くの病院が、使用していないか稼働率の低い病床を減らし、その補助金を次の施策に充てようとしている背景には、慢性的な経常赤字が続いていることがあると見られます。
本支援の対象となるのは、以下のいずれかに該当する病院に限られます。

  • 申請要件

    • 2022年度から3年連続で経常赤字を計上している。

    • 2023年度から2年連続で経常赤字で、かつ2024年度にすでに病床を削減済みである。

また病床削減に対する補助金は、1床あたり一律410万4,000円です。支援額には次の上限が設けられています。

また1施設あたりの病床数上限は以下の通りです。

  • 病院ごとの上限:50床

  • 金額の上限:過去の平均赤字額の50%まで

したがって、最大限度いっぱいを申請した場合でも、支給額は約2億円(410万4,000円 × 50床)となります。

私見:病床削減をめぐる動きと課題

病床削減と多角化経営

私見も交えますが、許可は取ったものの実際には使われていない病床を、この機会に正式に削減する病院も少なくないでしょう。問題は、その病床で勤務していた医師や看護師などのスタッフです。配置転換には一人ひとりとの調整が必要で、ここが大きな難所になります。
最近は、単一の病院経営だけでは採算が厳しい傾向にあります。そのため医療法人は、グループ内クリニック、在宅医療系の事業所、介護施設など複数事業を組み合わせて経営を安定化させるケースが増えています。そういった組み合わせられた施設の中で、配置転換等の調整が行われることが予測されます。
今回の補助金(最大約2億円)も、その多角化を後押しする初期投資として活用される可能性が高いでしょう。
たとえば、

  • 訪問看護ステーションを立ち上げる

  • 介護老人保健施設(老健)を新設する

  • 既存部門を効率化する設備投資を行う

といった使途が考えられます。こうした新規・周辺事業への展開により、スタッフの受け皿を確保しつつ、病院全体の経営基盤を強化する動きが今後さらに進むと見込まれます。

在宅シフトの波

国は現在、医療・介護の中間サービスの整備や在宅移行を強く後押ししています。そのため、医療法人は院内リソースに偏るのではなく、グループ全体で人員と資金のバランスを再調整する必要があります。もはや病院部門にこれ以上大きな投資をするのは難しいという前提のもと、「スタッフを病院外の事業へも振り分けてください」という、政策からのメッセージだと捉えています。
したがって、各法人は地域ニーズに合わせた新しいサービス形態(在宅医療、介護施設、リハビリ拠点など)を立ち上げる、あるいは既存事業を拡充する形で提供体制をシフトしていくことが求められています。今回の支援策は、そうした転換を促すきっかけになると考えられます。
これまで医療法人は、病院や介護施設などをそれぞれ独立した単位で運営してきました。しかし今後は、地域に必要な医療・介護サービスを一体で提供する「総合ケア法人」のような形態が一段と増えると見込まれます。
こうした統合経営を支えるには、新たな経営支援スキームやITシステム、情報連携基盤が欠かせません。今回の補助金は、それらの整備や業務効率化への投資に活用される可能性が高く、各法人が次のステージへ踏み出す契機になるでしょう。

リスナーからのお便りを募集中

この番組では、リスナーの皆さんからのご意見やご質問もお待ちしています!

  • 感想

  • リクエスト

  • 素朴な疑問

  • 医療機関や開発現場のみなさんの声

など、なんでも大歓迎です。DMでもポストでも、お気軽にメッセージをお送りください。

番組詳細

「医療DX通信」

医療DX通信は、医療介護領域でシステム開発を行う株式会社ispecが情報発信する番組です。
電子カルテをはじめとする医療基幹システムのクラウド化・モダナイズや、AI 活用による医療DXを手がけるispecが、医療DXの最前線でキャッチしたニュースや政策動向をお届けします。
パーソナリティーは、ispec CEOの谷村がつとめます。

番組への感想・リクエスト・お悩み相談

#医療DX通信 でポスト or DMより お気軽にどうぞ

運営企業:株式会社ispec

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー