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ライターが観ている映画編:「能登デモクラシー」

映画館視聴シリーズ、今回は「能登デモクラシー」です。何かしらの創作に携わっている方にはおそらく「刺さる」作品なので、ぜひライターはもちろん、映像や文学などに携わる人に見てほしいです。

本作の舞台は石川県鳳珠郡にある穴水町。筆者はこの街がルーツの1つのため、撮られている映像を見ると「海と山、あぁこんなところだったかな」と感慨深いものがありました。幼少期の夏休みに毎年過ごした場所です。現在は過疎化が進み、高齢者も出生者も減り続ける限界の町。舞台はこの街の政治と暮らしに焦点が当てられています。

さて、詳しい内容は映画秘宝さんのnoteに書かれていました。素晴らしいインタビューなので私からの細かい記載は割愛します。ぜひ下記をご一読ください。

私個人としては、今も地方を拠点に生きている視点から書きます。まず、本作は地方政治と過疎の暮らしがメインのテーマです。地方政治は候補者と有権者の間に「何かしらのつながりがある」ことが多いです。国政選挙とはまるで違う世界で票が動きます。そして、それは悪なのかと言えばそうとも言い難い。地方では国政選挙よりも地方選挙の方が激しいとさえ言われます。実際に政治の仕事に携わっていたので、穴水町の政治の空気感は「あぁまぁそうなるんでしょう」という印象を持ちました。

民主主義としがらみ

本作では町長のある取引に厳しい指摘が行われますが、映像できちんと撮られているように、町長は地元に「雇用」を創出している経営者でもある。しがらみと言えばしがらみですが、そこで生きる人たちからすると「避けられない」あるいは「ありがたい」人でもあります。

過疎が進む場所では若い方が働く場所は「役場」と「介護施設・医療施設」なんです。これは穴水町以外にも言えることです。地方に残る決断をする以上、公務員や医療・介護の職員として手堅い場所で働きたい気持ちもわかります。すると、政治に近い場所で苦悩しながら働くことになります。仕事の種類が都市部より圧倒的に少ないですから、選択肢も限られている。町長が経営する某施設の求人も映されます。

仮に汚職があったとしても、有権者である地元の人たちの手で正しさを求め、失職を願うことがとても難しい場所なのです。そこで、2人の人物にスポットが当たっています。穴水町生まれの滝井夫妻です。

滝井夫妻は地元生まれ同士の仲睦まじいご夫婦で、滝井さんの夫は地域のお子さんたちを見守っている教育者です。震災後には地元の方々のケアのためにボランティアに回ります、もちろん議員ではありません。普段の暮らしもDIYに近く、その様子は「聖人」のようです。

民主主義を地でゆく正しさ。
教え子に疎まれる様子も映されるほど清いのです。

滝井さんが地道に政治を見つめる様子を地元メディアが丁寧に撮り続けることで、メディアの力も合わさって力を持つようになります。さらに、滝井夫妻も被災されているにもかかわらず、震災後はボランティアとして歩き続け、ついに政治が少しずつ変わろうとしていきます。自然災害と過疎化という重い課題が今後も続きますが、滝井夫妻を真似る議員も出ており少し明るさも見えるような終わり方でした。穴水町の同じような課題を抱えている自治体は多いでしょう。地方に生きていたり、何かしらのしがらみを抱えて生きる私たちは、常に正しさと仕方なさを抱きしめながら進むしかありません。

本作は監督が、滝井夫妻だけに正しさを押し付けたりしません。最後にきっちりと顔を出し、カメラとともに釘を刺しに行きます。この様子があるだけで滝井さんは1人ではなくなり、少しほっとさせられます。地方メディアが主体となりこの作品を撮ってくれる。そこに「救い」があるのです。五百旗頭監督は本作以外にも富山市議会政務活動費の問題を撮影しており、さすがという作品でした。今後自分の活動や記事にも、少なからず影響を受けると思います。本当に良い作品でした。

淡々と記録を作る

ライター・報道記者へと進む直前に、私は個人的な制作として1年間にわたって1つの植物園の写真を撮影していました。豪雪の日も行き、夏の日差しが肌をえぐるような日も行きました。素人の思い付きで始めた記録写真は1000枚を超えるのですが、これはと思う写真はわずか6枚程度でした。いずれきちんとまとめようと思いつつ、小さな揺らぎもあって思うように作品化できていません。ずっと心残りになるのだろうと思っていました。

本作は季節がわかるシーンが多く、いかに積み重ねることが「説得力」を持つのか、改めて感じ入ることがありました。言い訳せずに1から作るしかない。心残りなら形にするしかないのでしょう。監督の鋭くも優しい視線で撮影された映像を通し、なぜか背中を押されるような気持ちになりました。書きたいように書けない時があったように、撮りたいものが撮れるとは限りませんが、続けると意外な1枚が撮れることもあるでしょう。





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