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エッセイ「ワイングラスの中」 吉田 鵜越

「ワイングラスの中」 吉田 鵜越

眠れない夜というものがあってもいいと思う。
もう、それはネトフリ見ながら、空から顔を覗かせる月を眺めつつ。
ソファにもたれかかって、ワイングラスに注いだ天然水をそれっぽく口に含んで、窓を開けて川の音とか聞きながら、うたた寝したりして。

最近は雨が続いてたせいで、川の音が楽しめていなかったから、こうやって眠れない夜にも、意味があるような気がする。今日はちょっとした散歩をして、寺社仏閣も点々と巡ったり、ついでに御朱印集めとかもしてみたりした。たまたま、モスバーガーの前を通ったから、半年ぶりくらいに食べて、野菜の味が驚くほど身体に沁みた。せっかく、ネタ探しに勤しんだはずなのに、どうも良いネタは浮かばなかった。ゴトゴト、ゴトゴト大きな音の路面電車に揺られて、街外れの住宅街を縫うように走るのがどうも愛らしかった。

そういうところに住んだことがないからか、そういう雰囲気に多少は憧れがある。晩飯は近所のお好み焼き屋に友人と行った。ソースどっぷりかけて、マヨネーズに波うたせ、鰹節を踊らせ、青のりに舞ってもらって。ちなみに、お好み焼きは大体がイカ玉を選ぶ。別に豚玉とかも美味いんだが、胃袋の許容範囲が前の冬ですっかり落ちてしまったみたいで、イカ玉がベストアンサーになったわけだ。昔話に花を咲かせながら、お好み焼きを平らげ、解散し、コンビニに寄った。

その足で家に帰って、寝巻きに着替える。ちょっと値の張るアイスを食べ、幸せの海に浸った。なんか、もうどうでもいいような日じゃなくて、こういう夜が好きなんだなと実感したのがついさっきで。ネトフリも飽きてきた頃だ。文庫本でも読もうと思って、曾祖父の遺品整理で出てきた古い文庫本を開き、15ページくらい読み、ちょっと小難しい言葉に頭を悩ませながら、しおりを挟み、気晴らしに母への誕生日プレゼントはどうしようかと、計画を練ったり。

夜はもっぱら頭の回転が悪い。そう思い立ったら、冷蔵庫にあったであろうレモンを輪切りにして、ワイングラスにぶち込んだ。あとは、蜂蜜を入れてみた。クッキーを開けようとも思ったが、時間が時間だ。そういうのも、いい節度というのがあるからな。蜂蜜を入れたからだろうか。頭の回転はさっきよりか、マシになった気がしたので、また文庫本を開き読み進めた。半分くらい読んで、眠気が襲ってきたので、思わず微糖コーヒーを開けてしまった。もちろん、ペットボトルのやつだ。家に3本は常備してある。またも、クッキーを開けようと思ったが、欲と理性が拮抗した結果、理性が勝った。こういう夜に、理性が勝つのは珍しい気がする。

理性が効いているうちにお香を焚いて、メロウな曲を流してみた。またもソファに身体を預ける。何もせず、目を瞑り天井を見ながら、ふと最近を思い返し、人間って時間が経てば関係が希薄化するもんなんだなーとか、人間ってなんかよく分からんなとか。あ、自分を含めね。そういうのを考える。いつもは深く考えて、疲れるからしないが、身体がもう浮遊感に溶け込んでいるから、柔らかく考えられる。

私の人間関係は、希薄化うんぬんの前に、特定のグループとかに属しているわけでもないから、行き場も、拠り所も、これといって決められた処がないわけで、執着するほどのことでもない。遊ぶ相手も特にこの人とかいないし。だからこそ、自分のメンテナンスは定期的にしたりしている。それのが結構生きやすくて、自分の性に合っているから良いんだけどね。あぁ、自語りをしちゃう。もう、一人で回想できるくらいの心の余裕はあるんだから、心配には及ばないな。

部屋にお香の薫りがいい感じに広がってきたから、気分も落ち着いてきた。耳を澄まさずとも入ってくる、巻き付く言葉があって、「うっ、なんかわかる。」とか、自分でも言語化できないような感じで言語化してくれるから、妙な納得をしたり。

黄昏れとでも言えば聞こえだけは良い。人間なんて、誰だって上手く生きれるもんじゃないから、こんなしょうもない寝れない夜もあるんだと思う。秋でもないし、鈴虫とかは全然まだ鳴かないんだけど、心の底で鳴いているようにも思う。初夏なんだし、そろそろ風鈴でも出そうかと思う。初夏の風は、一片の幸せを手の中で転がし、遊ぶような感じが私の中ではある。ワイングラスの中を泳ぐ、丸い氷のようにね。

ひとまず、今日は寝るとするか。まぁ、久しぶりに書いたが、多分そういうことが書きたかったんだな。どうせ明日も休みなんだから、時計のアラームはかけずに寝るとしよう。おかげさまで良い夜にできたよ。

おやすみなさい。


Coming soon…


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