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46.まちと関わる#6~他力本願でも古家を残したい~

数年前に恋した、都心から2時間程度で辿りつく港まち。今ではいくつかの古家を修繕し貸出すようになりました。

前の投稿のように客観的に分析すればするほど、ローカルの古家賃貸は「決して手軽でお気楽なお得案件ではない」ということが分かると思います。ビジネスとしては意外にハイリスクで、リターンの厳しい薄利な投資とだと思います。 「そんな割に合わない投資を、なぜ、いくつも続けているんだ?」 時々、自分自身でもそう省みることがあります。その答えは、数字のシミュレーションシートの中ではなく、「自身の価値意識」の中にあります。この厳しい採算を埋め合わせて余りある、3つの「喜び(価値)」があるからこそ、この活動に向き合えているのだと思います。

今回は、そのひとつである「魅力を感じた、かわいい建物を残せる」という価値について書きたいと思います。ボクが一目惚れしてしまった、古い佇まいのかわいい建物を、自分の手で未来に残すことができる。そして、建物を維持するためには、誰かに「居住してもらうこと」が条件です。つまりこの投資は、建物の命を繋ぐための必要なコストでもあるのです。


「愛おしい」だけでは、どうにもならない現実

港まちを散歩をしていると、時代や繁栄の歴史を感じさせる古い家に、「解体」を知らせる表示が貼られているのをよく見かけます。中にはハウスメーカーの「建替え」をうかがわせるものもあり、高齢の方でも負担なく暮らせる現代の住まいを求めるという選択には、理解が及ぶところでもあります。

外の人間であるボクが「大切に感じるから」「残したい」と願うだけでは、その古い建物は救えません。かといって、今の持主が納得する金額を提示して譲り受けるような資金的な余裕もありません。価値や満足だけで判断できるほどお金が余っているわけではないので、採算が合うような使い道を見通さなければいけない。特に立地が良く、規模の大きな物件であればあるほど、その金額も大きく、今のボクの力では到底太刀打ちできない……。これが現実です。

他力本願であっても、建物が残るなら

そんな悔しさを抱えながらも、このまちには古い建物に関心を持つ人たちがいることが救いです。 安く仕入れて貸し出す人、古い建物を自ら直し、そこで事業を行う人。設計やデザインで新たな価値を見出そうとする人……。

自分では手に負えない解体予定の物件に出会ったとき、ボクは、こうした親しい仲間に声をかけます。他力本願と言われてしまうかもしれませんが、その建物が壊されるのを防ぐことができたら、それだけで嬉しいのです。

過ぎ去ったはずの建物との、思わぬ再会

先日、そんな「他力本願」にまつわる印象的な出来事がありました。 2年ほど前、ある重厚な建物に解体の案内が出ていて、「どうしよう……」と悩みながらも何もできずにいたことがありました。その後、解体案内が外されていたので、どこかで誰かが救ってくれたのかな、と気になっていたのです。

先日、その建物の前を通ると、開け放たれた入り口で掃除をしている方に出くわしました。中から出てきたのは、過去にお話ししたことのある方で、思わず声をかけました。その方が建物を引き継いだ経緯や、今後の大まかな方向を伺い、気がつけばボクは「この建物を救ってくれてありがとうございます。解体が出ていた時、どうしようと思いながらも何もできなかったので……」と伝えていました。変な話ですが、これが正直な感情でした。

ケーキが売り切れたような、悔しさと羨ましさ

一方で、自分には難しいと理解していても、心の奥底では悔しさや羨ましさがこみ上げてきました。例えるなら、目の前のお客さんで売り切れてしまった美味しいケーキを見つめているような感覚でしょうか。 他人の手によってその建物が救われた事実は誇らしくもあり、同時にどうしようもなく羨ましい。それは「自分には買えないものだったんだ」という諦めと、「それでもやっぱり食べたかった」という未練が入り混じった、何とも言えない複雑な空虚感でした。

この感情に抗うためには、自身で前に進む術を身につけるしかないのだと思います。 とはいえ、大きいものより小さいものを好み、リスクを減らさないと踏み出せない小心者のボクです。仮に力がついたとしても、一生かけて小物ばかりを拾い集めていく人生かもしれませんw。

小さな経験を、いつか誰かのために

それでも、他力本願で物件を繋ぐこと以外に、体系化できていないけれど経験から得た「古家を救うためのノウハウ」を、誰かに提供できるようになれたら良いなと、密かに妄想しています。

事業にはならなそうだし、誰も求めないかもしれません。それでも、この場所で、このまちで、愛おしい建物と関わり続けることは、数字以上の何かをボクに与えてくれていると感じています。

つづく

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