UNIX MAGAZINE 1993.1 ─ Linux 登場
UNIX MAGAZINE で Linux が取り上げられたのは、おそらくこの記事が最初です。 1993年1月号の「PC-UNIX」という特集記事です。BSD訴訟のまっただ中ですね。
PC-UNIX というと私たちはフリーのものを思い浮かべますが、この頃はまだ商用 UNIX が中心で、フリーの UNIX 系 OS はまだ黎明期でした。
商用の Mach 386、BSD/386、Solaris 2.0 for Intel x86、AT&T UNIX System V R4.2 などと共に Linux が取り上げられています。フリーのものでは、Linux と 386BSD のみが掲載されています。この時点では、NetBSD も FreeBSD もまだ存在していません。
フリーな UNIX の誕生:時系列
1987年1月1日 MINIX 1.0 リリース(教育用途に限りコピー可)
1991年6月28日 4.3BSD-Net/2 リリース(AT&T UNIX のコードを除去)
1991年8月25日 Linus Torvalds が comp.os.minix に開発を投稿
1991年9月17日 Linux 0.01 リリース
1992年3月17日 386BSD 0.0 リリース
1992年4月30日 BSD訴訟提訴
1992年7月14日 386BSD 0.1 リリース
1992年9月 カリフォルニア大学の反訴
1993年3月21日 NetBSD プロジェクト開始
1993年4月20日 NetBSD 0.8 リリース
1993年5月 S.L.S リリース(Debian/Slackwareの祖)
1993年6月19日 FreeBSD プロジェクト開始
1993年7月17日 Slackware リリース
1993年8月16日 Debian リリース
1993年11月1日 FreeBSD 1.0 リリース
1994年2月4日 BSD訴訟和解
1994年3月1日 4.4BSD-Lite リリース(和解後のライセンスクリーンな BSD)
1994年3月14日 Linux 1.0 リリース
1994年3月 S.u.S.E. Linux(ドイツ版Slackware として開始)
1994年10月26日 NetBSD 1.0 リリース(ライセンスクリーンになったバージョン)
1994年11月3日 Red Hat Linux リリース
1994年11月22日 FreeBSD 2.0 リリース(ライセンスクリーンになったバージョン)
1995年6月1日 4.4BSD-Lite2 リリース(CSRG 最後のリリース、最後の本家 BSD)
まさに激動の時代というのがふさわしい時期です。こうして見ると、Linux がフリーの UNIX 系では一番の古株ということになります。意外です。「訴訟で 386BSD が使えなかったから作った」というのはこの時系列から言うと矛盾していることになります。また、FreeBSD や NetBSD は BSD 訴訟のまっただ中で始まったのにも驚きました。
1993年という年がいかに激動の時代で、重要な年であったかがよくわかります。こんにちにつながるLinuxの多くのディストリビューションが始動し、静かに、そして急速に広がってゆきました。その間、FreeBSDやNetBSDも驚異的な発展を遂げますが、訴訟の影響で、多くのハッカーたちが手を出すのをためらう状況でもありました。
記事の内容
さて、記事の Linux に関する記述を引用します。
System V と POSIX のサブセットに準拠し、BSD 互換の機能をもつフリーの PC-UNIX である。カーネルを含むすべてのソースコードを作りなおしているため、AT&T のライセンスは必要ない。現在ベータ版が公開されており、バージョンは 0.98 となっている。再配布は自由で anonymous ftp、テープやフロッピーディスクの回覧などで入手できるが、有償でフロッピーディスクによる配布もおこなわれている。最近、CD-ROM による配布も開始された。現状ではテープドライブやネットワーク機能はサポートされていないが、正式版のリリース時にはこれらのインプリメントもおこなわれる予定である。
ちなみに、386BSD の紹介記事はこうです。
UCB(University of California, Berkeley division)が公開している、AT&T 由来のソースコードを含まない BSD システム "Networking Software, Release 2 (NET/2)" をもとに作られた PC-UNIX である。配布はフリーで、anonymous ftp、テープやフロッピーディスクの回覧によって配布されている。現在のリリース番号は 0.1 で、フロッピーディスク 1 枚に収まるインストール用のミニ UNIX システムをもつなど、リリース 0.0 では難しかったインストール作業が改善されている。
386BSD の特徴はフリーであるにもかかわらず、TCP/IP 機能、NFS 互換機能など、ほぼフルスペックのネットワーク機能をもつ点だ。また、完全に BSD 互換なので、各種フリーソフトウェアの移植も容易である。ただし研究用として開発されたものなので、使いこなすためには UNIX に関する十分な知識が必要になる。ウィンドウシステムは付属しないので、別途 XFree86 を入手してインストールする必要がある(後述)。
この記事の後、LinuxがUNIX MAGAZINで大々的に取り上げられたのは、5年半後の1998年8月に連載が始まった「Linuxでリラックス」(大崎博之著)という記事でした。Linuxに関しては、UNIX MAGAZINEでは、Netnews記事の紹介程度しか触れていませんでしたが、PC雑誌では盛んに取り上げられていたと思います。
この「Linuxでリラックス」については、当時の様子がよくわかりますので、別記事でレビューしてみたいと思います。
