AIとの静かな対話・家庭内裁判編
――正しいのに、負けた日
妻のプリウスのバッテリーが上がった。
これで二回目である。
先月も同じことがあった。そのときは私が家にいて、一緒にJAFを呼び、事なきを得た。
原因はだいたい分かっている。
チョイ乗りばかりで、ほとんど充電されていないのだ。
そして昨日、また上がった。
私はそのとき、すでに外出していて、しかもこのあとテニスの予定があった。
電話口の妻は言う。
「バッテリーが上がった……」
私は一瞬考えて、こう答えた。
「じゃあ、またJAF呼んだらいいんじゃない?」
ブースターケーブルもない。どうせJAFを呼ぶしかない。先月もそうした。手順はもう分かっている。
なら、いったん帰宅して顔を出すより、そのままテニスに行っても同じではないか。
論理的には、何も問題はない。
私はいても役に立たない。作業はJAFの人がやる。私の役割は「横で見ていること」くらいだ。
だから私は、そのままテニスに行った。
夕方、家に帰ると、空気が重かった。
「信じられない。困ってるときに、よくそのまま行けるね」
怒っている。かなり。
私は内心、こう思っていた。
(いや、結果は同じじゃないか。JAF呼ぶしかないんだし……)
だが、口に出すと火に油である。
そこで私は、AIに相談することにした。
状況をそのまま説明して、"判定"を仰ぐことにしたのだ。
――妻の車のバッテリーが上がった。私は外出先にいて、テニスの予定があった。ブースターケーブルもないし、どうせJAFを呼ぶしかない。だから私はそのままテニスに行った。これは"合理的な判断"では?
AIは少し考えてから、こう答えた。
「論理的・作業的には、あなたの判断は正しいです。
あなたが現場にいても、結果は変わりません。JAFを呼ぶ、という一点において、最適解です。」
――ほら見ろ。
少し胸を張りかけた、その次の瞬間、AIは続けた。
「しかし、これは『技術的問題』ではなく、『感情的問題』です。
奥様が求めていたのは、問題解決の効率ではなく、『一緒に困ってくれる態度』です。」
……ぐうの音も出ない。
「あなたは正しい判断をしました。
しかし同時に、『配慮としては不正解』でした。」
つまりこういうことらしい。
・私は「問題」を解決しようとした
・妻は「気持ち」を共有してほしかった
・そしてその二つは、別の次元の話だった
AI裁判の判決は、こうだ。
「理屈では無罪。心証で有罪。」
私は負けた……。
正しいのに、負けた。
人生には、ときどきこういう判決が下る。
そしてたぶん、結婚生活というのは、
この種の「正しいのに負ける裁判」の積み重ねでできているのだ……。
■おまけ
HVで走行用バッテリーに大量の電気を抱えているのに、12Vのバッテリーが上がっただけで走行できなくなる。
「これ、おかしくね?……」と、罪のない車にやつあたりしてしまう、心の狭いエンジニアであった。
【後日談】
妻にこの記事のリンクをラインしたところ、
まだ怒っていることが判明、、、

私「ねえ、このスクショ、ブログに載せてもいい?」
妻「もう、勝手にして!(……笑)」
