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ジェレミー・ブラック『海戦の世界史――技術・資源・地政学からみる戦争と戦略』

『海戦の世界史』(中央公論新社、2019年)

海戦の近代は蒸気力と鉄製軍艦、近代砲の組み合わせとともに始まり、激しい国際競争の時代の幕が開いた。1860年代から未来までの海戦を辿り、著名な歴史家ジェレミー・ブラックは世界規模の戦略と戦争のダイナミックな説明を提供する。ブラックは、大国の役割だけでなく、海戦に関わったすべての国を評価するために、技術進歩と地政学、資源問題の相互作用に焦点を当てる。1945年以降、特に冷戦終結後の紛争と変化を強調する著者は、諸国海軍の将来の発展とその挑戦者、海洋力の地政学を考察する。

『海戦の世界史』目次

序文
略号一覧 
第一章―甲鉄艦の時代、一八六〇〜八〇年
新しい技術/蒸気力/南北戦争、一八六一〜六五年/一八六〇年代のヨーロッパにおける海軍紛争/一八七〇年代のヨーロッパと米国の海軍力/グローバルな諸相、一八六〇〜八〇年
第二章―海軍の夢と競争、一八八〇〜一九一三年
一八八〇年代、変化する技術/戦艦への回帰/新しいドクトリン/海軍作戦、一八八〇〜九九年/新しいグローバルな諸相、一八八〇〜一九〇五年/「ドレッドノート」と海軍競争/グローバルな展開、一九〇六〜一三年/米国/新しい技術/結論
第三章―第一次世界大戦、一九一四〜一八年
一九一四年/一九一五年/潜水艦戦争/一九一六年/一九一七年/一九一八年/海軍のエア・パワー/結論
第四章―余波、一九一九〜三一年
海軍軍備制限/海軍の軍事行動/戦力構成/太平洋への計画/ラテン・アメリカ/結論
第五章―戦争の準備、一九三二〜三九年
太平洋を争う/海軍のエア・パワー/ヨーロッパにおける挑戦/イギリス帝国/フランス/ソヴィエト連邦/一九三〇年代の海軍紛争/結論
第六章―海軍の大決戦、一九三九〜四五年
戦争の始まり/ノルウェー、一九四〇年/フランス、一九四〇年/イギリスへの脅威/地中海での戦争/大西洋への苦闘/潜水艦攻撃/海軍の武力外交/東部戦線/日本の攻撃/真珠湾/日本の進撃、一九四一〜四二年/太平洋での戦争、一九四二年/ガダルカナル、一九四二〜四三年/太平洋での戦争、一九四三年/太平洋における潜水艦/ドイツとの水上海戦/大西洋の戦い/太平洋戦争、一九四四年/ヨーロッパにおける水陸両用作戦、一九四三〜四四年/ドイツとの海戦の最終段階/日本の崩壊、一九四五年/結論
第七章―冷戦:米国覇権の時代、一九四六〜六七年
一九四〇年代後半/中国内戦、一九四六〜四九年/朝鮮戦争/戦力構成/海軍のエア・パワー/原子力潜水艦/キューバ・ミサイル危機/ベトナム戦争/地中海における緊張/その他の地域での紛争/結論
第八章―冷戦:挑戦を受ける米国、一九六七〜八九年
ソ連の海軍増強/空母戦争/NATOの反応/フォークランド戦争、一九八二年/海軍の活動/結論 
第九章―冷戦後、一九九〇年以降
能力を評価する/米国の覇権/一九九〇年代のロシア/米海軍力のポリティクス/シー・パワーの役割を争う/戦力投射/通商保護/調達を巡る議論/海軍のエア・パワー/中国/大国間の緊張と争い/海軍力の多様性/結論
第一〇章―未来へ
地理/経済の傾向/海賊と取り締まり/海軍の能力
第一一章―結論
精選推奨文献
原注  
訳者あとがき  
索引

『海戦の世界史』著者紹介

ジェレミー・ブラック(Jeremy Black)
1955年生まれ。エクセター大学歴史学教授。ケンブリッジ大学クイーンズ・カレッジを卒業して、オックスフォード大学大学院で学んだ後、ダラム大学で博士号を取得。近世イギリス史およびヨーロッパ史の権威であり、国際関係、軍事史、帝国史、出版文化、歴史地図、地政学など関心は幅広い。軍事史分野への長年の貢献を認められ、2008年に米軍事史学会のサミュエル・エリオット・モリソン賞を受賞。これまでに100冊以上の多岐にわたる著作を発表している。日本では主に地図関係の著作が邦訳されている。『世界史アトラス』『地図の政治学』『図説 地図で見るイギリスの歴史』『世界の都市地図500年史』『海軍の世界史』など。

『海戦の世界史』レビュー

19世紀半ばの蒸気駆動・鋼鉄製軍艦の登場は海戦の性格を劇的に変化させた。簡明な歴史概説書を書く能力において右に出る者のない、多作なブラック(エクセター大学)は、近代的シー・パワーの時代の特徴である技術進歩と工業経済、戦力投射の地戦略(ジオストラテジー)を見事に融合させた、簡潔だが非常に詳細な叙述をしている。ほとんどの海軍史は19世紀前半に重点を置くが、ブラックはこの時期を最初の章で巧みに要約し、冷戦を経て現代の分析へと手際よく叙述を進める。……ブラックのいつもの雄弁さと風変わりだが魅力的な余聞がちりばめられた、近代海戦に関する豊かな情報源として、この歴史書は非常に引き込まれる読み物だ。(米大学・研究図書館協会書評誌「CHOICE」)
本書の強みは、ブラックの視野の広い歴史観と海軍競争の幅広い解釈にある。ブラックが叙述を形作るために最新の海軍史研究の多くに依拠し、最新の作戦および組織に関する歴史だけでなく、海軍の文化と政治に関する著作も引用していることは賞賛に値する。本書の最後にある注釈と精選推奨文献には吟味する価値がある。……『海戦の世界史』は有益な一巻本の概説書だ。……このテーマの教科書や入門書を探している者にとって、本書はその包括性と明瞭さのために良い選択肢となるだろう。(米軍事史雑誌「Military History」)
ジェレミー・ブラックのグローバルな戦略的アプローチは野心的だが、非常に成功している。読者がどのような関心から読むにせよ、この豊かな研究から皆が新しい重要な洞察を得られるだろう。(スウェーデン海事史雑誌「Forum Navale」)
ジェレミー・ブラック教授による1860年以降の海軍戦略の見事な要約を一言で紹介するなら、「傑作」ということになる。読者がこのテーマについて何十年にわたる知識と研究の経験を有する専門家であるか、海軍史が好きな一般読者であるかを問わず、この優れた書は誰にでも合うだろう。……史上最大の技術的変化だけでなく、世界史上で最も破滅的な戦いを目の当たりにした時期の海戦について、非常に明瞭、簡明、明確で読みやすい描写を提供する。……中国の海洋における勢力拡大とロシアからの海における新たな挑戦、その他の海の脅威という時代において、西側民主主義諸国およびその主要なグローバル同盟国の重要な国益を維持するためには、西側諸国の海洋力、また実に海軍の大戦略が間違いなく鍵となることをブラックははっきりと認識させてくれる。(英軍事史雑誌「War in History」)
『海戦の世界史』において、著名な歴史家ジェレミー・ブラックはシー・パワーと海洋戦略、海軍の変容に関する魅力的で明快な研究を提示している。一九世紀半ばの近代海軍の誕生に始まって現代まで、ブラックは海軍力を築き上げ、利用する指導者たちが直面した、戦略、作戦、そして戦力構想のジレンマを検討する。米国とアジアの大国が海洋公共財の管制を争うためにますます大きな能力を獲得しつつある現在、ブラックの海軍戦略と海戦への洞察が大いに必要とされている。『海戦の世界史』は大戦略、そしてシー・パワーが各国の運命を決する役割に関心を持つすべての者に読まれるべきだ。(米海軍大学校教授ジョン・H・マウラー)
本書は、マクロレベルでの最先端の近代軍事史解説者の洞察から恩恵を受ける海軍専門家だけでなく、魅力的な概説を求める一般読者を含む幅広い読者にアピールする希有な著作である。装甲艦の導入の分析から現在および未来の世界各国海軍の評価まで、ジェレミー・ブラックは海軍史の著作にはあまり見られないような幅広い文脈の理解を提供する。(インディアナポリス大学歴史学教授ローレンス・ゾントハウス)
ジェレミー・ブラックは、読者に刺激的な結論と現代的な考察を提供するために、広範におよぶテーマを展開し、問題の見過ごされてきた側面を提示し、また魅惑的な詳細に満ちた叙述をすることに優れている。こうした才能は、この海戦の新しい研究で十分に示されている。ブラックの分析は過去150年にわたる海戦の複雑さと重要性を鋭く示しており、将来の海軍の役割に関する我々の理解に重要な問いを投げかけている。(ウェストミンスター大学名誉教授リチャード・ハーディング(海軍史))

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ジェレミー・ブラック著、矢吹啓訳『海戦の世界史――技術・資源・地政学からみる戦争と戦略』(中央公論新社、2019年)

甲鉄艦から大艦巨砲時代を経て水雷・魚雷、潜水艦、空母、ミサイル、ドローンの登場へ。技術革新により変貌する戦略と戦術、地政学と資源の制約を受ける各国の選択を最新研究に基づいて分析する海軍史入門。中央公論新社から2019年5月下旬刊行予定。416頁、3600円+税。

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