[映画]『サン・セバスチャンへ、ようこそ (ウディ・アレン監督/2020)』

データ
原題: Rifkin's Festival
監督: Woody Allen
製作年度: 2020
製作国: スペイン=アメリカ=イタリア合作
アスペクト比: 1:2.00f
時間: 1h28
公開日: 2024/1/19
鑑賞日: 2024/1/20
配給: ロングライド
はじめに
2024/1/21にmixi掲載分を転載・追記・修正しています。
感想
ウディ・アレン監督作品としては2011年の『ミッドナイト・イン・パリ (Midnight in Paris/2011)』以来の劇場鑑賞となった。以降の作品は未見だけどそれなりにコンスタントに撮っていることにまず驚き。
プレスエージェントの妻スー(ジーナ・ガーション)の浮気を疑って行きたくもないサン・セバスチャン映画祭にやって来る小説家(志望)のモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)が主人公。スーは浮気相手と思われるイケメンの映画監督フィリップ(ルイ・ガレル)の新作プロモーションで忙しく、観光地をひとりで過ごすモートは昼夜関係なく幻覚を見るようになり、病院へ。そこで美しい女医ジョー(エレナ・アナヤ)と出逢い、一目惚れする。
というプロットはこれまでのW.アレン作品のバリエーションでまったく新味はない。W.ショーンはW.アレンの映画に何度も出演してきたが今回が初主演。アレン自身が自己投影したキャラクターを見事に演じている。
そのキャラクターとは、業界人の集まるパーティを毛嫌いし、業界人を軽蔑し、字幕のついた映画しか観ず(つまりハリウッドの娯楽映画ではなく、ヨーロッパの芸術映画こそが真の映画と思い込んでいる)、小説家を目指すがデビュー作がなかなか完成できず(義妹からは"才能の無さを証明したくなくて処女作が完成できない"と言い放たれる)、何かというと病気ではないかと思い込む、というもの。60を過ぎてアイデンティティークライシスに陥った主人公をW.ショーンが名人芸で演じている。
そんなモートも妻の浮気を疑いながら自身が女医に惹かれていくことに対して戸惑う。『ハンナとその姉妹 (Hannah and Her Sisters/1986)』のマイケル・ケインとウディ・アレンのキャラクターを混ぜこぜにした感じと言えば良いか。
モートが見る幻想が過去の名作の再現というのがこの作品のもうひとつの見せ場となっている。それが『市民ケーン (Citizen Kane/1941)』『8 1/2 (Otto e Mezzo/1963)』『突然炎のごとく (Jules et Jim/1962)』『男と女 (Un homme et une femme/1966)』『勝手にしやがれ (À bout de souffle/1959)』『仮面/ペルソナ (Persona/1967)』『野いちご (Smultronstället/1957)』『皆殺しの天使 (El ángel exterminador/1962)』そして『第七の封印 (Det Sjunde Inseglet/1957)』。モートのその時々の深層心理が名場面で再現されるが、うまくいっているケースといっていないケースがある。
モートが自らの死生観を死神(クリストフ・ヴァルツ笑)とチェスをしながら語り合う『第七の封印』の再現が一番分かりやすく、そして映画の本筋とうまくリンクしたエピソードだったかも。
W.ショーンの独り舞台のごとき作品だが、妻役のジーナ・ガーションも良かった。『バウンド (Bound/1996)』のエロエロお姉さんが良い女優さんとなりました。あと、(モートの幻想の中で)言いたい放題を言うモートの弟役がスティーブ・グッテンバーグ。
総体的にアレンの作品の中では凡作の部類だろうが、「ウディ・アレンの映画を観たい」というときに期待に応えてくれる、そんな作品となっている。
オープニングやエンディングのクレジットは相変わらずの黒背景に白文字のシンプルなスタイル(フォントはEF WINDSOR Elongatedというものらしい)で、それだけでホッとさせられる。
カメラはベテランのヴィットリオ・ストラーロ。サン・セバスチャンの港町の風景が美しかった。
追記(25/12/12)
1992年の養女性的虐待疑惑を乗り越えたと思ったら、自伝発表をきっかけに実の息子ローナン・ファローに攻撃され再び立場が悪化する。
ローナンは#MeToo運動で大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインを刑務所送りにし、ピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストでもある。
かつては内容も聴かずに普段より低いギャラで嬉々として出演していたハリウッドスター達も出演に二の足を踏み始め、しまいには製作契約を結んでいたアマゾンスタジオは契約を解除する。
この作品はそんなさなかに製作され、さらに完成後もコロナ禍の影響で公開が一年延びる。
出来は平凡ながらいつもの、そしてウディ・アレンにしか撮れない新作映画をまた一本観ることができたことを幸せに感じた。
