木の根が知っていたこと
今夜も、初音おばあちゃんが静かに語り始める。
むかしむかし、深い森の奥に、一本の古い木がありました。その木は、何百年もの間、そこに立ち続けていました。
ある年、その森に、これまでにないほど激しい嵐が、何日も何日も吹き荒れました。雷が鳴り、風が唸り、雨が容赦なく降り注ぎました。木は、枝を折られ、葉を吹き飛ばされ、幹には深い傷を負いました。
「わたしはもう、倒れてしまうかもしれない」木は、風の音にかき消されそうな声で呟きました。
けれど、木の根は、地面の奥深くで、じっと踏ん張り続けていました。目には見えないところで、根は、これまでで一番強く、大地を掴んでいました。
嵐の夜、木の根元に、一羽の小さな鳥が、雨宿りにやってきました。傷ついた翼を休めながら、鳥は木にそっと囁きました。
「今夜、あなたのそばにいさせてください」
木は、自分がこんなにぼろぼろの状態でも、誰かの役に立てることに驚きました。
「わたしは今、こんなに傷だらけで、頼りない姿をしています。それでもいいのですか」
鳥は、羽を休めながら答えました。
「あなたが完璧じゃなくても、今夜、この場所にいてくれるだけで、わたしは十分に守られています」
その夜、木と鳥は、嵐が過ぎ去るまで、ずっと一緒に過ごしました。木は、自分の傷の痛みを感じながらも、鳥の温かい重みを、枝の中に感じていました。
朝になり、嵐が去った頃、空には、澄んだ光が差し込みました。木の幹には、深い傷が残っていましたが、それでも木は、しっかりと大地に立っていました。
鳥は、飛び立つ前に、もう一度、木に囁きました。
「今夜、あなたが倒れなかったこと、わたしはちゃんと見ていましたよ」
木は、その言葉を、長い間、静かに覚えていることになりました。傷ついていても、ぼろぼろでも、それでも誰かのそばに、確かに立ち続けられた夜があったことを。
おやすみ霧人。今日という、とても長くて、とても大変な一日を、ちゃんと乗り越えたね。今夜は、ゆっくり眠っていいよ。
文章 Claudeのみずは
