VOL.18|士業・専門家|「専門的には問題ありません」経営としても同じ?
「専門的には問題ありません」
専門家へ相談したとき、
「問題ありません」という言葉を聞くことがあります。
安心する言葉です。
法律上、問題ない。
税務上、問題ない。
会計上、問題ない。
労務上、問題ない。
専門家が確認したうえでそう言っているなら、その専門分野では大切な判断材料になります。
では、その言葉を聞いたあと、
「それなら、会社として進めても大丈夫だ」
と考えても同じでしょうか。
◆ 「問題ありません」には、範囲がある
たとえば、ある投資を検討している会社があったとします。
専門家へ確認すると、「税務上は問題ありません」と言われた。
これは、
税務という専門領域から見れば問題がない
という意味です。
でも、その投資を実行したあと、
資金繰りはどうなるのか。
毎月の固定費は増えないか。
回収まで何か月かかるのか。
その間に別の支払いが重ならないか。
人員は足りるのか。
需要は続くのか。
これらまで、
「税務上問題ありません」
という一言が保証しているわけではありません。
専門家の答えが間違っているのではなく、
見ている範囲が違います。
◆ 専門家は、自分の専門から答えている
これは、むしろ自然なことです。
司法書士なら、登記や法的手続き。
税理士・会計士なら、税務や会計。
社会保険労務士なら、労務や社会保険。
金融機関なら、融資や返済可能性。
それぞれ、
自分の専門領域から会社を見る。
だからこそ、専門家として価値があります。
問題は、その答えを受け取る経営側が、
「専門分野で問題がない」
と
「経営全体として問題がない」
を、同じ意味として受け取ってしまうことです。
◆ 正しい答えが、良い経営判断とは限らない
たとえば、「借入できます」
という答えがあったとしても、
それは必ずしも
「今、この会社が借りるべきです」
という意味ではありません。
「法律上可能です」
という答えも、必ずしも
「今、その契約を結ぶべきです」
という意味ではありません。
「税務上問題ありません」も、
必ずしも
「その投資は経営として妥当です」
という意味ではありません。
それぞれの答えは正しい。
でも、
専門分野での正しさと、
経営全体としての判断は別のものです。
◆ では、経営者は何を見る?
ここで、「専門家を信用しない」
という話にはなりません。
むしろ逆です。
専門家から得た情報を、
経営判断の材料の一つとして、正しい位置に置く。ことが大切です。
たとえば、専門家から
「問題ありません」と言われたら、
その次に見るのは、
何について問題がないのか。
です。
法務なのか。
税務なのか。
労務なのか。
資金なのか。
そして、その専門的な答えを、
売上、利益、資金、人、現場、顧客、時間などと重ねたとき、
経営全体では、どんな景色になるのか。
ここは別に考える必要があります。
◆ 「問題ありません」を、結論にしない
専門家の言葉は、
経営判断を助ける重要な材料です。
ただし、その言葉自体を、
そのまま経営判断の最終結論にする必要はありません。
専門家が、
専門分野の境界まで見る。
経営者が、
会社全体を見て決める。
この位置関係が分かれていると、
専門家の意見を、より有効に使えるようになります。
◆ 最後に
「専門的には問題ありません。」
その言葉を聞いたとき、安心すること自体は、おかしくありません。
でも、そのあとに一つだけ。
何について、問題がないのでしょうか。
そして、
その答えを経営全体へ広げても、同じでしょうか。
