見出し画像

松本清張・黒い画集『あるサラリーマンの証言』

堀川弘道監督 (1960) 東宝

脚本 橋本忍

「週刊朝日」に連載された
『黒い画集』の中の一編 「証言」の映画化。

映画のはじめに
タイトル、キャスト、スタッフの名前が一文字づつ
カチャ、カチャ、カチャ・・・と
タイプライターで 打ち込まれていく。

ここ、ここが好き!

タイプライターの音って
なんていいんだろう。

そして物語は
主人公・小林桂樹さんの独白で進む。

ここ、ここも好き!
まるで文庫本を読んで貰っているような気分になるのよ。

          〇

石野貞一郎 (小林桂樹)

東和毛織の管財課長・石野は42歳。
上役にも見込まれていて
定年までには 部長の椅子もほぼ約束されている。

妻と子供二人の家庭も円満だったが
石野は密かな 愉しみを持っていた。

同じ課の事務員・梅谷千恵子 (原知佐子)を愛人として
新大久保のアパートに 住まわせているのだ。

それは 7月16日の夜。
千恵子のアパートからの帰途
石野は新大久保駅近くで 
自宅近くに住む 保険外交員の杉山 (織田政雄)とすれ違った。

杉山は帽子を取って 軽く会釈し
石野も思わず頭を下げたが 直後、しまったと後悔する。

なにもこんな所で・・
気づかぬふりをすれば良かったのだ。
その思いは多少の不安と 嫌な予感を胸に残した。

帰宅した石野は 妻に遅くなった理由を
渋谷で映画を観て来たと言った。

三日後、石野は会社に 刑事 (西村晃)の訪問を受ける。

7月16日の夜、新大久保で
杉山に会ったかどうかを 確認に来たのだ。
嫌な予感は 的中した。

石野は 会った覚えは無いと言った。
渋谷で映画を観ていたと 言い張った。
千恵子との関係は 絶対に知られてはならない。

その夜、杉山は
向島の若妻殺しの 容疑者として逮捕された。

石野は千恵子を 品川のアパートに移らせた。

その後の 警察からの再三の呼び出しで
石野は杉山が犯人ではないことを確信する。

犯行は新大久保で 自分が杉山と会った時間に
遠く離れた 向島で起きているのだ。
自分が会ったと言えば 杉山はすぐに釈放されるだろう。

しかし、自分はどうなるのだ。
あの場所に居た理由を 何と言えばいいのだ。
千恵子は 自分の課の部下である。
会社の前途ある地位も 平穏な家庭もたちまち失うだろう。

日曜日、石野の自宅に
杉山の妻 (菅井きん)と 弁護士 (三津田健)が訪れる。

「石野さん、どうかもう一度、思い出してください
 勘違いをされていたとか・・」

「主人を助けてください、
 嘘でもいいから 会ったと言って!」

妻 (中北千枝子)
「杉山さんも嫌な人ね。
 なんで関係もない あなたの名前を出したのかしら・・
 あなた、ほんとは杉山さんと会ったんじゃないの?」

だが、石野は裁判でも
「会った事実はない」と証言した。

陰鬱な毎日が続いた。

そんなとき 石野に訪問者があった。
千恵子の新しいアパートに住む不良学生で
石野と千恵子の関係を知って 強請りに来たのだ。

石野は要求を呑んだ。
これをきっかけに 千恵子とも別れ
平和な家庭に戻ろうと決心する。

が、金の受け渡しの夜 約束の時間まで
石野は映画館で時間を潰してから
学生の部屋に行ったが 彼は殺されていた。

学生の仲間たちの証言から
警察は容易に 石野にたどり着く。

「杉山の事件でも あんたは映画を観ていたと言った。
 同じアリバイ作りは通用しないよ」

結果、石野は
杉山に会ったことを白状し 偽証罪に問われ
後日、学生殺しの真犯人は逮捕された。

実際には 何の犯罪も犯していない石野。

それなのに すべてはあの夜、
杉山に会ったことから起きた負の連鎖。
彼は たったひとつの嘘で 
会社も、地位も、家庭も失ったのだ。

「どうして、どうして、こんなことに・・・」


          〇

何べん観ても ストーリーを知り尽くしていても
ぞくぞくするほど面白い清張ワールド。

1960年 キネマ旬報ベストテン第二位

おしまい

いいなと思ったら応援しよう!