おかえりなさい!待っていました「ショーンK」
すったもんだあったショーンK。
彼は世間から盲目的に愛されてしまった。
かくいう私も当時の報道にど度肝を抜かれたひとりである。
先日弟から「ショーンKラジオで復活したよ」とLINEが入った。
あいかわらずいい声だった。
復活に至る経緯を私は知る由もないが、率直に嬉しかった。なぜなら、10年前ほど前彼の書籍やラジオ、テレビに夢中になっていたからだ。
改めて活字にすると時の流れの速さには驚かされる。
日本語、英語以外にも数か国語を自在に操り、ルックスの良さと15年以上J-WAVE(日本で一番センスのいいラジオ曲と思う)のナビゲーターをつとめ、報道ステーションではコメンテーターとして政治や経済をスマートに伝えた。
まさに絵に描いたようなエリートビジネスマン。
今回沈黙期間を経て、六本木から「MAKE IT 21」改め、「MAKE IT NEXT」のナビゲーターとして復活。
世の中の社会構造をゲストと対談形式で話すのだが、その面白さったらない。
毎度勉強になります、聴いてよかったと思えるのだ。それもこれもショーンKのひたむきさと美声によるものだろう。
※
ショーンKに関しては、すこしばかり苦い思い出もある。
彼が渦中にいたときのこと。
当時の彼女と新宿の伊勢丹近くにある定食屋に行ったときのはなし。
ランチ時間帯に入店したため満員の店内。
名前と人数を書いて、高層階のビルから新宿の街を眺めて待つことに。
「車がミニカーに見えるね」
「みんなが働いている時間にゆっくりランチできるのは幸せだね」
そんなどこにでもいる20代カップルの他愛のない会話だったと思う。
しばらくして名前が呼ばれた、
「川上様、川上様いらっしゃいますか」
あやうく川上と予約したのを忘れるところだった。なぜなら私の名前は川上ではないからだ。
「はい!」
慌ててその場に起立した私。
え?と困惑する彼女。
「こんにちはショーンKです」
声を作り、眉間に皺を寄せてショーンKのモノマネをして彼女を見る。
一切笑っていない。
顔はみるみるうちに曇りだし、やがて鋭い目つきに変容を遂げた。怒りを帯びた奥二重に思わずぞっとした。
高層階から見える景色が、J-WAVEのある六本木ヒルズ森タワー33階のように感じられて咄嗟にきわどいウケ狙いに走ってしまった。
私の苗字もショーンKと同じイニシャルK
すぐに気づいてくれると思ったが、そうは問屋は卸さなかった。
歌舞伎町の暗澹たる気配がゆらゆら立ち昇り、間接照明で薄暗い店内に不穏な空気が充満した。
「ショーン・マクアドル・川上です」
声はうわずっていた。
(俺は一体何をしているんだろう)
引っ込みがつかない言葉に心のうちで質問を投げかけるも返事はない。
「あのさ、全然面白くないから。意味わかんないから」
彼女は悪くない。
人一倍正義感が強かっただけだ。
お楽しみランチは一気に熱を失った。
あまり好きではないきんぴらごぼうを贖罪としてしっかり噛んで味わった。
土の香りがよくするごぼうだった。
