水面の音に耳を澄ませて
2026/08/12 wed
檜の縁にそっと頭を預け、身の力をほどく。少しずつ耳を湯にひたし、そのやわらかなぬくみに馴れてゆく。
目を閉じ、耳を澄ます。どこからともなく、水の流れる音が聞こえてくる。大きな自然と、人の手の加えたものとが、ひそやかに溶け合って、ひとつのコンチェルトを成していた。
未だ痺れの残る右脚を、ゆっくりと伸ばす。一日やそこらで、何が変わるものでもあるまい。それでも、この場所で暮らすということには、理屈では届かぬ何かがあって、身の奥のほうを静かに引いてやまない。
命の刻限は、あと二週間。
深く考えるのはよそう。せめてこのひとときだけは、ただ自然の中へ身を委ねていよう。
