夏祭りに行きたいのではない。素敵な君と、ひと夏の思い出が欲しいのである。
夏祭りに行きたい。
そう言うと、
「屋台が好きなの?」
「花火が見たいの?」
「夏祭りって楽しいよね!」
なんて言われる。
違う。
私は別に、
夏祭りそのものに行きたいわけではない。
本当に欲しいのは、
素敵な君と、ひと夏の思い出である。
これである。
いや、
何を急にポエマーみたいなことを言っているんだ。
普段の私なら、
「人混み?嫌です。」
「暑い?嫌です。」
「並ぶ?もっと嫌です。」
「屋台?高いです。」
という、
夏祭りとの相性最悪おじさん
である。
しかし、
隣に素敵な君がいるだけで、
すべてが変わる。
人混みが嫌いでも、君となら歩ける
まず、
私は人混みが大嫌いである。
前の人。
後ろの人。
横の人。
斜め前の人。
全方向、人、人、人。
普段なら、
「なんで人間こんなにおるねん。」
と思う。
しかし、
君と夏祭りに来た場合。
人混みの中で、
君とはぐれないように、
そっと手を繋ぐ。
「はぐれちゃうから。」
なんて言いながら、
自然に手を繋げる。
……。
夏祭り、神イベントでは?
普段だったら、
知らない人と肩がぶつかっただけで、
「すみません。」
とペコペコしている私が、
好きな人と堂々と手を繋いで歩いている。
しかも、
「人が多いから仕方ないよね。」
という、
最強の言い訳まで存在する。
素晴らしい。
人混みというデメリットが、
手を繋ぐための口実
に変わっている。
これを考えた人、
天才である。
屋台は高い。だが、君と食えばいい思い出
そして、
夏祭りといえば屋台。
焼きそば。
たこ焼き。
焼き鳥。
かき氷。
りんご飴。
チョコバナナ。
うまそう。
ただし、
高い。
「え、焼きそば800円?」
昔なら、
「スーパーで買ったら200円くらいじゃない?」
と思ってしまう。
でも、
夏祭りでは違う。
屋台で買った焼きそばを、
君と一緒に食べる。
「熱っ!」
「うまい!」
「ちょっとちょうだい。」
そんな会話をしながら食べる。
すると、
不思議なことに、
800円の焼きそばが特別な料理になる。
いや、
冷静に考えれば高い。
めちゃくちゃ高い。
でも、
その800円の中には、
夏の夜。
屋台の明かり。
人混み。
君の笑顔。
全部が含まれている。
そう考えたら、
実質無料。
いや、
無料ではない。
普通に800円払っている。
でも、
思い出としてはプライスレス。
急にCMみたいになってしまった。
ゲームだって、一緒なら楽しい
夏祭りには、
射的。
輪投げ。
金魚すくい。
くじ引き。
いろいろなゲームがある。
普段なら、
「これ絶対取れないやろ。」
と思ってスルーする。
しかし、
君が、
「やってみたい!」
と言う。
やるしかない。
ここで男を見せる。
射的を構える。
狙う。
撃つ。
外れる。
もう一回。
外れる。
全然当たらない。
店員さん、
絶対当たらない位置に置いてるだろ。
しかし、
君が笑っている。
それだけでいい。
景品なんていらない。
……いや、
やっぱり欲しい。
君に、
「取ってあげたよ。」
と言いたい。
そして、
盛大に失敗する。
これもまた、
ひと夏の思い出である。
花火は、夏の魔法である
そして、
夏祭り最大のイベント。
花火。
夜空に大きな花が咲く。
ドンッ。
パァン。
夜空いっぱいに広がる光。
普段なら、
「花火きれいだな。」
で終わる。
でも、
君と一緒なら違う。
隣にいる君と、
同じ花火を見ている。
花火の音を聞きながら、
「きれいだね。」
なんて言う。
その瞬間、
思うのである。
「この時間、ずっと続けばいいのにな。」
仕事のことも。
将来のことも。
お金のことも。
人間関係も。
明日の予定も。
全部、
一旦どうでもいい。
ただ、
今、君と花火を見ている。
それだけでいい。
夏祭りには、
そういう魔法がある。
そして何より、君の笑顔
私は、
夏祭りそのものを見たいわけではない。
花火だけを見たいわけでもない。
屋台の料理を食べたいわけでもない。
本当に見たいのは、
楽しんでいる君の笑顔である。
屋台を見て、
「これ食べたい!」
と笑う君。
ゲームで失敗して、
「惜しかった!」
と笑う君。
花火を見上げて、
「すごい!」
と目を輝かせる君。
その顔を、
真横で見たい。
正面から見るより、
横から見る方がいい。
なぜなら、
不意に笑った君の横顔が、一番好きだから。
なんて言ってみたい。
言えるわけない。
心の中では、
「かわいいな……。」
と思っている。
口から出るのは、
「花火すごいね。」
だけ。
情けない。
浴衣を着た君は、反則である
そして、
夏祭りには、
もう一つ、
とんでもないイベントがある。
浴衣。
普段の君も、
もちろん素敵である。
世界一素敵だと思っている。
しかし、
浴衣を着てくる。
すると、
宇宙一素敵になる。
反則である。
これはもう、
ルール違反。
普段着の君ですら、
こちらのHPを削ってくるのに、
浴衣なんて装備されたら、
一撃で瀕死。
髪を少し整えて、
浴衣を着て、
普段とは違う雰囲気で歩いている。
「今日、なんか雰囲気違うね。」
なんて言いながら、
本当は心の中で、
「いや、ちょっと待て。可愛すぎる。」
となっている。
でも、
そんなこと言えない。
言ったら、
恥ずかしくて死ぬ。
だから、
「浴衣似合ってるね。」
くらいしか言えない。
本当は、
「世界一綺麗だと思ってます。」
くらい言いたい。
でも、
口に出したら、
自分が恥ずかしくて爆発する。
だから、
心の中で100回くらい言っておく。
夏祭りが終わっても、思い出は残る
祭りが終わる。
人混みを抜ける。
屋台の明かりが遠ざかる。
花火も終わる。
「楽しかったね。」
そんな会話をしながら、
家に帰る。
そして、
数日後。
仕事に行く。
満員電車に乗る。
眠い。
暑い。
上司がいる。
仕事がある。
現実に帰ってきた。
でも、
ふとした瞬間に思い出す。
「そういえば、この前の夏祭り楽しかったな。」
君が笑っていた。
一緒に屋台を食べた。
ゲームで遊んだ。
花火を見た。
手を繋いだ。
浴衣姿を見た。
その記憶だけで、
ちょっとだけ頑張れる。
それが、
ひと夏の思い出
なのだと思う。
結局、夏祭りに行きたいのではない
夏祭りなんて、
別に一人でも行ける。
花火も一人で見られる。
焼きそばも一人で食べられる。
射的も一人でできる。
ただ、
誰と行くか
で、
全部の意味が変わる。
人混みが嫌いでも、
君となら歩きたい。
屋台が高くても、
君となら食べたい。
ゲームで失敗しても、
君となら笑える。
花火も、
君と見たい。
そして何より、
浴衣姿の君を、隣で見たい。
夏祭りに行きたいのではない。
私は、
素敵な君と、ひと夏の思い出が欲しいのである。
夏が終わっても、
「あの夏、楽しかったな。」
と思えるような、
そんな時間が欲しい。
そして、
10年後くらいに、
「あのときの夏祭り、覚えてる?」
なんて言えたら、
最高だと思う。
……まあ、
その「素敵な君」が、
まだ私の人生に現れていないんですけどね。
解散。
今年も一人で花火を見る可能性、
大。
それでも私は、
夏祭りに行きたい。
なぜなら、
未来の君と行くための予行演習だから。
……と、
強がっておこう。
無敵社会人より。
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考え直せ!
まだ遅くない。
本当にこの記事を読みたいのか?
変わりモンのアンタ嫌いじゃないよ💛