催眠の悪用は犯罪です──掛け手が知っておくべき法律の話
同意なく催眠を使って性的な行為や支配をすることは、「プレイ」でも「イタズラ」でもありません。性犯罪です。
相手が抵抗しなかった・声を出さなかったことは、同意した証拠にはなりません。
「バレなければ大丈夫」ではありません。バレなくても、犯罪は犯罪のままです。
有罪になれば、拘禁刑(いわゆる懲役)や前科という現実が待っています。
概要
「催眠」は、正しく使えばリラックスや癒しにつながる、価値のある技術です。
ですが同時に、人の判断力や「嫌だ」と言う力を一時的に弱める技術でもあります。
だからこそ、事前の同意なしにこれを性的な目的や、相手を意のままに操る目的で使うと、日本の刑法上、重大な犯罪になり得ます。
この記事では、
・ 同意なく催眠を使って相手を性的に辱めた場合
・ 心理的に支配(いわゆる「洗脳」)しようとした場合
に、具体的にどんな罪に問われる可能性があるのかを、できるだけ平易にまとめます。
これから掛け手として活動しようとしている方はもちろん、「相手が同意していなくても、うまくやればわからないだろう」と考えている方にこそ、読んでほしい内容です。
筆者は弁護士ではありません。
一般的な情報としてまとめたものです。個別の状況については、弁護士など専門家にご相談ください。
詳細解説
中心になるのは「不同意わいせつ罪」「不同意性交等罪」

2023年、刑法の性犯罪に関する規定が大きく改正されました。
今の中心条文は次の2つです。
刑法176条(不同意わいせつ罪) … 6か月以上10年以下の拘禁刑
刑法177条(不同意性交等罪) … 5年以上20年以下の拘禁刑
この罪が成立するかどうかで大事なのは、「相手がはっきり拒否したかどうか」ではありません。「相手が、同意しない意思をきちんと持ったり、伝えたり、貫いたりできる状態だったかどうか」です。
原文が気になる方はこちらからどうぞ
法律は、その状態を壊す原因として、たとえば次のようなものを挙げています。
暴力・脅し
心や体の障害
お酒や薬物
睡眠など、意識がはっきりしない状態
断る時間の余裕がないこと
予想外の事態への恐怖・驚き
虐待による心理的反応
立場の違いによる圧力
催眠は、この「抵抗できない状態」に当てはまります
昔の法律(旧・準強制わいせつ罪/準強制性交等罪)の時代から、実務上「催眠術」は、手足を縛ることや薬を使うことと並んで、「相手が抵抗できない状態を作り出す手段」の典型例として扱われてきました。今の法律にも、この考え方はそのまま引き継がれています。
つまり——
事前の同意なしに相手を催眠状態に誘導し、その状態を利用してわいせつな行為や性的な行為をした場合、相手が実際に抵抗したかどうかに関係なく、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪に問われる可能性がある、ということです。
「途中で嫌がらなかった」「気持ちよさそうにしていた」は、言い訳になりません。
判断力や、意思を伝える力そのものを奪ったこと自体が問題にされるからです。
未遂でも罪になります!
実際に行為が最後まで終わらなくても、「やろうとした」段階で処罰される可能性があります(未遂罪)。
「途中でやめたから平気」という考えも通用しません。
状況次第で、こんな罪も重なります
行為の内容によっては、次のような罪も一緒に問題になります。

傷害罪については、最高裁が「精神的な機能の障害(PTSDなど)も刑法上の“傷害”にあたる」と判断しています。
体に傷をつけなくても、心を壊せば傷害罪になり得るということです。
一つの行為で、複数の罪が同時に成立することも珍しくありません。
「洗脳罪」という罪はありません
「洗脳」という単独の犯罪名は、刑法には存在しません。
ですが、これは「洗脳なら合法」という意味では全くありません。
「洗脳」と呼ばれる行為の中身——閉じ込める、脅す、心理的に追い詰めて心を病ませる、だまして金品を得る——は、それぞれ上の表にあるような、既存の犯罪として一つひとつ処罰されます。
「洗脳罪」という名前の罪がないだけで、そこで使われる手段のほとんどは、間違いなく犯罪です。
おわりに
多くの掛け手は、相手を大切にしながらこの技術と向き合っていると思います。
催眠そのものが悪いわけではありません。
ですが、「催眠だから」「相手が寝ているように見えるから」「本人も覚えていないだろうから」という理由で、同意を軽く扱っていい理由には一切なりません。
むしろ、相手の判断力を一時的に奪える技術だからこそ、事前の明確な同意は、他のどんな行為よりも重く扱われるべきです。
音声作品やフィクションとしての「支配」「屈服」の表現と、現実の人間関係における無断の催眠利用は、まったくの別物です。
これから催眠を学ぼうとしている方には、まずこの違いを理解したうえで、この技術に向き合ってほしいと思います。
そしてもし今、「バレなければいいや」と思いながらこれを読んでいる方がいるなら——もう一度、冒頭の項目を読み返してください。
それは、あなたが思っているより重い代償を伴います。
被害を受けた・受けたかもしれないと感じたら
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(全国共通番号 #8891 )で、24時間365日相談できます。
ひとりで抱え込まず、まず話してみてください。
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