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音を視る快楽──Michel GondryとMVの構造美【MMM#001】

Michel GondryとMVの構造美


Monday MV Marathon、初回のレビューは何を取り扱おうか迷ったんだけど、私のMVへの興味のきっかけにおける大きな一角を担うKylie Minogue - Come Into My Worldからスタートすることにした。

2004年のグラミー賞でBest Dance Recording部門を受賞した名作MVなので見たことある人も多いかもしれないけど、一旦事前情報なしで視聴してみてほしい。

Kylie Minogue - Come Into My World (2002)

パリの交差点を歌いながら周回するKylie Minogue(カイリー・ミノーグ)。彼女がスタート地点に戻る度に彼女自身や他の通行人が次々と増殖していく…。

モーションコントロールカメラを使用し、コンピューターにカメラの動きを記憶させ、周回ごとに変わる被写体の動きを同じ画面上に合成して作られているのだが、緻密に動きが計算されており、登場人物がループ時に違和感なく合成されているのが見どころ。

極め付けには、完璧なループを作るために曲を少し変えて欲しいというリクエストまでしたというこだわりっぷり。

今回はこれを監督したMichel Gondry(ミシェル・ゴンドリー)の話がしたい。

Michel Gondryとは

ミシェル・ゴンドリーは1963年にフランスのヴェルサイユに生まれ、Björk(ビョーク)のMVを監督したのをきっかけに映像制作活動を本格化する。

映画『エターナル・サンシャイン』(2004)でアカデミー脚本賞を受賞するなど映画監督としての活動も。

MV史を語る上で欠かすことのできない人物なのだが、彼の功績として大きかったのはタイトルでも言及しているように、音楽を“可視化”する手法を確立したことにある。

従来のMVのほとんどがストーリーやイメージカットで構成されていた時代に、音楽の構造そのものを演出の主役にするという大胆な演出をやってのけた。

百聞は一見に如かず。次のMVを見てほしい。

The Chemical Brothers - Star Guitar (2002)

演奏している人が一瞬たりとも映らない。ただ電車の車窓から見える風景が流れていくだけ。しかしすぐに電柱、信号、建物、煙突、電車など目に入るもの全てが音楽と完全に同期されて出現してくる事に気付くだろう。

ドラマーとして活動していた自身の経験を活かし、曲を要素分解してそれぞれの音ごとにタイムコードを手書きして、それに対応するオブジェを配置していったという狂気のMV。音楽理論を映像に翻訳した初の試みだったのではなかろうか。

どの音が何のオブジェに対応しているのかが分かれば演奏できてしまいそう。映像で見る楽譜と表現してしまってもいいかもしれない。

実はこの5年前にミシェル・ゴンドリーは人間の体の動きで音を可視化する表現に挑戦している。

Daft Punk - Around The World (1997)

円形ステージの上を5つのグループに分かれたダンサーたちが割り振られた音のパートに合わせて同じパターンで踊り続ける。

表現方法としては先述の『Star Guitar』と類似しているが、やはり身体性が伴うと違った印象を受ける。スケルトン、マミー、ロボットなどバラバラの種族が踊ることで“Around The World”というメッセージ性も自然と受け入れられる。

これまでの3本のMVを観ただけでもわかる通り、音そのものを構造的に切り出して見せる“音楽体験の新しい文法”を創ったのはミシェル・ゴンドリーの大きな功績だと言える。

これらのMVが、映像技術が発達して類似表現が多く見られるようになった今もなお色褪せないのは、音楽の構造を崩すことなく映像で再翻訳しているからだろう。音楽と映像がハマる“気持ちよさ”を表現することは今となってはMVにおける重要なファクターの一つと言えよう。

おまけ

Around The WorldのMVについて、Daft Punk公式がメイキング、絵コンテ、ミシェル・ゴンドリー本人による解説をYouTubeにアップしてくれていたので紹介。

今回紹介した他のMVも検索すればメイキング動画出てくるんだけど、DVDの違法アップロードっぽいので、引用は諦めた。気になる人は探してみて。


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