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読書が止まっていた私に訪れた、静かな再会|本とわたしの話。

いつからだろう、本を読まなくなったのは。
読書は好きだったはずなのに、気づけば「読む時間」がどこか遠くに感じるようになっていた。
そんなある日、ふと手に取った一冊が、止まっていた時間をそっと動かしてくれました。

本を読むのは、昔から好きだった。
どこか遠くの町、知らない誰かの感情、自分とは違う時間の流れ――。
そんな世界に入り込めるのが、たまらなく心地よかった。
学生時代は、通学電車の中でも、放課後のカフェでも、夜寝る前の布団の中でも、いつもかばんに1冊は本が入っていた。

社会人になってからは、読書の時間がどんどん減っていった。
朝は慌ただしく身支度をして、電車ではメールのチェック。
日中はタスクに追われ、夜は疲れて画面をぼーっと眺めるだけ。
気づけば1週間、1ヶ月、1年――


ページをめくることすらなくなっていた。

そんなある日の午後。
ほんの少し、空いた時間。何気なく本棚の前に立った。
背表紙をなぞりながら、手に取ったのは、学生の頃に繰り返し読んでいた1冊だった。
中身を覚えているようでいて、読み返すと忘れている部分もあって、
でも、冒頭の数行で心がふっと緩んだ。

気づけば、ソファに座って、本を開いていた。
時計を見ず、スマホも触らず、ただ物語を追いかけていた。
ページをめくるたびに、静かになっていく。
頭の中の雑音が、すうっと引いていく。
音楽も、テレビも、何もいらなかった。
文字だけがそこにあって、
そして、そこにはちゃんと“自分の時間”があった。
思えば、最近は常に「何かをしていないといけない」と思っていた気がする。

SNSを見たり、仕事のことを考えたり、先の予定を立てたり。
止まることが、どこか不安だったのかもしれない。
でも、本を読んでいる時間だけは、不思議とそんな不安がなくなる。
物語の登場人物に寄り添って、感情を重ねて、
そこにただ「いる」ことができる。

そんなふうにして、1時間ほど経っていた。
気づけば部屋に夕方の光が差し込んでいて、
まるで物語の続きのように現実に戻ってきた。
けれど、気分はどこか清々しかった。
たった1時間だったけど、心が整ったような気がした。
改めて思った。

本を読むというのは、「立ち止まる練習」なのかもしれない。
せわしない日々の中で、静かに呼吸を整えるように。
物語に耳を傾けながら、自分の奥底にある何かにそっと触れる。

そんな時間を持つことが、自分を保つことにつながっていたのだと思う。
だからまた、本を読もうと思った。

全部を一気に読む必要なんてない。
たとえ1ページだけでも、そこには確かに、自分の居場所がある。
忙しさに飲まれないように…
これからも、静かにページをめくる時間を、大切にしていきたい。

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