見出し画像

境界線上の視線 - 戦国スマホ編第一話:漆黒の画面(アプリ)と、桶狭間に舞い降りた神脚

プロローグ:謎のアプリ『KATANA』

「ふぅ……。この契約書の条項、これで修正完了です、美琴先生」

私、鈴木カオリは淹れたてのハーブティーの湯気に息を吹きかけながら、所長の林美琴先生にタブレットを差し出した。

いつもの「林美琴法律相談事務所」。

外は初夏の穏やかな日差しが降り注ぎ、平和そのものの午後だった。

私たちの事務所は、美琴先生の美学によって服装の規定が少しだけ独特だ。

美琴先生は、キャリアウーマンの風格漂う漆黒のペンシルスカートスーツに、息を呑むほど薄い『5デニール』のシマーブラックストッキング。

9cmのピンヒールが歩くたびに鋭く硬質な音を響かせている。

私、カオリは上品なライトベージュの膝丈ワンピースに、素肌よりも遥かに透明感と滑らかさを際立たせる極薄5デニールのヌードストッキング、そして清楚なパウダーピンクのエナメルパンプス。

隣で雑誌をめくっている千葉芽衣(メイ)ちゃんは、スリットの入ったデニムタイトミニに、光を反射して艶めく5デニールのシャイニーブロンズストッキング。

デスクで並んでデータ入力をしている双子の若鷺姉妹――姉の美鈴さんは知的なネイビーのタイトスカートに5デニールのチャコールグレー、妹のサクラちゃんは可憐なラベンダーのプリーツミニに5デニールのシルキーパールベージュストッキングを合わせ、それぞれ美しい脚線美をオフィスに咲かせていた。

そんな中、部屋の隅のデスクでデザイン作業をしていた男性事務員の白鳥翔太君が、突然すっ頓狂な声を上げた。

「……あれ? なんだこれ……?」

「どうしたの、翔太君? また締め切り前の現実逃避?」

メイちゃんがからかうように視線を向ける。

「い、いえ! 違いますよ! 僕のスマホ……見慣れないアプリが勝手にインストールされてるんです」

翔太君が見せてきた画面には、漆黒の背景に血のように紅い毛筆体で一文字、『KATANA』とだけ書かれた禍々しいアイコンが表示されていた。

「アンインストールできないの?」と美鈴さんが眼鏡を押し上げる。

「それが、長押ししても削除のバツ印が出ないんです。……まあ、世の中には星の数ほどアプリがあるし、何かのプロモーションかバグですかね?」

「ちょっと待ちなさい、翔太君! 不審な野良アプリを開いちゃ駄目よ!」

美琴先生が制止の声を上げた。

しかし、時すでに遅し。

翔太君の指先は、無意識のうちにそのアイコンをタップしてしまっていた。

――トクン。

心臓が跳ねるような重低音が鳴り響いた。

次の瞬間、スマートフォンの画面から青白い幾何学模様の光が溢れ出し、事務所の空間全体がぐにゃりと歪み始めた。

「きゃあああっ!?」

「な、なにこれ!? 空間が……歪んでる!?」

「先生! カオリさん!」

足元から床が消失していくような強烈な浮遊感。

視界が万華鏡のように激しく回転し、私たちは叫び声を上げる間もなく、深い闇の底へと意識を手放していったのだった。

第一幕:西暦1560年、桶狭間近郊

時空の歪みに飲み込まれ、散り散りになって吹き飛ばされた私たち。

その中で、双子の姉妹――若鷺美鈴と若鷺サクラの二人は、見知らぬ鬱蒼とした森の奥深くへと放り出されていた。

「う、ぅん……痛っ……」

「サクラ、大丈夫……!? 怪我はない?」

美鈴がよろめきながら立ち上がり、妹のサクラを抱き起こす。

見渡す限りの大自然。漂う草木の匂いと、湿気を含んだ土の感触。

しかし、そこは現代の日本の公園などでは断じてなかった。 谷を一つ隔てた向こう側には、無数の吹き流しと「赤鳥紋」の陣幕が張り巡らされ、鈍く光る鎧兜を身に纏った武者たちがひしめき合っていたのだ。

時は西暦1560年、初夏。

駿河・遠江・三河を統べる東海道一の弓取り、今川義元の本陣。

世に言う『桶狭間の戦い』の、まさに直前であった。

織田領へ侵攻中の今川義元は、圧倒的な兵力差を恃み、完全にリラックスモードに入っていた。

「ホッホッホ、信長ごとき小細工しか能のない尾張の小童(こわっぱ)、恐るるに足らんわ」

兵をあちこちの砦攻略のために分散させ、この本陣の周囲には、わずか千人ほどの直属兵しか残していなかった。

義元はお気に入りの茶道具を広げ、優雅に昼餉の膳を突っついていたのである。

第二幕:神脚の降臨

その時――本陣の防衛線を警戒していた今川軍の足軽たちの間に、前代未聞の激震が走っていた。

「な、なんじゃ……ありゃあ……!?」

「天女……? いや、南蛮の化け物か……!?」

林の切れ目から木漏れ日を浴びて現れたのは、現代のオフィスカジュアルに身を包んだ若鷺美鈴と若鷺サクラだった。

戦国の荒くれ者たちの視線は、瞬時に二人の下半身へと釘付けになった。

美鈴の知的なネイビータイトスカートから伸びる、5デニールのチャコールグレーに包まれた細く引き締まった太もも。

サクラの短いラベンダープリーツミニから零れ落ちる、5デニールのパールベージュを纏った瑞々しく柔らかなふくらはぎ。

現代の最高峰技術が生み出した極薄5デニールストッキング。

それは、履いているのか素肌なのか判別すらつかないほどの究極の透明度を誇りながら、木漏れ日の光を吸い込んで絹以上の艶めかしい光沢を放っている。爪先から踵を支える華奢なハイヒールは、戦国の男たちが見たこともない異国の装飾品だった。

「み、見てみろ……あの脚……! 肌が、光っておるぞ……!」

「透けておるのに、肌ではない……何という張り、何という艶……!」

「ごくり……あんな美脚に踏まれたら、俺ァ死んでもいい……!」

百戦錬磨の武士たちが、槍を取り落とし、膝をつき、口から泡を吹いて拝み始めた。 美脚の絶対的な魔力。それは、いかなる南蛮渡来の宝物よりも強烈に、男たちの野生の本能を直撃したのである。

第三幕:義元の狂気と、謎の大出世

「報告! 申し上げますッ!」

陣幕の中に、息を切らした伝令の武士が飛び込んできた。

義元はお歯黒を覗かせながら、扇子を優雅にパタパタと仰いだ。

「騒々しいぞ。なんじゃ、織田の奇襲部隊でも現れたか? 返り討ちにして首を並べておけ」

「い、いえ! 織田ではございませぬ! この先の林に……この世のものとは思えぬ、妖艶極まる美女が二名、天より舞い降りたとの報告にございます!」

「……なんじゃと?」

義元の眉がピクリと動いた。

その時、義元の傍らに控えていた古参の参謀が、血相を変えて立ち上がった。

「いけません殿! お聞き入れになりますな! これは必ずや、劣勢の織田信長が仕掛けた卑劣で巧妙な罠に相違ございませぬ! 妖術使いの忍びか、あるいは殿を誘い出す囮! 直ちに弓隊を放ち、射殺すべきでございます!」

参謀の正論。

至極真っ当な軍師としての諫言であった。

しかし――。

スッ……と、今川義元の目の色が変わった。

公家の優雅さを気取っていた瞳から理性が完全に蒸発し、底知れぬ狂気と獣の欲望がギラギラと燃え上がったのだ。

「……殿?」

「だまれええええええッッ!!!!」

閃光。

義元が腰の太刀を抜いたかと思うと、一閃のもとに参謀の首を両断していた。

ドサリと崩れ落ちる重臣の骸。飛び散る鮮血。

「わしの邪魔をするものは……何奴であろうとも、このようになるのじゃあああッ!!」

返り血を浴びた義元が絶叫すると、陣幕の中の将兵たちは恐怖で震え上がり、蜘蛛の子を散らすように左右へ道をあけた。

そこへ、腰を抜かしかけていた最下層の雑兵の一人が、恐る恐る進み出た。

「ひ、ひぃぃ……! と、殿! こ、こちらでございます! あっしが天女様の居場所へ案内いたしますゆえ……!」

「うむ! 案内せよ!」

義元は血刀を鞘に納めると、裾を乱暴にまくり上げ、雑兵の案内に従って林へと突き進んだ。

そして――。

木々の切れ間、木漏れ日の中に佇むサクラと美鈴の姿。

風に揺れるミニスカート、そして陽光を浴びて妖しく濡れたように輝く、極薄5デニールの美脚のグラデーションを目撃した瞬間。

義元の息が「ヒュッ」と止まった。

「……あ……あぁ……」

天下を狙う大大名が、その場に両膝をついた。 その瞳には、かつて見たどんな富士の絶景よりも、どんな名刀よりも美しい『境界線の美』が映し出されていた。

義元は震える手で、案内した雑兵の肩を掴んだ。

「……よ、よくやったぞ……お前、名前は何と申す?」

「へ、へぇっ!? あっしは……足軽の『権助(ごんすけ)』と申します!」

義元は爛々と輝く目で権助を見つめ、高らかに宣言した。

「褒めてつかわす!! おぬしは今日から、『美脚案内大将軍』じゃあああッ!!」

「「「「ええええええええええっ!?」」」」

周囲を取り囲んでいた今川軍の武将も足軽も、全員があっけにとられて口をあんぐりと開けた。

名もなき最下層の足軽が、美脚を案内したというただそれだけの理由で、一瞬にして全軍のトップに君臨してしまったのである。

サクラと美鈴は、完全に狂乱の坩堝と化した武士たちを前に、ドン引きしながら後ずさりしていた。

「……ね、姉さん……この人たち、完全に頭おかしいよ……」

「ええ……。でもサクラ、油断しないで。私たちのこの脚……どうやらこの時代において、核兵器並みの破壊力があるみたいよ」

第四幕:大将軍権助の暴走と、囚われの美脚

「おいおいおい! 聞いたかテメエらッ!!」

突然、耳障りな甲高い声が森に響き渡った。

さっきまで泥にまみれて平伏していた足軽・権助の顔つきが、劇的なまでの下品な傲慢さへと歪んでいた。

腰には義元から直々に下賜された豪奢な脇差を差し、鼻の穴をこれでもかと広げている。

権助は、今まで自分を「おい下っ端」「雑魚」と呼び、毎日のように草履で頭を踏みつけてこき使ってきた直属の足軽組頭と侍大将の前にズカズカと歩み寄った。

「ひ、ひぃっ……ご、権助どの……いや、美脚案内大将軍様……!」

震え上がる上司たち。

権助は思い切り胸を反らし、組頭の兜をパコンと扇子で叩いた。

「おい組頭! 誰が『権助どの』だコラァ! わしゃ今川家筆頭・美脚案内大将軍の権助様だぞ!? 昨日まで『メシの炊き方がぬるい』だの『槍の錆を落とせ』だの抜かしてわしのケツを蹴り飛ばしてくれたなぁ!? ええおい!?」

「す、すまなんだ! 許してくれ権助……いや大将軍様ッ!」

「おい侍大将! テメエもだ! 昨日の夜、わしの干し肉を勝手に奪って食ったよなァ!? ほら、土下座しろ! 地面に額を擦り付けて『権助大将軍様、お肉美味しゅうございました』って三遍叫べ!! 叫ばねえと殿に言いつけて首チョンパにしてもらうぞコラァッ!!」

「も、申し訳ございませんでしたぁぁぁッ!!」

百戦錬磨の侍大将たちが泥水に額を押し付けて絶叫し、権助は腹を抱えて下卑た大笑いを響かせた。

「あっはっは! ざまあみろ! 天女様の美脚バンザイ! わしの人生一発大逆転じゃあああ!!」

権助の醜い鬱憤晴らしを冷めた目で眺めていた美鈴が、眉根を寄せてサクラに耳打ちした。

「……権力を持った途端にこれね。典型的な小人の愚行よ。サクラ、あの男が調子に乗っている隙に逃げるわよ」

「うん、姉さん!」

二人はヒールを鳴らして反転し、森の奥へと駆け出そうとした。

しかし――。

「逃がすなあああっ!! 天女様方を丁重にお迎えするのじゃあああッ!!」

背後から義元の野太い絶叫が轟いた。

我に返った数十名の武士たちが、血走った目で一斉に二人を取り囲む。

「きゃっ!?」

「くっ……離しなさい!」

サクラと美鈴は、無骨な武士たちによってあっという間に前後を塞がれた。

しかし、兵士たちは彼女たちの体を乱暴に掴むことすら恐れ多いのか、息を荒げながら、極上の絹布や柔らかな捕縛縄を手に恐る恐る手を伸ばしてきた。

「ひぃ……触れるだけで手が震える……!」

「な、なんと滑らかな……これが天女の肌……いや、黒い皮膜……!?」

「きゃあっ! どこ触ってんのよ、この変態武者!!」

サクラがプリーツスカートを揺らしながら、5デニールパールベージュの脚を振り上げて抵抗する。

その滑らかで瑞々しいふくらはぎが兵士の頬をかすめると、蹴られた男は「ご褒美だァァッ!」と歓喜の涙を流して気絶した。

だが、多勢に無勢。

美鈴のタイトスカートから伸びるチャコールグレーの美しい太ももと、サクラのしなやかな脚線美は、傷つけないよう幾重にも巻かれた絹の縄によって、無残にも戒められてしまった。

足首を揃えられ、9cmのピンヒールを履いたままの無防備な爪先が、男たちの粘つくような熱い視線に晒される。

「くっ……! 弁護士事務所の事務員を不法拘束する気!? 監禁罪で告訴してやるわ!」

美鈴が知的な瞳を吊り上げて睨みつけるが、義元は恍惚とした表情で二人に近づき、扇子を広げて跪いた。

「おお……なんと気高き怒りの美貌……! よい、実によいぞ! その神々しき脚を、わが本陣の玉座にて心ゆくまで愛でてくれよう! さあ、天女様を輿(こし)へお乗せせよ!」

サクラと美鈴は、捕らわれの身となって義元の本陣へと連行されていくのだった。

第五幕:急転の雷鳴、桶狭間の奇襲

義元の本陣に戻ると、陣内はもはや戦の空気など微塵も残っていなかった。

捕らえられたサクラと美鈴は、陣幕の中央、一段高い床几(しょうぎ)の上に並んで座らされていた。

薄い5デニールのストッキングに包まれた二対の美脚は、篝火の光を浴びて妖しいまでの陰影を浮かび上がらせている。

「うむ……素晴らしい……。光の加減で色合いが変わるこの薄絹……南蛮の至宝でもこれほどのものはあるまい」

義元は酒盃を傾けながら、涎を垂らさんばかりにして二人の脚を凝視していた。 その周囲では、「美脚案内大将軍」となった権助が上座にふんぞり返り、名立たる武将たちに酒を注がせてふんぞり返っている。

本陣の防備は完全に崩壊し、誰もが二人の足元に魅了され、周囲への警戒を完全に怠っていた。

――その時だった。

ゴロゴロゴロ……ッ!!

突如として空が真っ暗に染まり、初夏の生ぬるい空気を切り裂いて、天地を揺るがすような雷鳴が轟いた。

「……え? 雨……?」

サクラが顔を上げると、ポツポツと落ちてきた雨粒は一瞬にして豪雨へと変わり、視界を白く染め上げるほどの猛烈な雹(ひょう)と嵐が今川本陣を襲った。

「な、なんじゃこの雨は!?」

「前が見えぬ! 陣幕が吹き飛ぶぞ!」

武将たちが慌てふためく。

だが、豪雨の轟音の向こうから響いてきたのは、自然の脅威だけではなかった。

――ドォォォォンッ!!!!

地鳴りのような爆音。

火薬の焦げた匂いとともに、閃光が雨煙を貫いた。

「ぎゃあああっ!?」

本陣の入り口を守っていた兵が、胸から鮮血を噴き出して倒れ伏す。

「て、鉄砲……!? 敵襲だァッ!!」

「織田じゃ! 織田信長の手勢が山を駆け下りてくるぞォッ!!」

豪雨を突き破り、黒塗りの甲冑に身を包んだ一団が、鬼神の如き勢いで本陣へと突入してきた。

先頭に立つのは、燃えるような眼光で長槍を振るう若きカリスマ――織田信長。

「今川義元の首級(くび)、信長がもらい受けるッ!! 鉄砲隊、撃ち掛けよッ!! 撃ち方、構えッ!!」

ズドォォォン! ズガガガガァンッ!!

激しい銃声と白煙が陣幕を吹き飛ばし、阿鼻叫喚の地獄絵図が幕を開けた。

義元は持っていた酒盃を取り落とし、「ひ、ひぃぃっ!? 信長ぁぁっ!?」と腰を抜かして悲鳴を上げる。

「きゃあああっ!?」

「サクラ、伏せて!!」

吹き荒れる弾雨と硝煙の中、縄で戒められたままのサクラと美鈴。

絶体絶命の戦火に巻き込まれた二人の運命は――!?

(第一話 完)

本作はフィクションです。

本作には、歴史上の人物・出来事・時代背景・地名などをモチーフとして使用している箇所がありますが、物語上の設定、人物像、性格、会話、行動、事件、関係性、能力、演出等は創作によるものであり、史実とは異なります。

また、本作に登場する人物・団体・組織・事件・設定等は、実在のものをそのまま再現することを目的としたものではありません。実在の人物・団体・組織・事件等とは一切関係ありません。

作中には、誇張表現、パロディ的表現、フェティッシュな表現、暴力・事件・危険行為などを含む場合がありますが、これらはすべて物語上の演出として描かれています。現実の行為を推奨・助長・再現することを目的としたものではありません。

本作は、作者による創作とAIとの共同作業によって制作されています。

以上をご理解のうえ、フィクション作品としてお楽しみください。

いいなと思ったら応援しよう!