第一章「睡魔」①|連載小説「梟たちの夏」
カーテンの隙間から差し込む眩しさで、ぼくはぼんやりと目を覚ました。
頭の中はまだ、半分寝息を立てている。シングルベッドの上で、ゆっくりと身を起こす。
ダークネイビーの無地Tシャツに、トランクス。首筋をぽりぽり掻く。欠伸する。ベッドの下には脱ぎ捨てたデニムとソックス。
もう一つ大きな欠伸をして、ぐーっと伸びをしてから掛け時計を見る。時計の針は午後一時を指している。
…のど渇いたな。
ベッドを下りると、安物のパイプフレームが軋む。ぎし。
台所に行って水道の蛇口を捻り、シンクに転がっていたグラスを流水で軽く洗ってから、一杯、二杯。喉を鳴らして飲む。夏の水道水は生ぬるくて、体にやさしい。
大学に入ってから初めての夏休みが、今日から始まった。
昨日は休み前最後の試験日。英語とドイツ語の筆記試験を終え、心理学のレポートを教授に提出したら、おしまい。あとは約二ヶ月の夏休みが、ぼくを待っている。
二ヶ月…!
永遠に続くかのような二ヶ月!
人生で初めて経験する、ロング・ローングバケイション。
ピニャ・コラーダ!
…何の掛け声だ。
昨夜はあまりの感動と幸福、解放感に抗えずに、顔と名前も一致しない、受けた講義が同じだけという程度の学友たちと、夜が明けるまで飲み散らかしたのだった。
不意に、昨夜の彼らとのやりとりが脳裏によみがえる。
「昨日より前のことなんてどうでもいいよ。明日からどうなるかなんて考えたことねえよ。俺は今に生きるんだ」
「かっけえな、オメー。刹那的だなあ」
「かんぱーい」
「知ってた? イタリア語で乾杯はチンチンって言うんだぜ」
「ちんちーん」
…はっず。
いや、昨日より前のことなんて、どうでもいいんだった。忘れよう。人生の恥はかき捨て。
カーテンを開けると、ぼくを親の仇のように照りつけてくる、凶悪な夏の日差し。
とたんに強い空腹を覚える。そういえば昨日は酒とタバコばかり飲んで、ちゃんとした食事を取ってない。
台所のかわいらしい単身用冷蔵庫を開けると、見事にすっからかんだった。この数日間、試験勉強に追われていて、ろくに買い出しをしていない。
軽くため息をついてから、頭上の戸棚を開ける。二週間前に実家から仕送りで届いたパスタとシーチキンが並んでいた。
パスタを適当に茹でて、水でシメて皿に盛り付け、その上にシーチキンを丸ごと一缶分載せ、梅しそドレッシングを回しかける。
はい完成。いただきます。
細かい味付けなんてどうでもいい。ぼくはこれから四年間、シーチキンといろんな乾麺だけで日々を生きながらえるのだ。
見えない誰かと争うようにパスタに食らいつき、あっという間に食べ終えて。
グラスに注いだ水をごくりと飲み干して、まあるくなったお腹を愛情込めてさすっていると、なんだか猛烈に、眠くなってきたのだった。
