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父親の背中を真似しようと思った話

先日、娘たちとデパートに出かけたときのこと。
昼食は、館内のレストランでとることにしました。

日曜日のお昼どき。店内は満席で、席に案内されるまでに30分ほど。
ようやく座れたものの、お隣との距離は近く、会話が丸聞こえ。
「まあ、混んでるし仕方ないか~」と笑い合いながら、娘たちとメニューを開きました。

隣の席では、20代くらいの女の子と両親が楽しそうに食事をしていました。
聞くつもりはなかったけれど、ふと耳に入った会話。

娘「お母さんのには茶碗蒸しついてたんだ!いいな~」
母「うん。」
娘・父・母「……」

そのやりとりを聞いた瞬間、私は幼いころの記憶へタイムスリップしました。

小さい頃、家族でよくこのデパートに来ては昼ご飯を食べました。
優柔不断な私は、いつもメニューを選ぶのに時間がかかって…。
やっと注文を終えると、父は決まって“茶碗蒸し付きの定食”を頼みました。
そして、必ず私にその茶碗蒸しを差し出すのです。

私「え?いいの?」
父「うん。」

ほんの数秒のやりとり。
外食のたびに同じことが続くので、私は「お父さん、茶碗蒸しが嫌いなんだ」と思い込んでいました。

それから数年後。大学で栄養の勉強を始め、父の日に手料理を作ろうと母に相談したときのこと。
母は笑いながら言いました。

「お父さん、茶碗蒸しが好きだよ。」

衝撃でした。
大好きなものをわざわざ注文して、私に譲ってくれていたなんて。

思い返せば、晩ご飯のときもいつもそう。
「あんたたちがお腹いっぱいになるなら、お父さん食べなくてもいいよ」と言って、
私たち兄弟におかずを譲ってくれた父。

子どもの頃の私は「お腹がすかない人なんだ」と本気で思っていました。

今、自分が母になり、娘たちの「お腹いっぱい!」という声を聞くたびに胸がいっぱいになります。
あのときの父も、きっと同じ気持ちだったのでしょう。

自分の好きなものより、子どもの笑顔を優先できる。
それは、愛があるからこそできること。


父の静かな優しさを思い出しながらの昼食。
少しだけ涙をにじませながら食べました。

私も娘たちにそんな愛情を伝えられる母でありたいと思います。


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