ロックから学ぶ英語――『Let It Be』『I Shall Be Released』『We Will Rock You』で読み解く will と shall
『Let It Be』と『I Shall Be Released』――二つの「希望」の歌
1970年に発売されたビートルズ最後のオリジナル・アルバム『Let It Be』。タイトル曲「Let It Be」はLPではA面6曲目、つまりA面を締めくくる位置に収められている。
この曲は、人生に苦しみや迷いがあっても、「やがて答えは見つかる」と静かに希望を歌う作品である。その象徴が、曲のなかで繰り返し出てくる"There will be an answer." という一節だ。
ここで使われている will は、「〜だろう」という単なる未来を表す助動詞ではない。「きっとそうなる」「そう信じている」という確信と希望、信頼が込められたwillである。だからこの一節は、「いつか答えがあるだろう」という予測ではなく、「きっと答えはある」という力強い励ましとして響くのである。
これと同様に助動詞の使い方で印象的なのが、ボブ・ディランが1967年に書いた 『I Shall Be Released』 だ。
この曲は翌1968年、ザ・バンドのデビュー・アルバム『Music from Big Pink』で初めて世に出た。ディラン自身の作品としては、1971年発売の『Bob Dylan's Greatest Hits Vol. II』に収められている。
この曲は、閉ざされた場所からいつの日か自由を得ること、そして苦しみの先に訪れる解放への希望を歌っている。
shall も本来は未来を表す助動詞で、「~だろう」と訳されることが多い。しかし現在では日常会話ではあまり使われず、聖書や賛美歌、演説、法律文書などでは、「必ずそうなる」「そう定められている」という厳かな響きを帯びることがある。
だから I Shall Be Released は、単なる「私は解放されるだろう」という未来の予測ではない。
「私は必ず解放される。」
「自由になる日は必ず来る。」
そんな揺るぎない希望と信念が、この shall という一語に込められているのである。
ビートルズは will で希望を歌い、ボブ・ディランは shall で信念を歌っているのである。
助動詞は意外と奥が深い。たった一語の違いが、曲が伝える希望の色合いまでも変えてしまうのである。
「We Will Rock You」――希望ではなく、未来への宣言としての will
さらに、助動詞 will の持つ力強さを感じさせる曲がある。
それが、1977年に発表されたQueenの代表曲 『We Will Rock You』だ。
この曲で使われている will も、『Let It Be』の "There will be an answer." と同じく、単なる「〜だろう」という未来の予測ではない。
そこには、「必ずそうする」という強い意志と確信が込められている。
ただし、『Let It Be』の will と『We Will Rock You』の will では、その響きは少し異なる。
『Let It Be』の will が、「きっと答えはある」という静かな希望や信頼を表しているのに対し、「We Will Rock You」の will は、未来にたいする宣言といっていいだろう。
ちなみに、ここでの rock は、ロックを演奏するという意味ではない。動詞として「揺さぶる」「大きな衝撃を与える」という意味である。
つまり、タイトルの意味は単純に「私たちはロックするだろう」ではなく、
「俺たちは必ずお前を揺さぶってやる」
「俺たちは必ず大きな衝撃を与えてみせる」
という力強いメッセージなのである。
