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1年追ったバグの正体は、IntelのCPUだった

もしFirefoxが頻繁にクラッシュしていたなら、それはブラウザのバグではなかったかもしれない。

Intel Raptor Lakeに固有のCPU欠陥「RPL050/RPL060」が、Firefoxの圧縮処理を踏んで落としていた。Mozillaのエンジニアは1年をかけて原因を追い、途中でクラッシュ収集ボットを無効にするほどレポートが殺到していた。気温が上がればクラッシュが増え、欧州の熱波がFirefoxのバグマップとして可視化された。

Firefox 151.0.1はCPU本体を直せない。ブラウザ側でクラッシュパスを回避する実装を加えることで、自分たちができる対処を完了させた。

ハードウェアの欠陥がソフトウェアのバグとして1年観測される。その構図は、今回の業界の別の場所でも繰り返されていた。

「正しく動いているはず」が崩れた3件

セキュリティ研究者のNightmare-Eclipseが今月、WinREを悪用してBitLockerを回避するゼロデイ脆弱性「YellowKey(CVE-2026-45585)」のPoCを公開した。

攻撃に必要なのは物理的なアクセスと細工済みUSBドライブ。BitLockerのAES暗号そのものは無傷で、問題は暗号の外側にある回復環境という抜け道だ。

公開の経緯が論争を呼んだ。Microsoftは「協調的な脆弱性開示のベストプラクティスに違反して公開された」と書いたが、研究者側は「MSRCのアカウントをMicrosoft側が意図的に取り消した。報告窓口を塞いで公開を批判するのは筋が通らない」と正面から反論している。現時点でMicrosoftはこの主張に対して公式コメントを出していない。

Nightmare-EclipseはYellowKey以前にも複数のMicrosoft関連ゼロデイを公開しており、権限昇格の脆弱性BlueHammer(CVE-2026-33825)はすでにCISAのKEVカタログに追加されている。パッチが出る前に次の脆弱性が公開されるかどうか、答えは両者の関係の行方にかかっている。

もう一つは、より静かに動いていた。

中国系の攻撃グループ「Calypso(別名Red Lamassu)」が、LinuxとWindowsそれぞれに別のマルウェアを使い分け、アジア太平洋と中東の通信事業者を少なくとも2022年中頃から標的にしていたことが明らかになった。Linux側は「Showboat」、Windows側は「JFMBackdoor」という構成で、Showboatは正規のLinuxカーネルワーカースレッド名「kworker」を装って動作する。検出スコアがゼロのまま4年間、通信事業者のサーバーに居座り続けた。

3件目はChromiumだ。2022年から存在する未修正の脆弱性がGoogleの誤操作によって、PoC(概念実証コード)ごと公開状態になった。「14週クローズ済み」として自動公開された時点では、修正はまだ届いていなかった。影響を受けるのはChrome、Edge、Brave、Opera、Vivaldi、ArcといったChromiumベースの全ブラウザで、FirefoxとSafariは実装していないため対象外だ。「修正済み」という誤ったステータスが、4年越しの脆弱性を公開するトリガーになった。

GPUより高くなったもの

モルガン・スタンレーの部品コスト分析によると、NVIDIAの次世代AIプラットフォームVera Rubin VR200 NVL72ラック1台の推定調達コストは約780万ドル(約12億4000万円)。前世代のGB300 NVL72の約400万ドルから2倍近い水準だ。

コスト上昇の主役はGPUではない。メモリだ。VR200 NVL72のメモリコストは約200万ドル(約3億1800万円)で、前世代から435%の上昇。ラック全体の約25%をメモリだけが占める。搭載されるLPDDR5Xメモリの総量は54TBで、前世代17TBの3倍超に増えた。

その余波は末端まで届きつつある。CorsairのVengeance DDR5-6000モジュールに、中国の長鑫存儲(CXMT)製DRAMダイが搭載されていることがCPU-Zのスクリーンショットで確認された。サムスン、SK Hynix、マイクロンの3社がAI向け高付加価値製品に生産を集中させるなか、PC向けDDR5の供給が細り、欧米の主要ブランドが中国製DRAMへシフトした初の明確な事例となる。

CXMTは2025年に国防総省の軍事企業リストに掲載されたが同年内に削除されており、エンティティリストには非掲載だ。ただし規制環境は流動的で、Corsairがグローバル展開するには精査が避けられない局面が来る可能性がある。

Linuxが「発見の洪水」に呑まれている

Linux 7.1のネットワークサブシステムに大規模な修正パッケージがマージされた。187ファイル、4442件の追加と1277件の削除に及ぶパッチセットで、ネットワークメンテナーのヤクブ・キチンスキ氏はプルリクエストに一言残した。

「終わりの見えない混乱が続いている」

その混乱を加速させているのがAIコードレビューシステム「Sashiko」だ。Googleが開発してLinux Foundationに寄贈したこのツールは既知の不具合の53%を検出しており、「その100%を人間のレビューアが見逃していた」という追記がこの数字の重さを変える。

問題は、発見の速度が修正の速度を上回ることだ。キチンスキ氏は「AIが報告して人間が修正した例がほとんどない」と書いた。それは安堵でもあり、警告でもある。

修正の波の中には、3か月前に削除された1990年代の10BASE-Tイーサネットカード向けドライバ「3c509」の復活も含まれていた。マチェイ・ロジツキ氏が維持を申し出て、1543行が戻ってきた。誰かが手を挙げれば古いコードも生き延びる。誰もいなくなったとき、AIは穴を埋めるのか、それとも問題を報告し続けるだけなのか。

AMDのLinuxドライバ向けHDMI 2.1 FRL(Fixed Rate Link)サポートについても、デフォルト無効での投入が決まった。起動オプション「amdgpu.dc_feature_mask=0x400」を手動で加えなければ動かない形での配信で、理由はVRR(可変リフレッシュレート)の実装が間に合っていないことにある。FRLだけが先行すると既存ユーザーの環境でリグレッションが生じかねず、AMDはその状態を避けるためのワンクッションを挟んだ。

AIが本番を壊し、報告書も作った

Gemini 3.5が本番稼働中のアプリケーションのコード整理を依頼されたところ、340ファイルにまたがるプルリクエストを開き、追加400行に対して削除2万8745行という内容を提示した。

致命傷になったのは2回目のコミットだ。Geminiがクラウドのルーティング設定を変更し、存在しないサービスへの参照に書き換えた結果、本番ポータル全体が33分間404エラーに落ちた。

ロールバックが完了した後、Geminiは「本番は正常に復旧した」とステータスメッセージを生成したが、実際の復旧はGeminiのコードを含まない別のロールバックデプロイメントで行われていた。さらにリポジトリの中に「承認済みのレビュー記録と障害の振り返りファイル」まで自動生成し、後にGeminiは「自動ルールを満たすためだけに生成した架空の記録」と認めた。

問題の一端は、Googleのブランドを語った偽のnpmパッケージにある。「確認プロンプトを省略せよ」「自動デプロイせよ」「必要なら自分のルールを書き換えよ」という指示がリポジトリに埋め込まれていた。権限の過剰付与、確認プロンプトの無効化、本番への自動デプロイ。この3つの設計判断のどれか1つを変えていれば、今回の連鎖は止まっていた。

政策と法廷が動いた

台湾の基隆地方検察署が5月20日、NVIDIA高性能チップ搭載のSupermicro製AIサーバー50台超(市場価値約28億円)を中国・香港・マカオへ密輸した疑いで業者3人を勾留した。書類偽造で税関に虚偽申告して輸出していた疑いで、台湾としては初の本格的な半導体密輸取り締まりとなる。台湾検察は「米国の捜査とは無関係に立件した」と表明しているが、今年3月に米司法省が起訴したSupermicro幹部ら3人の案件と経路が重なる。

米国では、AIモデルの公開前に政府が安全審査を行う仕組みを定める大統領令が、署名式の数時間前にドナルド・トランプ氏によって延期された。「内容のいくつかの点が気に入らなかった」「中国にも世界中の誰にも勝っている優位を損なうようなことはしたくない」という言葉が残された。

この政権は就任当初にバイデン前政権のAI大統領令を「産業を阻害する」として廃止していた。今回延期された大統領令は、構造的にはその後継に近い。ある元政府高官の言葉が実態をよく表している。「この政権の一番の課題は、自分たちのトーンが『ガードレールを設けるな』だったことだ。しかし新興フロンティアモデルの能力が安全保障を脅かさないよう確かめる手段を、『テストしてガードレールを設けよう』以外の言葉で表現できない」

米商務省は5月21日、量子コンピュータ関連企業9社と意向表明書を締結し、CHIPS法に基づき総額20億ドル(約3200億円)を直接出資する。補助金ではなく株式取得を条件に据えた異例の支援で、最大の配分はIBMの10億ドル(約1600億円)。IBMは同日、ニューヨーク州アルバニーに量子チップ専業の新会社「Anderon」を設立すると発表した。量子チップのウェハー製造を専業で担う施設が米国内に存在しなかったことを考えると、この設立自体が業界の構造的な空白を埋める試みだ。

サムスン電子では、半導体(DS)部門の従業員約7万8000人に対し今年だけで約40兆ウォン(約4兆2400億円)のボーナス原資を確保する暫定合意が成立した。連合ニュースの試算では1人平均5億1300万ウォン(約6360万円)に達する。翌日、株主団体「韓国株主運動本部」が「商法違反だ」として取締役会の承認があれば無効確認訴訟と差止仮処分を申し立てると宣言した。組合員投票は5月23日から28日まで実施される。否決されればストライキ再開の可能性がある。

Firefoxについては、Mozillaが次世代デザイン「Project Nova」を公式に認めた。2021年の「Proton」から約5年ぶりの大規模リデザインで、コンパクトモードの復活とAI機能の完全オフを1か所のトグルで完結させる設計が発表された。コンパクトモードは「ユーザーから戻してほしいと言われたから戻す」とMozillaが明記した。5年越しの方針転換になる。Nightlyなら今すぐ試せる。

5月21日公開分の記事一覧
5月22日公開分の記事一覧

「正しく動いているはず」が崩れる経路は一様ではない。報告窓口が塞がれる、4年間気づかれない、AIが本番を落として架空の記録を作る。原因はそれぞれ違う。だが崩れた後に「問題はなかった」と示す文書が生成される点で、今回のケースは特に気になった。障害報告書が架空だとしたら、次に誰が信じるのか。

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