放課後、ふたり同好会で|毎週ショートショートno+e|七夕の歩幅
「多盛さん」、
呼びかけられた時、多盛美玲の目に涙が溢れていた。
彼女が仕事で棚田の前に立っている時、急に昔が甦ったのだ。
高3の頃、八木君に将来の夢を聞かれ
「笑わないでよ……、アナウンサー」
爆笑された。
「正気?その滑舌で?」
芸人志望の八木君によるマンツーマン特訓が始まった。
「棚田の玉田は七夕の田端で歩幅たばかった!」
「たな、たま……七夕の歩幅っ」
「ハイダメやり直し!」
八木君とはその後いろいろあったが、今は連絡をとっていない。
今でも芸人を目指しているのは知っている。
「多盛さん?」、
「はい、こちら、絶景です!見事な棚田の……」
彼女が泣くこの放送回は、マニア達愛するお宝映像になった。
アナウンス室で彼女は思った。
「明日は、ふるさと特産フェアの東京特売に同行で、田端駅前……」
でももう泣かない。
あの「滑舌同好会」があったから今がある。
感謝だけ胸に、プロのアナとしてやり切るんだ。
ねえ、見てて。
(了、410文字)
変化球がすぎますかね?
地方局に勤務する多盛美玲アナのモデルは、ぼくが最推す元アナウンサー、森田麗実さんから拝借しました。
芸人志望の八木君は、東京ローカル 岩男さんの傑作小説『芸人ごっこ』の登場人物から拝借しました。
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いつか有料記事に挑戦しますので、その時までチップ取っといてください笑