推し語り
鑑賞するタイプの趣味について私の半生から聞いてほしい。
小学校のお楽しみ会でコント台本書いて演る程度にお笑い好きだった。しかし周囲にお笑い好きが居るわけでもなく、私が小学生のうちに一番好きな漫才師は亡くなり、あまり熱心にお笑い番組も観ることはなくなった。
中学生になってからはオタクに寛容な時代ではなかったが主に男性向けのコンテンツにハマり、学校図書館の隅でヲタク友達と「〇〇ちゃんは俺の嫁」とかブヒブヒ言って育った。
成人してからはアイドルを育成するゲームにハマり、Twitterでいわゆる同担の人をフォローしていたが、積極的に絡むわけでもなく、考察とかイベントレポをありがたがって読んでいた。私自身は周年ライブがあれば行く程度のあまり熱心ではないヲタクだった。現地勢として何か書き残さなければならない義務感があり、演者である女性声優は米粒程度の大きさにしか見えなかったにも関わらず語彙力を失ったツイートをしていた。
しかしトップヲタや認知厨が目立ち、課金額を競うようなこの界隈が怖くなり、熱が冷める。
その後、将棋棋士や文楽、落語といった三次元のジャンルに興味を持つ。強火担もいない訳ではないがファンの年齢層が高く、落ち着いた界隈である。時々感想をツイートする、アニヲタ時代と同じようなコンテンツとの付き合い方をしていた。
そして問題の講談。
私が箱推ししている一門の弟子たち3人はみんなお笑い芸人を経て入門した。テレビにも出ていたがお笑いの世界は厳しかったようだ。しかし講談会を開いてもまだ閑古鳥が鳴いているときがある。が、伸びしろしかないところが魅力である。
あまりにも市場規模が小さく、1回行けばご本人に認知される。認知されたいわけじゃないのに!透明人間になりたい!それなのに開演前とか終演後に向こうから話しかけてくる!
感想はつぶやきたい。でもツイートはご本人に読まれてしまう!まあ垢バレするわな。次回講談会に行けば「感想ありがとうございます」と感想の感想をいただいてしまう!
暇だったら行くくらいのスタンスのはずなんだけど、他にファンがいなさすぎて講談師から「上方講談を一番よく聴いてるお客さん」と他の客に紹介される。トップオタになりたいわけじゃないんだよ!
さて先日開かれた講談会で箱推しのうち元々別のコンビで漫才やコントをしていた2人が余興みたいな扱いで漫才をした。押入れから引っ張り出してきた衣装のスーツに、もはや腐っているという革靴を履いて。
即席のコンビで打ち合わせ2時間、前日稽古と言っていたが、プロの話術を遺憾無く発揮していた。構成までめちゃくちゃ好みの漫才で、メロい。
脳天ぶち抜かれ、「サプライズで有名人がきた高校の文化祭」くらい心がざわついている。
それなのに終演後に「こないだの会の感想を良いように書いてくれてたけど、流石に出来が酷すぎましたよね…」「今日、ちょっと良くなかったなと思ってるけど、正直どう思いました?」とか話しかけてきた。今のあなたたちが格好良すぎて直視できない!2人ともほとんどいつも同じ着物かダル着の私服しか着てないのに、長身にぴったりしたスーツはズルいて。
あまりにも興奮した私は帰宅途中に140字を連投していた。
翌日になって読み返すと、私キショすぎる。
でも翌日も興奮が冷めないので、ネタ中に撮った写真に写る2人の40代三次元男性をスマホの壁紙にするという痛い行いを、スマホの縦長画面は漫才師2人の立ち姿をちょうど収めるためにあるんや!と正当化した。なりたくなかった気持ち悪いオタクである。
興奮したまま、それぞれのお笑い芸人時代の映像を入手するため、我々調査隊はブックオフの奥地へと向かった――。
ツッコミの方は映像が市販された痕跡も見つからなかったが、М-1グランプリのDVDを入手できた。ボケの方が18歳で決勝進出したときの映像だ。
最終決戦には残れなかったものの、めちゃくちゃ面白かった。
高得点を付けた審査員が当時亡くなったばかりの私の一番好きな漫才師のコンビ名を挙げ「超えたな」と言っていた。
