【SAFETY041】ヘルメットが真っ二つに割れた日。恐怖を見せる「講習」では命を守れない本当の理由。|JBRA
はじめに
今、有料の「自転車教室」がにわかに盛況を見せています。
かつては義務教育のカリキュラムの中に自転車教室が組み込まれており、乗り方はもちろん、公道を走るための基礎知識を学校で教えてもらえる時代がありました。しかし、いつからかそうした公的な自転車教育の機会は失われて久しいのが現状です。
だからこそ、少子化の現代において、民間が運営する有料の自転車教室がビジネスとして成立し、可能性を広げていること自体は素晴らしいことです。
しかし、自転車販売と安全の現場に立つプロとして、私は「これで本当にいいのだろうか」と一石を投じざるを得ません。
「初めて自転車に乗る子供たち」に乗り方を教えることは、もちろん有効です。
しかし、自転車教育の本当の本質とは、すでに「乗れるようになった人」に対して、その先に何を施すかにあるはずだからです。
▶【机上の空論】なぜ現代の「自転車安全講習」を受けても、悲惨な事故は1ミリも減らないのか?| JBRA
「ホラー映画」は安全な席にいるから怖がれる
「自転車なんて、誰でも乗れる」
これは日本という特有の環境が生み出した、世界的に見れば完全な「非常識」です。
以前にもお話しした通り、国民のほとんどが自転車に乗れる国というのは、地球上を見渡しても多くありません。
諸外国では、自転車に乗れない人の方が多数派である国も珍しくないのです。
そんな日本だからこそ、「乗れるようになった次」の安全教育が極めて重要になります。
しかし、現在あちこちで行われているお仕着せの安全教室に、果たしてどれほどの効果があるのでしょうか。これは特定の主催者を批判したいのではなく、当協会(JBRA)としての一般論、そして人間心理の原則からの提起です。
例えば、皆さんが「怪談」を聞きに行くときの心理を想像してみてください。
怪談をわざわざ聞きに行きたいと思うのは、現実の世界でそんな恐ろしい体験を一度もしたことがない人たちではないでしょうか。
もし、本当に命の危機に瀕するような凄惨な恐怖体験をリアルにしたことがある人間なら、そもそもそんな場所には絶対に近づきたくもないはずです。
今、行政や学校が行っている安全教室の参加者も、これと全く同じです。老
若男女を問わず、そのほとんどが「本物の自転車事故に遭ったことがない人」か「その悲惨な現場を間近で見たことがない人」です。
安全な観客席から、スタントマンの派手な激突ショー(スケアード・ストレイト法)や、画面の中のシミュレーターを見て「うわ、怖いな」と感じる。
それは裏を返せば、怪談話やホラー映画を観に行って楽しんでいるのと同じ心理構造です。
どれだけそこで疑似体験をさせても、最終的に行き着くのは「怖かった。でも、自分にはこれからも起こらないだろう」という、他人事の結論でしかありません。
ヘルメットが真っ二つに割れた、私のリアル
物事はすべて、自分事にならなければ1ミリも意味がありません。
かと言って、前回の記事(保険義務化の闇)でもお伝えした通り、実際に交通事故を起こして人生が崩壊してしまってから、事後に何かを悔やんでも100%手遅れなのです。
実は私自身、過去に自転車で転倒した際、衝撃で被っていたヘルメットが真っ二つに割れるという経験をしています。
幸い、顔はおろか頭部にも一切の損傷はありませんでした。
ヘルメットが私の身代わりになって、文字通り命を守ってくれたのです。
だからこそ、私は国が定めるルールが「努力義務」であろうが「完全義務化」であろうが、そんな言葉の定義に関係なく、自分の意志で必ずヘルメットを被ります。
真っ二つに割れた実物の衝撃を、身をもって知っているからです。
経験したことのない事故の映像を遠くから見せられても、人は変わりません。
ならば、明日から命を守るために、安全教室が本当にやるべきことは最初から決まっています。
それは、スタントマンのように「事故が起きても無傷で済む」というフィクションを教えることではなく、シミュレーターのように「死んでもリセットボタンで生き返る」というゲームをさせることでもありません。
終わりに
乗り手一人ひとりが、「自分が明日もいつも走るルートの、あの角に、一体どんな固有の危険が潜んでいるのか」を、徹底的に解剖して自覚すること。それこそが、JBRAのやるべき「ハッシュ公証」的なハザードマップの思想です。
教室プログラムが用意した安全な「お化け屋敷」で思考停止するのをやめ、自分の走る現実の道路の危険を、今すぐ自分事として捉え直す。そんな本物の教育を、今ここから始めていきましょう。
ならば安全教室のやるべき事は決まっています。
それは自転車乗れる交通事故に備える事です、
スタントマンのように事故が起こっても無事ではすみません。
シュミレーターなようにリセットできません。
やるべきなのは乗り手がいつも走っているルートにどんな危険があるのか。
これから始めてもいいのではないでしょうか?
