闇 697(機動隊と天龍編)
闇 697(機動隊と天龍編)

2026/09/17 thu
※01~376章までの文字数カウント。推敲も入るからまるで逆地獄めぐりだ。毒だと分かっていながら飲んで行く作業に近い。
前回の章

二千二十四年八月十三日、火曜日先負。
冷蔵庫の上を見て思い悩む。
どうして俺は、こんな食パンを買ってしまったのだろう?
特別好きなパンでもないのに。
それは安いからである。
まだ詐欺被害回復をできていない今、贅沢は心の敵。
しかし物事には賞味期限というものがあり、嫌々食べるのは健康に良くないはず。
すなわちそこまで好きでもない食パンを食べるには、好きなものを足すしかないのだ。
茄子が一番好きだけど、茄子パンなんて絶対に嫌。
だとすれば優先順位は、次に大好きなハンバーグを使わざるを得ない……。
龍虎の拳のリョウサカザキでいえば、龍虎乱舞ではなく覇王翔吼拳といったところか。
つまり食パンを処理するには、ハンバーグサンドを作るざるを得ない。
まず玉ねぎ微塵切りをオリーブオイル引いたフライパンで弱火で炒め、ハムもあったから細かく切って投入。
トマトホルダー入れて塩コショウ、ガーリックチップにブイヨンとオレガノにバジル。
ここでちょい手抜きをして、市販のボロネーズソースをぶち込む。
醤油にウスターソースを加え、蓋して三十分ほど煮込んでおこう。
こうなる事を見越し、ハンバーグは形を作り冷凍庫に何個も眠っているのだ。
フライパンにオリーブオイルを引いて、強火でハンバーグを焼いてしっかり両面に焦げ目つけたらソースへドボン。
肉汁など逃がす訳なかろう。
あ、ご飯炊けた!
やっぱしょうが焼きでも作り、丼だよね。
豚肉をある程度炒めたら千切りキャベツ入れて、塩コショウに酒で煮詰めて、みりん投入。
醤油に砂糖で味整えて、焼肉丼の完成っと。

あ、食パンどうしよう?
お昼でいいか。
さてさてエネルギー補充したから、執筆に取り掛かろうかな。
「……」
おい、どうした?
いや、できればあまり書きたくない部分だなあと……。
駄目!
やっぱり?
過激な設定を導入し、かつての賑やかさを取り戻したワールドワン。
ゴマすり豚野郎の吉田をクビにしたのは大きい。
番頭の佐々木さんが来て、店を立て直したので給料を若干戻してくれた。
前ほどは戻らなかったが、日払いがプラスで五千円増えたのは素直に嬉しかった。
ゲーム屋業界の流行り廃れは早い。
ただ流行っているからと何もしないで楽観視していると、すぐに客に飽きられ廃れてしまう。
客足が落ちる前に、次の手を考えていかないと駄目だ。
…といってもゲーム屋でできる事など限られる。
闇雲に計算もせず、客に受けるだろうとやるイベントはあとで後悔する羽目になった。
以前『プロ』の時企画したイベントで、黄金の四十八時間というものがある。
これは単純にその期間、一気をしたらプラス一万円あげるというものだが、ワールドワンの一日の一気の本数は百本前後。
つまり一気一回につき一万円を百回以上渡し、忙しいだけで儲からないイベント。
考え無しにこれをしたおかげで、百万以上の経費が余計に掛かった。
客を煽りつつ、経費的にはそんな掛からないイベント。
そのバランスは中々難しい。
そんな最中客のギャンブル欲をくすぐるイベントを思いつく。
みんな、ダブルアップを叩き続け一気を狙うのが主流なので、そこを利用したイベントを開催。
一日限定の個人ビンゴカードを作る。
ポーカーは役を揃えてからダブルアップするので、三つの枠に分け、ツーペアとフルハウス、スリーカードとフラッシュ、ストレートとフォーカードに決める。
例えばツーペアからのダブルアップで一気になれば、その枠が消え、三枠消せば個人ビンゴ完成で三万円のプレミアが出る仕組み。
運が良ければ三回の一気で完成する。
俺はイベント開催の告知用広告を作り、従業員の岡本と望月に電バリを頼む。
一人が警察がいないかの見張り要員。
もう一人が電信柱へ広告チラシを貼る係。
貼る場所は数ヶ所でいい。
すると岡本は「このくらいなら俺一人で大丈夫ですよ」とバックを持つ。
本来電バリは違法行為である。
「おい、危ないから二人で行け」
俺の声が届く前に岡本は一人で外へ行ってしまう。
食事で外出していた客が、店に帰ってきてキャッシャーにいる俺へ話し掛けてきた。
「店長…、多分ここの従業員だけど、あそこの靖国通りと一番街の交差するところで、両脇を警察官に抱えられていましたよ」
「……」
あの馬鹿、いきなり警察官に見つかったのか。
俺は一番街通りへ飛び出し辺りを見渡したが、岡本の姿は見えない。
だからあれほど注意したのに…、言わんこっちゃない……。
まず捕まった可能性を考え、番頭の佐々木さんへ連絡。
電バリで捕まったとしたら、あのエリアなら新宿警察署しかない。
しかしこちらから警察署へ電話するわけにもいかず、しばらく様子を見る。
店の電話が鳴った。
相手は新宿警察署から。
あの馬鹿、店の電話番号を簡単に謳いやがった……。
いや、まあそれは仕方ないか。
「新宿警察署です。ワールドワンですね?」
「は、はい……」
「店長の岩上さんは?」
「は、はい…、私です……」
あの馬鹿、警察で何俺の名前を言ってるんだ?
何の為に名義社長がいると思っているんだよ?
「岡本分かりますね? 一応身元引受人として今から新宿警察署へ来て下さい」
「いや、あのですね…。私も一従業員でして…、社長へ連絡とりますから……」
「岩上さん、そういうのいいから。うちも面倒だから岩上さんが引き取りに来てってだけだから。別件だから安心しろって」
小便刑にもならないような事なので、警察のほうとしても俺が引き取りに来て終わりにしたようだ。
「分かりました……」
このような展開になってしまい誤魔化すのも後々面倒なので、俺は佐々木さんに連絡を入れる。
系列の店から一人ずつ二名をヘルプに寄越させ、到着すると店を出た。
新宿警察署へ単身向かう。
そこそこ長い期間の裏稼業。
自ら警察署へ行くなんて初めてである。
タクシーで向かい到着する。
扉を開けると「いやー」と頭を描きながら笑う岡本がいたので思わず頭を叩いた。
簡単な書類に名前を書き、すぐ解放される。
「だから一人で行くなって言ったろ!」
「すみません、最初の一枚目でいきなり警察官に見つかってしまって……」
そそっかしい岡本。
コイツの調子の良さには少し注意したほうが良さそうだ。
しかし仕事面での布陣は、ある程度整ってきた。
チビの山下は馬鹿だが、仕事はまあできる。
伊藤も育ってきた。
岡本も調子いいが、元々経験者である。
うすらデカい望月は、何だかんだ器用で卒なくこなす。
「じゃあ俺は休み取るからね」
「ええ、任せて下さい。ゆっくりお休みを」
不安ながらも久しぶりの休みを取った。
品川春美からはまったく連絡が無いし、そのあと知り合った佐々木真理子とは中途半端なままだ。
それも確かにあったけどさ、誤魔化すなよ。
ミサキでしょ?
それもあるけどさ。
「そうそう、うちの店で智君の事気に入っているの女の子が一人いるよ」
「え、誰々?」
「今日休みだけどさ、さおりちゃんって子。私と仲良くしているんだ」
「ねえ、ミサキ。その子を上手く仲介してくれよ」
「うーん……」
「ね、頼むよ、ミサキ!」
ミサキは渋りながらも俺が懇願すると、その子を紹介してくれた。
名前は雪喜と書いて、さおり。
ショートカットの似合う綺麗な子だった。

彼女は日本人の父親と韓国人の母親を持つハーフで、ミサキと同じキャバクラで働いている。
彼女も体格のいい男がタイプらしく、ミサキに俺を紹介するよう何度も伝えていたようだ。
最初だけミサキが同席し川越の街を歩いていると、小中学生時代の同級生のちゃぶーこと岩崎智典とバッタリ会う。
ミサキと雪喜、二人のいい女を連れて歩く俺を見て驚き、軽く挨拶してすれ違うと「おいおい、何だよ、岩上」としつこく後をつけてきた。
コイツは昔俺に彼女との仲介を強引に頼み込んできたくせに、その子の職場まで乗り込んでケツを膝蹴りしてくるような屑野郎だ。
「邪魔だからあっち行け」と追い払う。
ミサキに感謝しつつ淋しかった俺は、よく雪喜とデートを重ねた。
先輩の神田さんが店長をするゲームセンター『モナコ』へ一緒に顔を出し、プリクラを撮る。
俺の肩に顔を乗せて甘えてくる雪喜。
彼女の唇はとても柔らかかった。
はい、どうだ!
ま、あったけどさ……。
外へ出ると再び人に声を掛けられ囲まれる始末。
こうなる事ぐらい予想できなかった俺が悪い。
雪喜はゆっくり祭りも楽しめない状況に我慢できなくなり「知り合いばかりで嫌。二人でゆっくりできるところへ行きたい」と泣きべそを掻いたほどだ。
俺が連雀町の山車の傍を離れる訳にもいかない。
だが彼女は祭りの関係ない別の場所へと懇願。
もちろん雪喜の事は気に入っている。
しかし春美の時ほど燃え上がるような感情は持てなかった。
俺は雪喜だけ一人先へ帰す。
川越祭りの楽しさを教えようと思ったのが裏目に出たようだ。
ある日たまには店に来て欲しいというメールをもらい、営業だと思った俺は怒って返信する。
「岩上さんは釣った魚には餌をあげないタイプなんだね」と言われ、面倒臭かったので付き合いを辞めた。
多忙さによる心の余裕の無さが、相手に対する配慮を掛けさせていたのだろう。
おい!
いや、分かっているけど、時系列時系列。
先輩の坊主さんから連絡が入る。
内容はこれから先どうしてもパソコン必須の時代になってくるだろうというもの。
なので坊主さんが持つ知識を少しでも俺に教えときたいというものだった。
「えー、俺がパソコンなんて無理ですよー」
面倒臭そうに答えると「智、オマエは昔のゲーム大好きだろ?」と言われる。
俺のツボを完全に知っている坊主さん。
そんな訳で俺は坊主さんと共に秋葉原へパソコンを買いに行く事となった。
当時の標準的なパソコンは『Windows XP』。
俺はパソコン云々よりも、昔のゲームがまたできるという点だけでノートパソコンを買う。
値段は十七万ちょい。
プレステーション2が何台買えるんだとは思ったが、仕方のない投資だ。
坊主さんはUSB端子でプレステーション2のコントローラーを接続し、ボタンさえ割り振れば、どんなゲームでも操作可能になると説明する。
「パソコンは頭の良い赤ん坊みたいなものだから、何も無いところへこうしなさい、ああしなさいと命令してあげる事が重要なんだ」と説くが、俺には意味がまるで分からない。
メニュレーターとか坊主さんは小難しい事を言っていたが、俺はパソコンで好きなゲームさえできればいい。
仕事を終えると部屋に籠もり、パソコンでゲームをする日々。
坊主さんに会うと、徹也のパソコンでも同じ事をできるようにするにはと質問する。
初歩的なファイルとフォルダー。
基礎中の基礎。
俺はまず大好きだったゲームの仕組みを覚えるところから始まった。
データをコピーしただけでは駄目で、ディレクトリ設定でROMイメージをどこから読み込むのか。
坊主さんの教え方は厳しかったが、システム的な事を暗記するようにして、日に日にパソコンへのめり込んでいく。
雪喜から仲直りしようと連絡があった。
だがゲームに夢中だった俺は、返信せず毎日パソコンばかりいじっていた。
坊主さんからパソコンの存在を教えてもらったのは、二千二年だったか。
ピアノのあとぐらいに思っていたけど、ちょっと間があったんだな。
ここは外せないでしょ?
まあ、これないと小説が始まらないからな。
まだこの頃ゲームしかしていないけど……。
仕事中、番頭の佐々木さんから終わったらちょっと話があると言うので時間を作る。
できれば人気の無い静かな所がいいと言うので、新宿プリンスホテルのロビーラウンジを利用した。
「話ってどうしたんですか、佐々木さん?」
「今から言う事はワイと岩上君だけの秘密にして欲しい。大丈夫?」
いつもとは違う雰囲気の佐々木さん。
これまでの付き合いを考えると信用できる人なので、俺は黙ったまま頷く。
「オーナーの中川さん…、株や土地開発の失敗で十数億の借金抱えとるんや」
「えっ!」
思わず漏れる声。
「それでワールドワンもあと三ヶ月間で終わりになる」
「……」
一度は荒らされたが、ここまで店を復活させたのに後三ヶ月?
「他の店の番頭だった湯沢君が数ヶ月前に辞めたやろ? あれは彼が中川さんに五百万貸すのを渋って辞めたと言うかクビにさせられたんや」
「つまり金を貸すか、クビかを選択させられたと……」
「ワイは五百…、貸している。でも、もう回収できへん」
「は、はい……」
「ワイと岩上君が組んだら上にはバレへん。だからワイの金取り戻したいから、岩上君! ワイと組んでくれへんか?」
つまり店の金を抜くという事だろうか?
佐々木さんは本当に人がいい。
これまでだって何度も手痛い目に遭っても、スタンスは変わらない。
「分かりました…。俺は佐々木さんに色々と恩があります。それで佐々木さんが助かるなら協力します」
「店が閉まるのは従業員にも客にもまだ内緒にして欲しいんや」
「はい、分かりました」
「それで方法なんやけど、店内ビンゴあるやろ? あれのチェックって、ワイがチェックしてそれでシュレッダーに掛けて終わりなんや。つまり…、あれが何本出たところでいくらでも誤魔化せる」
「……。はい……」
「一日何本か水増しするから、そこでその分の金を別にしといて欲しいんやけど……」
「分かりました…。それで佐々木さんが助かるなら……」
「もちろん儲けは折半でええ」
「いや! 俺はいらないですよ。佐々木さんさえ金を戻せるなら」
「駄目や。こういうのは折半で行かへんと必ず綻びが出る」
五百万もオーナーの中川にいかれて何を言ってんだ、この人は……。
「でも俺は佐々木さんにこれまで散々良くしてもらいました。だから俺の分まで……」
「岩上君! 頼むわ! この条件で引き受けてくれんか?」
真剣な眼差し。
折半以外の条件は一切受け付けないといった強い意思。
「分かりました……」
この日より俺と佐々木さん、たった二人だけの秘密が生まれた。
店内ビンゴを使った抜き。
一回で五万。
二回やれば十万。
毎日少ない時で二回、多い時で六回。
つまり給料とは別に五万から十五万の金が舞い込んで来るようになった。
最初の頃は佐々木さんが全部取るよう伝えるも、折半以外受けつけない。
たまにイベントなどをする時は、さらに拍車が掛かる。
本来の給料が店長手当込みで五十万ちょっと。
それ以外に抜いた金額が他の従業員には内緒で日々数万、十数万と入ってくるのだ。
出勤すればするほど、金は打ち出の小槌のように入ってくる。
俺は金銭感覚が一気に麻痺していく。
他の従業員に対する罪悪感はもちろんある。
しかし佐々木さんとの約束で言う訳にもいかない。
よくぞ、書いた。
自分が黒く染まり狡い描写はキツかったろ?
だって…、どうせ書かないとブツブツ言うんだろ?
当たり前だろ。
ここがないと話にならない。
まあ…、そうなんだけどね……。
仕事から家に戻ると、徹也が新しいパソコンを買ったので、またゲームをできるようにして欲しいと頼んできた。
やり方は熟知していたのでデータを移しながら、お互いの近況を話す。
一番下の弟の貴彦。
彼は家のクリーニングを継ぐまではいかないが、家業を手伝って生活している。
いつだったか「兄貴もてっちゃんも好き勝手やってるから、俺がこうなったんだ」と責められた事があった。
それなら従業員は一杯いるのだ。
勝手に継いだのはおまえの意思だから、嫌なら辞めろと返した。
そんな経緯もあり、貴彦は俺を毛嫌いしているところがある。
しかしその弟が趣味のサーフィンで脇の下を怪我し、仕事ができない状態が続いているらしい。
「アイツ金も無くて無口な引き籠もりみたいになってるよ」と徹也は言う。
徹也のパソコンをゲームがまたできる環境に整え、久しぶりに貴彦の部屋へ行く。
俺が高校卒業して自衛隊に行く事で、貴彦へ明け渡した部屋。
暗い表情で横になりながら漫画を読んでいた。
「おう、貴彦。オマエ怪我したんだって?」
「兄貴が家を継がないから……」
「もうその話はよせ。誰もオマエにやれなんて頼んでいない。嫌ならやらなきゃ良かったんだ」
「……」
「金も無いんだろ?」
俺は財布から適当に札を取り出し、貴彦の目の前に置く。
金額にして二万円いかない程度。
どうせ毎日必要以上に入ってくる金の一部をあげただけ。
俺には痛くも痒くもない。
「兄貴…、いいのかよ……」
「黙って受け取れ。今まで兄らしい事なんて何もしてなかったからな」
「あ、ありがとう……」
この日から毎日のように貴彦へ小遣いをあげるようになった俺。
月でだいたい二十万程度の金を渡すようになった。
それまで特別仲良くもなかった貴彦は、変に俺へ懐くようになる。
毎日のように金をあげているのだ。
繋がりは金とはいえ、俺を頼りにするだろう。
徹也からは「兄貴は貴彦を甘やかし過ぎだ」と何度も言われた。
自然と貴彦の部屋には同級生連中が集まるようになる。
俺にとっては四つ下の後輩になるから、ピザの宅配を取ったり、全員を近所の呑龍に食事へ連れて行き、驕ったりした。
ある日貴彦の彼女の麻美が声を掛けてくる。
「お兄さん、今週末歌舞伎町の〇〇ビル分かります? そこで私たちのダンスイベントあるので、良かったら顔を出してくれませんか?」
麻美はプロのダンサーをしているが、それで食べていけるほどではなかった。
「あみっこ、そんなの貴彦に言いなよ」
「だってたーちゃんお金もそんな無いし、まだ無職で部屋に籠もっているから行かないって…。その日私の誕生日なんですけどね……」
「分かったよ。俺から貴彦には説得しておく。絶対に行けと。あとその日新宿プリンスホテルなら顔利くから、部屋も俺が取ってやる。二人で泊まって祝ってもらいな」
「ありがとうございます、お兄さん!」
この子と貴彦が結婚したら、俺の本当の妹になる。
ミサキは俺が勝手に妹と見立てているだけ……。
今まで気を掛けてやれなかった罪悪感。
兄貴らしく妙に格好をつけたかった。
貴彦に金は払うから新宿プリンスホテルの部屋をその日取るよう指示する。
数日後状況を聞くと、週末で予約一杯で取れないと言う。
仕方なくプリンスホテルの支配人へ電話を掛ける。
ゲーム屋プロ時代に構築した関係は、未だ有効だった。
「お久しぶりです、岩上です。いい部屋を一つ、この日にお願いしたいのですが……」
支配人はすぐいい部屋を用意してくれる。
貴彦は驚いた顔をして俺を見ていた。
「いいか? 予約した部屋、俺だって泊まった事が無いほどいい部屋なんだからな。少しは感謝しろよ」と言いながら、貴彦へ一万円札を渡す。
黙って受け取る弟。
「無駄遣いするなよな」
俺はそれだけ言うと、部屋に戻って寝た。
そうそう、ゲーム屋での佐々木さんとの抜きを書かないと、この状況が成り立たなくなるんだよ。
恥も外聞も捨てて赤裸々に、この調子ね。
この日仕事終わりに佐々木さんと、新宿プリンスホテルのロビーラウンジで待ち合わせる。
今日はビンゴ五万を六回偽造で三十万。
佐々木さんは十五万を渡してくる。
少し前なら抵抗もあった。
今の俺は普通に受け取っている。
俺自身どんどん薄汚れているのだろう。
店の二番手として育てていた伊藤。
彼はラップのミュージシャンと兼用で働いているが、好評の東北ライブの回数が増え、どうしても四日間の休みが欲しいと懇願してきた。
伊藤にとってチャンスなのだ。
店はキツくなるが、みんなでカバーすればいい。
従業員に伊藤の件を伝えたところ、山下と望月はその間休みを取らなくても大丈夫と了承してくれる。
岡本だけはどうしても用事があるので、一日だけ伊藤と休みが被ってしまう。
今の状況を三人で回す……。
まあ俺が休み時間取らないでやれば、何とかなるか。
しかしこういう日に限って店は皮肉にも忙しい。
俺と山下とまだ入って数週間の新人望月。
ゲーム屋は忙しくなると、とにかくINが多くなるので必然的にホール内を所狭しと駆けずり回るようだ。
過去この忙しさから一日二日で根を上げ、辞めていった新人も数えきれないほどいる。
中々従業員を食事休憩すら回せない現状。
「望月、奥で一服してきなよ」
「いえ、まだ大丈夫です!」
「いいって無理すんな。俺がキャッシャーやりながらホールも見るから大丈夫だよ」
とりあえず望月にタバコの一服休憩を行かせるのがやっとな状況。
「岩上さん、飯休憩まだすか」
山下が隙を見て声を掛けてくる。
「悪いけど、まだ無理だよ。客が全然引かない」
「俺、早番の大倉さんと飯休憩で一緒に行く約束してて、まだ外で待ってんですよ!」
「知らねえよ、そんなの。オマエと大倉が勝手に決めただけで店には何の関係も無いだろ」
「でも、大倉さんまだ待ってるし」
「仕事中だ! 店の事を優先して考えろ。とりあえず望月が一服から戻ったら、山下行って大倉に電話くらいしておけ」
不服そうな山下。
気持ちは分からないでもないが、仕方ない事だ。
山下の一服も回し、望月に食事休憩行くよう促す。
「ごめん、いつもなら一時間いいんだけど、今日だけ四十分でお願いできる?」
「いや、俺飯大丈夫ですよ」
「いいから行ってこいって。こっちは大丈夫だから」
望月に飯代を渡し行かせる。
十五分もしないで口をモグモグしながらホールへ出てくる望月。
「おまえなあ……」
「もう食べ終わりました。大丈夫です」
素直に望月の好意を受け取る事にした。
そのぐらい二人で回すには、ワールドワンは広過ぎる。
「岩上さん、俺の飯休憩まだすか? 俺の飯休憩……」
横で山下がうるさいので、仕方なく行かす事に決めた。
俺さえいれば、四十分ぐらい何とかなるだろう。
「おい、山下。今日は本当人もいないし、忙しいから四十分だからな、悪いけど」
大倉に断りの連絡をしていなかったのか、山下はすぐ外へ飛び出した。
二人きりで回す地獄の忙しさの店内。
望月は汗だくになりながらホールを駆け回っている。
俺も片側の列のINとOUTをしつつ、四カード以上の役や一気が出るとキャッシャーへ戻り、プリントアウトしながら用紙へ記入しなければならない。
本来ならホールで最低二人、キャッシャーに一人はいないと難しい。
時計をチラリと見る。
正確な時間は覚えていないが、山下が休憩行ってから一時間は過ぎているはず。
この忙しい現状を知りながら、何をしてんだ、アイツは……。
こちらの都合などお構いなしに札を出しINを要求する客。
俺と望月はひたすら駆け寄りINキーでクレジットを入れる。
「ロイヤル!」
五卓の客が叫ぶ。
「少々お待ち下さいっ!」
キャッシャーへすっ飛び、プリントのボタンを押す。
その時入口の扉が開き、山下が戻ってきた。
食事へ出てから一時間半は経っている。
「オマエ何を考えてんだよ!」
思わず怒鳴りつける俺
「四十分って言ったろ! 何やってたんだ、ボケッ!」
少々顔の赤い山下。
酒でも飲んできたのか、コイツ……。
「おい、何を黙ってんだよ?」
「……」
「何でこの状況を知りながら酒飲んで、一時間半以上も飯食ってんのかって聞いてんだよ!」
「自分、責任取って辞めますよ!」
不貞腐れたように口を開く山下。
「あ? 今、何て言った?」
ホールでは望月一人が必死に駆けずり回っている。
「辞めればいいんでしょ、辞めれば」
俺は山下の胸倉を掴んでいた。
「オマエ…、ホールで新人の望月があんなに一生懸命やっているのに、何とも思わないのか?」
「だから辞めれ…、うぎゃーぁーっ!」
気付けば俺は山下の頭に頭突きをお見舞いしていた。
両手で頭を抱えながらホールの床を転げまわる。
あれだけポーカーに熱中していた客たちの音が止む。
みんな、転げ回る山下を見て、唖然としていた。
俺は首根っこを掴んで立たせ、奥の休憩室へ放り投げる。
「大袈裟なんだよ、オメーは」
すぐさまホールへ戻り、望月と客の相手を始めた。
さすがにもう限界だ。
隙を見て佐々木さんへ連絡をし、他の系列店からヘルプに来てくれるよう頼む。
三十分ほどして山下が頭を片手で押さえながら、フラフラとホールへ出てきた。
「殺すんなら殺して下さいよ!」
大声で怒鳴る山下。
俺は一発殴り、荷物と服を入口の外へ放り投げる。
山下も外へ投げ捨て「オマエはクビだ。とっとと出ていけ!」と怒鳴りつけた。
何とも遣る瀬無い気持ちになる。
二年以上共に働き、吉田のせいで辞める時だって俺は身体を張ったつもり。
何故こんな馬鹿なのか、アイツは……。
ようやく系列のアリーナから黒岩、チャンプから中島がヘルプに来てくれる。
そこで初めて望月をゆっくりさせる事ができた。
山下の奴、何故場面が読めなかったのだ?
あそこまで馬鹿だったとは。
とても情けない気分だった。
はい、山ゴネス一度目の退場も書いたよ。
うん、数ある中のたった一度目ね。
おい、おかしくないか?
何が?
人に時系列時系列言いながら、自分はネタバレするのかよ!
おっと、誰か来たようだ…、失礼するよ、オホホ……。
部屋のノックが鳴る。
弟の貴彦が友達来てるからピザの宅配を取っていいか聞いてきた。
「おう、適当に頼みな。少し俺も食べたいけど、来るまで寝ているからピザ届いたら教えてくれ」
色々考えている内に俺はそのまま寝てしまう。
身体を揺さぶられ起こされる。
「やっと起きた。もうピザ来てるよ」
貴彦が目の前にいたので、一万円札を渡し支払うよう伝えた。
少し俺もピザをもらうか。
顔を洗い、三階の貴彦の部屋へ行く。
「あ、お兄さんご馳走になってます」
後輩…、貴彦の友達らがみんな頭を下げる。
ピザに手を伸ばし俺も一緒に食べた。
「そういえば貴彦。ピザのお釣りは?」
「ああ、あれは俺の手間賃としてもらっといた」
友達の前なのか弟は変に笑いながら余裕を見せている。
「オマエ、それはちょっと違うだろ?」
山下の一件もあり、心にイラつきが募る。
「兄貴は金持ってんだから、細かい事気にしない方がいいよ」
そう言って下品に笑う貴彦。
俺の表情が怒りで覆われていき、貴彦以外の同級生は下を向けて黙り出す。
「……」
散々金を無償であげ、コイツの彼女の麻美の誕生日には新宿プリンスホテルで豪華な部屋を取って金まですべて出してやり、途中途中小遣いだってやっている。
それでこの言い草は何だ、このガキ……。
「兄貴はさ、金稼ぐのはうまいけど、金の使い方を知らないから俺が使ってやってんだ」
得意げに話す貴彦。
俺は立ち上がり、顔面を蹴っ飛ばす。
「図に乗ってんじゃねえよ、小僧が!」
怪我して引き籠もって大変だと思い、少しは兄らしい事をと金を定期的にあげてきた。
それがこんないい気にさせ、図に乗らせていただけとは……。
「もうオメーには金なんてやらねえよ」
黙っている後輩たちを無視して俺はドアを思い切り閉め、部屋へ戻った。
よし、これにて闇二十章(堕落編)は完了。
俺はアップを済ませた。
続いて次も行っちゃうか!
な、ここで矛盾発生するだろ?
嫌なタイミングで出てきたな。
店長の所いつ辞めたのとなるけどさ、まあどさくさに紛れて次で書くしかないだろ?
まあ、そうだね。
違和感覚える読者いるかな?
誰もこんな作品読まねえよ。
くっ……。
俺も三十二歳。
社会に出てからもう十四年経ったのだ。
金が無かったあの若い頃に比べたら、比較にならないほどの金が入ってくる。
しかしこの夢みたいな現状もあと二ヶ月。
それでワールドワンは終わるのだ。
従業員や客へ言えないもどかしさ。
俺と佐々木さんの二人で店の金を抜く秘密。
本当はリングの上で戦って生きたかった。
不完全燃焼の総合格闘技。
ピアノもザナルカンドは弾けるようになったものの中途半端な状態。
そして一般人離れした肉体だけが残った。
あの店が無くなったら俺はどうするのだろう。
先の事を考えてみたが、何も分からなかった。
クビにした山下の代わりに新人の西森、そして廣木が店に入ってきた。
西森は明るくとっつきやすい性格。
廣木は俺と同じ年でとても無口だが、ゴルゴ十三をこよなく愛し、その話になると無性にお喋りになる変な男だ
系列店のチャンプの遅番に警察が入り、責任者の有路と新人の中谷が捕まったという情報を聞く。
プロレス好きの有路とは話が合い、たまに仕事を終えてから食事へ行く仲だった。
そんな時でも俺はいつも通りワールドワンで働くしかない。
チャンプの二番手の原から連絡があり、一緒に焼肉へ行った。
原と有路はとても仲が悪い。
俺がチャンプに顔を出すと、どちらもいない方の悪口をいつも言っている。
チャンプがパクられた二日後、新人の中谷だけが釈放。
本人曰く、自分には強力なコネがありそれを駆使して出てきたと原は言う。
まだ出てこれない有路の事が心配ではあるが、俺には何もできる力が無い。
同じく系列店のリングが捕まる。
歌舞伎町に来て最初に働いた世永もやられたらしい。
俺は彼の紹介があって今のワンオン系列で働く事になった。
世永には弟がいて、弟は系列店のチャンピオンで働いている。
この辺は激動の時代だからさ、そろそろ店長の所離脱書け。
もう一つこの時期大事な事があったんだよ。
それを思い出した。
まあ好きにしなはれ。
シャブに手を出しトザンの銭に手を出してチャンプをクビになった久保田から突然連絡が入る。
聞いただけの話だが、林と同じ〇〇連合のヤクザへ入ったものの、現在組の金を持って逃走しているはずだ。
「久保田さん! 今どうしているんですか?」
「た、助けて……」
彼の言う助けるとは何か?
ロクでもない事に引きずり込まれるのは明白だった。
「何でシャブなんかやったんですか……」
「だって…、しょうがないじゃん……」
「いくら必要なんです?」
「五百……」
さすがに無理だ。
今の俺の持金の額じゃ足りない。
一万、二万なら気楽にあげられた。
いや、昔からの付き合いだ。
十万くらいならあげても良かった。
しかし絶対に返ってこない金五百万なんて無理だった。
それにそこまでの金は持っていない。
俺は丁重に断る。
「ごめんね、岩上君……」
それだけ言って久保田は電話を切った。
通話を終えてから、何とも言えない虚無感に包まれる。
だって無理だろ、どう足掻いたってさ。
自分で勝手にシャブに手を出して、金持ってとんずらしたのだ。
自業自得だろう?
でも彼は最後に俺へ救いを求めてきた。
いや、だからできる事できない事があるだろ?
久保田のは完全な後者だ。
浅草ビューホテル最上階スカイラウンジベルヴェデール時代の上司、林の件は?
うん、書きな。
有路が釈放された事は?
もちろん。
仕事抜け出して坊主さんの会社プロハウスへ行った時は?
当たり前。
チャンプの有路から連絡が入り、逃げていた久保田が警察沙汰になってニュースで報道されたと聞かされた。
「ニュースですか?」
「ああ、アイツよ…。組の金盗んで地方のストリップ劇場に住み込みで働いていたらしいんだよ。ヤクザの情報網ってそういうの警察より上だからさ。すぐ見つかったんだよ」
前にあった久保田からの電話。
あれは捕まるちょっと前だった。
「ヤクザに自分で運転しろって、車を運転させられ高速で新宿まで戻る途中、このまま戻ったら殺されると思ったんだろうな…。アイツ、中央分離帯へ車をぶつけたんだよ」
「そんな事したら警察来て大騒ぎですよね?」
「もちろん。それで久保田は駆け付けた警官の拳銃奪って、発砲したんだよ」
「ヤクザにですか?」
「いや、警官へ向かって」
久保田ってそんなヤバい奴だったの……。
そりゃニュースにもなるわと思った。
「ただ警官の拳銃って一発目は空砲で殺傷能力無いんだよ。それで二発目を撃とうたして、警察に取り抑えられって感じみたい」
話を聞いていてゾッとした。
あの時少しでも金を貸して関わり合いになったら、俺も巻き込まれていた可能性があったのだ。
この一件以来、久保田の消息はどうなったのか不明である。
さて、いよいよ時系列誤魔化しの部分来たよ。
ああ、多分これだけゴチャゴチャ書けば分からないと思うよ。
あれと思っても、内容の面白さで圧倒できるはずだから。
いつもの常連客が揃い、今日もワールドワンは忙しい。
以前働いていた石黒が『天龍』という仇名をつけた客が来る。
当時俺は奥でタバコを吸っていたことろ、石黒がわざわざ天龍が来たと言うので本当かよとホールへ見に行くと、プロレスラー天龍源一郎のようなパンチパーマが伸びただけのひょろい身体の別人だった。
ただワールドワンの天龍は毎回そこそこいい勝負をしていくのでいい客である。
店の設定はすべて俺がしていた。
全十四台の内、三台は最悪設定。
本日の殺し台は一卓、八卓、十三卓。
ほぼ満席で空いているのは十三卓しかない。
天龍は結構使ういい客なので、できれば殺し台には座らせたくなかった。
「山下さん…、この台昨日派手に出ていたので、あまりやらない方がいいと思うんですよ……」
本当は山下という名前だか、従業員同士で分かり易く天龍と呼んでいるだけ。
「だってここしか台空いてないんでしょ?」
「ええ…、そうなんですが…。その内他の台も空くと思うので、あまりダブルアップでバンバン叩かず、テイク入れながらゆっくり打っていた方がいいかと……」
本当は最低設定だから座るんじゃねえと言いたかったが、そうもいかない。
俺はこの台から遠ざけるよう苦しい言い訳をするしかなかった。
こういう日に限って中々台は空かない。
天龍はどんどん熱くなり、ダブルアップをバシバシ叩いている。
小声で西森に「天龍、いくらくらい入れた?」と聞くと六万は使ったようだ。
その時前の十二卓が空いたので掃除してキープし、天龍の元へ行く。
「山下さん…、前の卓空いたんでどうでしょうか?」
天龍はジロリと一瞥してから「もう六万入れてんだよ、この台に」と怒っている。
だから最初に注意したじゃねえかよ、このパンチが……。
そう言いたいのをグッと堪え、出金伝票を目の前に出した。
再び俺を見る天龍。
「山下さん、特サで五千入れるんで、前の卓でやってみて下さいよ」
この特サとは特別サービスの事で、結構金が入ったいい客に俺の権限で五千円単位のクレジットを入れる事を指す。
天龍は黙って立ち上がり、十二卓へ座る。
一応ハマった十三卓もキープはしておく。
ヒュンヒュンと音が鳴る。
タイミング良く移ったばかりの天龍がストレートフラッシュを出した。
金額にして一万五千円。
天龍は間髪入れずダブルアップで叩く。
ヒュンヒュン、バー……。
ストレートフラッシュの一気。
これで天龍は三万円の金を取り戻す。
ポーカーフェイスを気取る天龍。
だが嬉しかったのか口元はニヤけている。
十二卓が赤い画面で強制OUTしている間、天龍は再び突っ込んだ十三卓へ戻って打ち出す。
まあこれでメインは十二卓になるからいいかと俺は業務へ戻り、ホール全体を意識しながら働く。
結局ポーカーにのめり込んだ天龍は、俺らが交代の時間になっても打っている。
懲りずに魔の十三三卓を選んで打つので、これ以上何も言いようが無い。
早番には天龍が五万入る毎に特サを切っていいからと言って帰った。
夜になり出勤すると、天龍はあのまままだ店で打っていた。
「いくら入ったの?」
大倉に確認すると、現時点で二十三万負け。
少し入れ過ぎだが、俺は天龍の元へ行き、十二卓で特サを入れ勧めてみる。
黙って移動する天龍。
いきなりフォーカードが出てダブルアップした天龍は「もうその台はいい」とぶっきらぼうに言った。
言われた通り、十三卓を掃除して空けると、ケンチャンの細かい客が入ってきてそこへ座る。
「いいんですか、あんなガジリに十三座らせちゃって」
伊藤が小声で近付いてきた。
ケンチャン…、別名をガジリ、または乞食と業界用語で呼んでいる。
「自分でもういいと、台を空けたんだから仕方ないよ。いつまでも二台キープなんて無理だし。それにあの台設定最悪にしてるから……」
「おっ、ロイヤル!」
十三卓へ座ったばかりのケンチャン客は、いきなりロイヤルストレートフラッシュを引く。
即テイクボタンを押し、三万を確約する。
台を移ったばかりの天龍には可哀想だが、しょうがない。
「……」
金も尽きたのか天龍は無言のまま立ち上がる。
キャッシャーの前を過ぎる際、こちらを見てニヤリと口元を歪めながら店を出た。
薄気味悪かったので、廣木に後を付けるようお願いする。
天龍が出ていっても店内は忙しい。
ロイヤルを引いたケンチャンはオリ二千円だけやって帰ろうとしたので、出入禁止にした。
廣木が戻ってくる。
「天龍どうだった?」
「最初はうちのビル…、壁に住所のパネルあるじゃないですか」
「うん、小さいのが貼ってあるよね」
「それ見て何かメモしていたんで、ヤバいなとは思ったんです」
「それで?」
「そのまま付けたら、真っ直ぐ駅の方向へ行って、アルタ前の新宿駅東口の階段降りて行ったんで、戻ってきたんです」
「そう…、最初のビルの住所を見ていたのが気味悪いね」
廣木を一服させる。
最低設定の台で二十四時間打ち続ければ、そりゃあ二十数万負けるよな……。
何とも後味悪い結果になったが、これも賭博商売。
次来た時良く接してあげればいいか。
合間を見て、西森から食事休憩を回す。
彼が店を出てすぐ電話が入る。
俺はキャッシャーに置いてある受話器を取ろうとして固まった。
キャッシャー奥には小さなモニターが二つ設置され、一階の入口から地下への階段、そして扉の前の通路が映るようになっている。
そのモニターに盾を持った人間がズラリと階段に並んでいるのだ。
しかも入口のガラスの扉を外からソーッと伺う警官…、いや、これ…、機動隊か?
「い、岩上さん…、そ、外に盾持った連中が店を囲んでいます……」
「ああ、カメラで見えてるから分かる。西森、オマエはどこにいる?」
「食事で外に出ようとしたら、盾持った連中がこっち来たので、慌ててビルの階段上りました」
「分かった、西森はそこにそのままいろ。もし何か聞かれたら、上の風俗の店員だと誤魔化せ」
電話を切る。
店内はほぼ満席状態。
機動隊は突入するタイミングを見計らっているように見えた。
ここに機動隊が盾持ったまま突入されたら、大パニックになるぞ……。
俺は従業員たちに小声で客全員にゲームをやめさせるよう伝える。
そして合図をしたら、すぐ逃げられるよう準備させた。
俺から外へ出てみよう。
店内が静まるのを待ってから、ドアを開け外へ出た。
ガシャガシャ……。
一斉に機動隊全員の盾が俺に向く。
「何ですか、一体!」
俺が大声を出すと、機動隊はポカーンとこちらを見ている。
入口近くにいた隊員が「な、中で何もないんですか?」と聞いてきた。
「何もないとは?」
「百十番通報ありまして、こちらのビルで三十代の髪の長い男が銃を乱射していると聞きましてね」
「そんな訳ないじゃないですか!」
階段から機動隊をどけながら、スーツを着た中年男性が降りてきた。
この中の責任者だろう。
「どうも…、百十番通報受けといて、どうせガセだから出動しないなんてできないんですよ、私らは」
「は、はい…、仰る通りですよね……」
「中にお客さんいますよね? パニック起こされても困るんで、私が今から中で説明します」
まだ誰も客は機動隊が外にいるなんて知らないのだ。
そんな真似されたら、それこそ大パニックになってしまう。
「いえいえ、中の人たち誰も知らないんです! だから大丈夫です! うちは健全にやっていますので……」
「うーん、でもなあ」
「いや、刑事さん! 本当にうちはイカサマも無ければ健全に…、本当に健全にやってるんですって!」
裏稼業のゲーム屋で健全もクソもないが、とにかくこの機動隊の親玉を中へ入れないよう必死だった。
「うーん」
「ご多忙の中お疲れ様でした。ほんと中での説明は大丈夫ですので……」
俺は入口で壁になり、親玉を通せんぼするような形で必死に口を動かす。
「まあ、何も無いならいいでしょう…。これで引き上げますから」
「ほんとお疲れ様でした!」
俺は機動隊全員が階段を上がり外へ出るまで、深々と頭を下げたままでいた。
よし、やっと引き上げてくれたよ……。
店内へ戻ると、みんないつものようにポーカーをしている。
呑気なものだ
こっちは寿命が縮まる思いをしたのに……。
それにしても機動隊の群れに自分から突入したなんて、いい経験をしたものだ。
いやいや、二度とあんな真似ごめんだ。
とりあえず騒動は治まったので、佐々木さんに連絡を入れておくか。
従業員たちに簡単な先程の様子を伝えておく。
みんな監視カメラで、俺とのやり取りを見ていたらしい。
客は誰一人、外の騒動は知らないと言う。
「分かった、俺は外で佐々木さんへ連絡入れとくよ。こういう事があったって」
階段を駆け上がり、一番街通りにさっきの機動隊がいないのを確認する。
よし、いないな……。
俺は携帯電話を取り出し、佐々木さんへ電話を掛けようとした。
「おいっ! オマエここの店長か?」。
いきなり肩を掴まれ、目つきの悪そうな三人の男が立っていた。
全員スーツ姿。
どう考えても刑事にしか見えなかった。
目の前で俺を睨む刑事三人。
これ、絶対にヤバいよな……。
「おい、店長かって聞いてんだろ?」
「いえ、タダの従業員ではありますが……」
「さっき盾持った連中来たろ?」
「はい、来ました! ガセネタだったようで、ご多忙のところすみませんとお帰り頂きましたが……」
「テメーふざけてるとパクるぞ」
「勘弁して下さいよー、刑事さーん……」
「ふざけんな、テメー!」
絶対にコイツら、中に入るつもりだ。
何とかしないと……。
俺は一番街通りのほうを見て指をさし「あれ?」と口を開く。
「あ、何だ?」
一瞬の隙を作り、ダッシュで階段を駆け降りる。
店に入るなり「警察だーっ! みんな出ろっ!」と叫ぶ。
一斉に立ち上がる客たち。
ケンチャンの一人が「自分のクレジットはどうなるんですか?」と聞いてきたので「いいから早く出ろっ!」と外へ突き飛ばす。
「おいっ、奥のケーブル全部引っこ抜け!」
「え、どのですか?」
テンパっている伊藤。
「台の電源全部だよ!」
その時入口に刑事の姿が見えた。
一人の客を捕まえて尋問しようとしていたので、俺は両腕で刑事三人を壁に押し込む。
「テメー、このガキが……」
あたふたしている客に「早く行けっ!」と怒鳴りつける。
客全員が階段を駆け上がると、刑事は胸倉を掴んできた。
「よくもやってくれたな、このガキが……」
「あはは…、中へどうぞ、刑事さん……」
「テメーも一緒に来いっ!」
店内へ入ると刑事は警察手帳を出して「動くなよ!」と従業員たちを威嚇した。
俺は背後から「みんな、まだ入って一ヶ月以内のアルバイトばかりだし、給料も一万円しかもらえてないですよー」と大声を出す。
最悪これで全員警察署へ持って行かれても、調書は同じ事を言うはず。
刑事の胸倉を掴む手に力が入る。
「オマエ、さっきから……」
「無抵抗の人間にさっきから痛えっすよ、刑事さん」
俺は刑事の手首の関節を取り、そのまま転がした。
「この野郎! 抵抗しやがって!」
俺は両腕を天井に向けて上げた。
「抵抗なんてしてないじゃないですか。苦しかっただけです」
他の刑事は従業員を壁一列に並べ、質問をしていたので「そいつら何も分からないすよ! 一万円の給料目当てで入ったばかりの新人ですから」と叫んだ。
「オマエよ……」
「自分も入ってまだ三ヶ月のただの従業員なんですよ。あ、社長に電話します! ちゃんと社長いますから」
「ふざけやがって……」
俺は受話器を取り、キャッシャーテーブルに貼ってある名義社長の番号へ電話を掛けた。
「もしもし!」
店からの電話なんて初めてなんだろう。
名義社長の声は震えている。
「あ、社長! 実は刑事の方々がお店に来られましてね……」
「貸せっ!」
俺から受話器を乱暴に引ったくる刑事。
結局のところゲーム屋は現行犯逮捕なので、客がいないこの状況では何もできないのだ。
「いいか? 社長のオマエは今から新宿警察署に来い」
叩き付けるように受話器を置き、刑事たちは引き上げた。
最悪俺くらいは連れて行かれると思ったが、大丈夫だったようだ。
佐々木さんに現状を伝え、とりあえず今日は店を閉めて解散となった。
あれ?
所って四十四人の火事のあと、生活安全課の刑事が何度も来て、歌舞伎町ビル火災で一休で爆破した中国人はってところで、そのあとの警告でビビッて辞めたの確か書いているよ?
店長だから多少の楽ぐらいはしてもいいと思っていた。
年上だし敬った対応をしていたつもりだ。
しかし最近の所の業務姿勢は明らかに酷い。
俺はホールを従業員に任せ、奥の休憩室へ向かう。
寝ている所を起こし「所さん、いつまでぬるま湯に浸かってんですか?」と文句を言った。
睨んではきたが何も口を開かない。
「みんな休憩も入れず、ホールを駆けずり回りヘトヘトですよ。少しは店の事考えてくれても良くないですか?」
所は終始無言だった。
翌日になり早番の吉田が帰り際俺に声を掛けてくる。
「岩上さん…、さすがに所さんにぬるま湯発言はマズいですって。所さんにそんな事言うの岩上さんぐらいですよ」
確かに言い方は悪かった。
しかし所の最近の行動は酷い。
その数日後、所はワールドワンを辞める事になった。
先日の警察や強盗の一件、俺との関係の悪化、年齢的な問題もあったのかもしれない。
送別会をやったが、所が俺に対し話し掛けてくる事はなかった。
この系列に入ったのは俺が先ではあるが、ワールドワンオープン当初からいる吉田が店長になる。
俺はそのまま遅番の責任者へ繰り上がった。
ほら?
十二章で辞めてんじゃん。
いや、俺があの時言った矛盾点はな、石黒が機動隊の時にいるだろ?
うん、天龍のくだりでそれは覚えているよ。
だから何故とっくに辞めた石黒が出てくるんだ?
あ……。
だからこの部分を誤魔化してここに入れろいう意味合いで言ったの。
何だか都合いいなあ、店長の所がとか俺絶対聞いたよ?
いいから続き書けっ!
翌日もワールドワンは店を休み、店内工事の為と貼り紙を貼っておく。
俺は夕方くらいに新宿へ来るよう言われ、一番街通りの喫茶店上高地へ行った。
少しして佐々木さんも到着。
「昨日は大変やったねー、岩上君お疲れ様」
そう言いながら封筒を渡してくる。
「何ですか、これ……」
中身は十万円。
「名義が刑事から言われたみたいよ。あのガタいのデカい従業員、アイツは逃さないよう大事にした方がいいぞって」
咄嗟の機転で動いただけだが、本来敵である警察側からそう言われるのは何だかこそばゆい。
「面倒な自体になるのを避けたかっただけですよ」
俺は封筒を返そうとすると、佐々木さんはそれを制し「上から出たもんやから、受け取っといて」と言われる。
「じゃあせめて佐々木さんと折半で……」
「いやいや、それは岩上君が取っといてや」
しばらく考えたが、俺がいくら言っても受け取らないのは知っていたので封筒を受け取った。
「あの時いた従業員たちと等分させて頂きます」
「うん、岩上君にあげたもんやから、それは好きにしてや。多分店はあと二、三日大事を取って閉めると思う。…と言っても、どっちみちあと一ヶ月やけどね……」
そう…、あと一ヶ月ほどでワールドワンは無くなるのだ。
降って湧いた休み。
俺は地元のジャズバーのスイートキャデラックで飲み、ミサキのいるキャバクラのサンタナで朝方まで飲み、家の隣のトンカツひろむでさらに飲んだ。
「智一郎、店もう閉めるから、川越市場まで行って飲むか」
先輩の岡部さんが誘うので、とことん飲み明かす。
この人は一番街の四十四人のビル火災の時も真っ先に俺の身を心配して連絡をくれた。
トンカツひろむで岡部さんの良識、基本的なあり方を学び、また俺の見本とした先輩。
ちょっと前ならジャックポットの野原さんもここにいたはず。
でももうそれは無理な話。
野原さんは亡くなってしまったのだから。
俺と岡部さんはお互い口には出さないが、野原さんの分まで楽しんで酒を飲むつもりだ。
市場で飲み終わると帰り道途中にあるデニーズへ寄り、またそこで酒を飲む。
そんなこんなでもらった十万は無くなったので、従業員に等分すると格好つけたがまあいいかと思った。
俺と佐々木さんしか知らない十万円なのだ。
ここで野原さんのはなむけに使うのも悪くない。
「前だったらここに、野原さんも一緒にいたんでしょうけどね」
俺がそう言うと、岡部さんはしばらく考えてから「そうだな」と微笑んだ。
弟の貴彦にはもう小遣いをあげる事は一切しなくなった。
「兄貴は金を稼ぐのは上手いけど、金の使い方を知らないから、俺が上手く使ってやってんだ」
自分の友達の前だからと調子に乗り過ぎた。
俺から貴彦へ一度は歩み寄ったのだ。
親父の妹である叔母さんのピーちゃんにも、一度俺から歩み寄るべきではないのか……。
先日の林の一件で心を痛めていた俺は、現実逃避とはいえ何かしらしたかった。
出勤する家を出る前に一階の居間へ顔を出す。
「あのさ…、俺、朝方仕事終えて帰ってくるからさ、肉とか野菜とか何か必要なものあったら買ってくるけど……」
変な言い方ではあったが、俺なりの精一杯の心遣いのつもりだった。
「キャベツが欲しい」
こちらを見もせず、テレビを見ながら話すピーちゃん。
「分かった。明日になるけど買ってくるよ」
こちらから少しずつ歩み寄れば、家族間絶対にうまくいくだろう。
親父との雪解けはまだ難しい。
まずピーちゃんから懐柔していけばいい。
何故そんな心境になったのか分からなかった。
言い返すから口論になる。
相手を変えるんじゃなく、まず自分が変わらなきゃいけない。
店に出れば多額の金を佐々木さんと抜き、いつもと変わらない日常。
違うのは帰り道本川越駅ビル地下にあるぺぺのスーパーで、キャベツを買って帰る事。
俺は男なので、買い物カゴにキャベツ一つだけというのは恥ずかしかった。
なので日持ちするような野菜、じゃが芋や玉ねぎ、人参もカゴへ入れる。
肉も冷凍すればいいからな。
そこそこ値段の張る牛肉を五百グラム買った。
適当に調味料関係も入れ、五千円程度の買い物をして帰る。
ピーちゃんへ袋を渡す。
喜んでくれると思った。
「何だよ、私はキャベツだけって言ったのに余計なものまで買って……」
「キャベツ一つだけ買うなんて恥ずかしかったからさ……」
「こういう無駄遣いをしてるから、オマエは駄目なんだよ」
好意で買っただけ。
金だって俺がすべて出している。
何故こんな言われ方をされなければならないのだ?
いや、ここで怒るからいつも口論になるのだ……。
冷静に…、心を静めろ……。
「そうだね…、だから俺は駄目なのか……」
俺は二階の自分の部屋に戻り、思い切り壁を殴った。
分析しよう。
ピーちゃんは家の仕事の仕事が終わると、スポーツジムへ行き、帰ってきたら居間でテレビを見る習慣がある。
女性だけあってフルーツやヨーグルト、ケーキを食べながら……。
俺は帰り道、本川越駅改札手前にコージコーナーがあるのでケーキを持って行く事にした。
普段ケーキなど食べないから何を買っていいか迷う。
店員に尋ねると無難なのがショートケーキと言われる。
その種類だけでも様々だ。
「ちなみにお姉さんがここのケーキ…、ショートケーキをプレゼントされるとしたら、何がいいですか?」
「うーん…、私でしたら、この五百円のもらったら嬉しいですね」
「じゃあそれを二つ下さい。ひょっとしたら毎日のように買いに来るかもしれないです」
そんな感じでショートケーキを買って帰る。
ピーちゃんに渡すとケーキは喜んでくれた。
「中に苺がたくさん入っているけど、結構高かったろ?」
「一つ五百円のショートケーキ」
正直に言うと、おばさんは「私だったら二百五十円の二つ買うな」と言われた。
だから五百円のショートケーキ二つ買ってきてるじゃねえかよと言いたいのを我慢する。
一言いつもこの人は余計なのだ。
普通にありがとうだけでいいのに……。
揉めない方法。
この人とは長く会話をしちゃいけない。
何を言われても流せ。
同じ空間に長居するな。
部屋に戻って考えてみる。
こんなんで本当に仲良くできるのか?
先行き不安しかなかった。
ねえ、ここまでちゃんと赤裸々に書いたけど?
うん、頑張ったな、よしよし。
さっきの質問に答えろよ?
あ、ほら、早くアップしないと、文字数でまだ引っ掛からないと思うぞ。
このクソヤローが……。
俺は、闇二十一章(ゲーム屋地獄変)をアップした。
これでニ十一章分書けたのか。
横文字だしブログで書いているからな。
原稿用紙で何枚分なのか、想像もつかないや。
いや、最低一章一万文字以上にしているから、四百字詰めで見たら、ビッチリ詰めて二十五枚計算。
十一章から、一章毎に振り返ってみるか。
消防法がこれで変わった新宿歌舞伎町一番街の大火災、当時の実話。
家を出ていったお袋に実は妹がいたという話を聞く。気になった俺は。
この女を抱いてどうしても自分のものにしたくなった。
この子の為に俺は何ができるのか、一人の女に惚れた話。
三十歳になりピアノを始めてみる、この曲が弾きたくて。
本当に空回りしている馬鹿な男の話。
努力したからといって、それが必ず報われるとは限らない。
ゴマすりだけが専売特許のクズをクビにした話。
急に多額の金をもらえるようになった俺は日々堕落していく。
裏稼業をやるリスク、それらを俺はあまり経験していなかった。
始めは簡単なあらすじだけパパパと書くつもりが、気付けば小説になりつつあるよね。
まあ書き始めたから、自分が納得するまで書き続けないと。
あ、仕事まであと一時間しかない。
ハンバーグサンド作らないと。
食パン焼いて、サウザンドドレッシング塗ってレタス、マヨネーズ。
ハンバーグ乗せてチーズも。
切って盛り付けておしまい。

一つは今食べて、残りはインカジ『レディ』へ持っていこう。
時間ギリギリじゃん。
手抜きだし、不格好な出来栄えだな。
出たな、岩神!
おまえよー、朝からこっちは焼肉丼作って、闇を二章分書いて、このハンバーグサンド作ってんだぞ。
ふざけんじゃねえよ、何が店長の所だよ。
いや、石黒って言わなかったっけ?
岩紙って薄っぺらい紙にしやがれ、馬鹿。
佐々木さんとの金、ちゃんと貯金して事業に回せば、いくらでも金持ちになれたのにね。
うっせーよ!
あ、でもロマンス詐欺で取られる金額が増えるだけか、モケケ。
黙れ、馬鹿野郎!
あ、新宿駅に着いた。
さてと仕事頑張ってきますかね。

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