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「Paradox」 ─ 壮大な物語に身を委ねる時間

このシリーズは、アルバムのレビューではありません。私がその頃どのように音楽を聴いていたのか、その記憶を書き残すためのものです。

デンマーク産

クラシックをベースにしたシンフォニック・メタルは、一時期どっぷりハマったジャンルで、今でも好きな音楽のひとつです。不思議と波長が合うことが多かったのが、このデンマーク出身の Royal Hunt。特別デンマークに思い入れがあるわけではありませんが、振り返ると好きなバンドが妙に集まっています。

大学時代、同じように洋楽ハードロックが好きだった後輩が、次々とCDを貸してくれました。その中でも特に印象に残ったのが、この「Paradox」です。

Royal Hunt は実質的な中心人物であるアンドレ・アンダーセンがキーボーディストということもあり、このバンドはギターよりキーボードが主役と言っても過言ではありません。ギターソロよりキーボードソロのほうが待ち遠しいメタルバンドというのも、なかなか珍しい存在です。

アルバムの印象

この「Paradox」は4作目。それまでの作品より一曲一曲が長くなり、大作志向へ大きく舵を切った作品です。全8曲という構成ながら、曲間は切れ目なくつながり、アルバム全体がひとつの作品として流れていきます。

テーマは宗教や信仰。「神は本当に人を見ているのか」という問いを軸に、人間の葛藤を描いたコンセプトアルバムです。

オープニングは短いアコースティック曲。しかし、そのメロディがアルバム中盤の『Message To God』で再び現れます。こうしたモチーフの回帰によって、一枚のアルバム全体がひとつの物語として結び付いていく構成は実に見事です。

全8曲しかないのに、「もう終わり?」ではなく、「まだ半分しか進んでいないのか」と思わせる濃密さがあります。決して流し聴きするタイプのアルバムではありません。クラシックを土台にしたメロディとドラマチックな展開が最後まで緊張感を保ち続け、シンフォニック・メタルというジャンルの魅力を存分に味わえます。

オープニングはアコースティックの小曲、ただ、この曲のメロディがふたたび折り返しの5曲目で繰り返される。全部で 8曲しかなく、途中長尺の曲はあるものの全体として一つの作品として一つの作品として聴かせる構成は記憶に残りやすく、最後まで緊張感が続きます。クラシックを土台にしたメロディとドラマチックな展開が見事にかみ合っていて、シンフォニック・メタルの魅力が存分に味わえる作品でした。

やはり『Tearing Down The World』は外せません。バンドを代表する一曲であり、キーボードを軸に少しずつ熱量を上げていくリフは何度聴いても鳥肌ものです。冒頭と終盤で同じフレーズが帰ってくる構成も、このアルバム全体の世界観を象徴しています。

そして9分半に及ぶ『Time Will Tell』も大きな聴きどころです。Royal Hunt はアンドレ・アンダーセンのワンマンバンドという印象が強く、ヴォーカリストも何度か交代していますが、この頃のD.C. Cooperはやはり特別な存在でした。途中の伸びやかなハイトーンは今聴いても印象的です。結局一度脱退してまた戻ってくるあたりも、「やっぱりこの人じゃないと」と思ったファンは多かったのではないでしょうか。

また、『Message To God』では神へ直接問い掛け、『Time Will Tell』『Silent Scream』では信仰の中でもがく人間の姿を描くなど、このアルバムは最後まで答えを示しません。だからこそ聴き終えたあとも余韻が残ります。

まとめ

この作品は、一曲だけ切り取るよりもアルバムを通して聴いてこそ真価が伝わる一枚です。当時はこういう大作も何の苦もなく何度も繰り返し聴いていました。

続編の「Paradox II」もリリースされていますが、実はまだ聴けていません。昔なら喜んで飛び付いていたのでしょうが、最近は9分の曲を見るだけで「今日はやめておこうかな」と思ってしまいます。

年齢とともに集中力は少し落ちました。でも、「Paradox」だけは別です。再生ボタンを押すと、結局最後まで聴いてしまう。そんな不思議な力を持ったアルバムなのです。


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