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第2回|分かっていなかった時間に、起きていたこと

あの朝の出来事のあと、
正直に言うと、
自分の中で何が起きていたのかは、
ほとんど分かっていませんでした。

何かが変わった、という確信もない。
人生が動き出した、という実感もない。

ただ、
以前と同じ感覚には戻れない、
そんな身体感覚だけが、
静かに残っていました。

それは、
これまでの延長線上にはない、
どこか新鮮で、
けれど強く心に触れる出来事でした。

その新しさゆえに、
一瞬で過ぎ去るようでいて、
深く刻まれていく感覚がありました。


その感覚を、
どう扱えばいいのか分からないまま、
日常は続いていきました。

仕事をして、
人と会って、
いつも通りの時間を過ごしている。

外から見れば、
何も変わっていないように見えたと思います。

けれど、
内側では、
何かが噛み合わない感じが、
ずっと残っていました。

以前よりも、
自分の内側と向き合う時間が、
自然と増えていたように思います。

その感覚を整理しようとして、
言葉にしようとして、
意味づけしようとしてみる。

けれど、
整理しようとすればするほど、
すんなりとは進まない。

考えをまとめようとすると、
どこかで引っかかり、
曖昧な場所へと戻ってしまう。

感情の揺らぎの中で、
行きつ戻りつしながら過ごしていた。
そんな表現が、近いかもしれません。


進もうとすると、
戻ろうとする。

戻ると、
やはり進みたくなる。

揺れては戻る。
戻っては、また揺れる。

出ては消え、
消えては出てくる葛藤とともに、
日々を過ごしていました。


今なら、
「あれは移行期だった」と
言葉にすることもできます。

けれど、
当時の自分には、
そんな見通しはありませんでした。

ただ、
分からないまま、
その場所に立ち続けていた。


落ち着いていたわけでもなく、
満ちていたわけでもない。

何かをつかめていたわけでも、
前に進んでいる実感があったわけでもない。

それでも、
どこかで、
ここを離れてはいけない、
そんな感覚があったのも確かです。

仕事をしながら、
同時に、
仕事とは少し離れた場所にも
自分がいるような感覚がありました。


ただ一生懸命に、
「いまここ」を生きていた。

そして少しずつ、
自分の心の声を、
聴こうとしていたのだと思います。


あの時はまだ、
この時間が、
どこへつながっていくのかを
知りませんでした。

ただ、
分かっていなかった時間にも、
確かに、
何かは起きていた。

それだけは、
今なら分かります。

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