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秋バラの蕾が上がってきた 9月の水切れ一回で花は小さくなる

 バラは夏剪定から2週間ほどたつと、切り口の下の芽がふくらみ、赤みを帯びた新しい枝が伸びてきます。さらに10日もすれば、その先端に小さな蕾が見えてくるでしょう。ここまでくると、10月の庭がなんとなく想像できるようになります。

 ところが、この時期にほとんどの方が油断をします。剪定という大きな仕事を終えた安心感と、朝晩が少し涼しくなってきた体感が重なって、水やりの手がゆるむのです。

 秋バラでいちばん多い失敗は、じつは剪定の失敗ではありません。剪定はうまくいったのに、9月のあいだにたった一度か二度、鉢を乾かしてしまう。それだけで10月の花は、ひとまわりもふたまわりも小さくなります。

 しかも困ったことに、この失敗は起きた時点では気づきません。気づくのは1か月後、咲いた花を見たときです。今日は、その理由と手当てのしかたを書いておきます。

蕾は今、大きさを決めている

 バラの蕾は、ふくらみながら大きくなっていくように見えます。しかし中で起きていることは少し違います。

 蕾のなかでは、花弁のもとになる細胞が猛烈な勢いで分裂しています。何枚の花弁を持つか、一輪がどれだけの大きさになるかは、この細胞分裂の時期にほぼ決まってしまいます。時期でいえば、蕾が米粒ほどの大きさから小豆大になるまでのあいだです。

 ここで水が足りないとどうなるか。細胞の数がそろわないまま、蕾は次の段階に進みます。あとは、その少ない細胞がふくらんで開花するだけですので、いくら水をやっても、いくら肥料を足しても、決まってしまった大きさは戻りません。

 これが、9月の水切れが取り返しのつかない失敗になる理由です。真夏の水切れなら、株が弱っても涼しくなれば回復します。しかし蕾ができてからの水切れは、その花の完成形を決めてしまいます。

 ちなみに、花弁の数が減るだけでなく、色も薄くなります。秋バラの魅力である色の深さは、株が余裕を持って咲かせたときにだけ出るものです。

9月のバラは、真夏より水を使う

 意外に思われるかもしれませんが、鉢バラがいちばん水を必要とするのは、8月の猛暑のさなかではなく、9月の生育期です。理由は3つあります。

 ひとつめは、葉の量です。夏剪定のあと新しい枝が伸び、そこに次々と葉が展開します。バラは葉の裏から水を蒸散させますので、葉が増えれば増えるほど、吸い上げる水の量も増えます。真夏に葉を落として耐えていた株が、9月には葉を茂らせて全力で活動しているわけです。

 ふたつめは、残暑です。近年は9月に入っても最高気温が35度に届く日がめずらしくありません。統計を見ても、9月上旬の平均気温はここ30年で確実に上がっています。カレンダーが9月になったからといって、庭の環境が涼しくなっているとは限らないのです。

 みっつめは、日射です。9月は太陽の高さが下がるぶん、日ざしが横から差し込むようになります。真夏なら建物の陰になっていた場所に、午後の強い光が入るようになります。夏のあいだ安全だった置き場所が、9月には危険な場所に変わっていることがあります。

 つまり、株の需要は増えているのに、育てる側の体感は涼しくなっている。この差が、9月の水切れを生みます。

一度の水切れで、何が起きているか

 昼にしおれて、夕方には元に戻った。これなら大丈夫だろうと考えたくなりますが、株の中では確実に損失が出ています。

 まず、蕾の首が曲がります。水圧で立っていた柔らかい部分が支えを失うためで、いったん曲がった首は、水をやってもまっすぐには戻りません。花はうつむいたまま咲きます。

 次に、小さい蕾が黄色くなって落ちます。株は水が足りないと判断すると、抱えている蕾のうち優先度の低いものを自分で捨てます。房咲きの品種で、脇の蕾だけがぽろぽろ落ちるのはこのためです。

 そして、伸びかけの新芽が止まります。先端が黒ずんで成長が止まった枝は、蕾をつけないまま終わります。夏剪定をしたのに咲かない枝が出るのは、切り方が悪かったのではなく、伸ばす途中で水が切れたことが原因である場合がかなりあります。

 さらに、葉の縁が茶色く縮れます。この傷は治りませんので、そのまま秋の庭に残ります。傷んだ葉は光合成の力も落ちますから、株はますます花にまわす体力を失います。

鉢バラの水やり、9月の具体的なやり方

 やることは単純です。乾かさない。ただし、常に湿らせておくという意味ではありません。

 朝、鉢底から流れ出るまでたっぷり与えます。 8号鉢なら2リットルから3リットルが目安です。表面が湿った程度で止めると、水は上の3センチほどにしか入りません。バラの根は鉢の底のほうに集まっていますので、そこまで水が届かなければ、やっていないのと同じです。鉢底の穴から水が流れ出るのを目で確認してください。

 最高気温が30度を超える日は、夕方にもう一度見てください。 夕方の水やりは、株元にそっと注ぎます。この時期に葉を濡らして夜を越すと、黒星病を呼び込みます。ホースを頭からかけるのは朝だけにしておきましょう。

 日中の水やりは、原則としてしません。 鉢のなかの水が温まって、根を傷めます。ただし、昼にぐったりしおれているのを見つけたときは別です。そのまま夕方まで待たせるほうが害が大きいので、日陰に移してから水を与えてください。

 判断は、鉢を持ち上げて決めます。 ここでは持ち上げチェックと呼んでおきます。水をたっぷりやった直後の重さと、乾いたときの重さを一度覚えてしまえば、指で土をさぐるより早く、確実にわかります。土の表面は風で乾いていても、中は湿っていることがよくありますので、見た目だけでは判断できません。

 受け皿に水を溜めたままにしないでください。 根が常に水に浸かると、酸素が足りずに根腐れを起こします。旅行などでどうしても溜めておく場合は2日までとし、鉢底石を敷いた上に鉢を置いて、直接浸からないようにします。蚊の発生源にもなります。

乾かしやすい鉢、乾かしにくい鉢

 同じ庭でも、乾き方は鉢によってまるで違います。

 素焼きやテラコッタの鉢は側面からも水が抜けますので、プラスチック鉢の1.5倍ほどの速さで乾きます。見た目は美しいのですが、9月は毎日の確認が要ります。

 7号以下の小さい鉢とミニバラは、土の量そのものが少ないので、真夏でなくても一日で乾ききります。ミニバラは剪定から35日ほどで咲きますから、ちょうど今が蕾をつくっている真っ最中です。

 根が回りきった鉢も要注意です。数年植え替えていない株は、鉢のなかが根でいっぱいになり、水を蓄える土がほとんど残っていません。水をやっても素通りしていくような感じがあれば、根詰まりを疑ってください。応急処置としては、バケツに5分ほど鉢ごと浸けて、底から水を吸わせます。植え替えは涼しくなる10月下旬以降にします。

 葉の大きいイングリッシュローズは蒸散量が多く、乾きが速い傾向があります。'グラハム・トーマス'や'ジュード・ジ・オブスキュア'のように株が大きくなる品種は、鉢の大きさに対して葉の量が過剰になりがちですので、置き場所を半日陰に寄せるだけでもずいぶん違います。

地植えのバラも、安心はできません

 地植えは鉢より乾きにくいので、基本的には自然の雨にまかせて大丈夫です。ただし、9月に一週間雨が降らなければ、水をやってください。

 このとき、ホースを株元に置いて5分ほど流しっぱなしにするのがこつです。株1本あたり20リットルから30リットルは必要です。じょうろで2杯かけた程度では、地表を濡らしただけで終わります。

 浅いところにだけ水をやり続けると、根が水を求めて上に伸びてきます。すると、次に乾いたときにいっそう弱くなります。回数を減らして、一度にたっぷり。これが地植えの原則です。

 株元にバーク堆肥やワラを3センチほど敷いておくと、乾きがずいぶん遅くなります。雨のときの泥はねも防げますので、黒星病の予防にもなります。

水と一緒に、9月にやっておくこと

 水やりだけでは花は大きくなりません。次の3つを同時に進めてください。

 芽かきをします。1本の枝から芽が3つも4つも伸びてきたら、勢いのよいものを1つか2つ残して、残りは指でかき取ります。数を絞るほど、残った蕾に水も養分も集中します。大きな花を見たい方は1つに、たくさん咲かせたい方は2つに。これは好みで決めてください。

 肥料は9月中旬までに終えます。 蕾がふくらむこの時期の追肥は効きますが、遅くなると花が咲くころに枝ばかり伸びてしまいます。緩効性の固形肥料なら中旬まで、液肥なら10日に一度を9月いっぱいまでが目安です。10月に入ったら、窒素分の多い肥料は控えてください。なお、乾いた鉢に液肥を入れると根を傷めます。水をやってから、あるいは水やりの直後に与えるようにしましょう。

 黒星病の予防を続けます。9月は秋の長雨と台風がある月です。雨が続くと、下の葉から黄色くなってぽろぽろ落ちていきます。葉を失った株は蕾を育てられません。薬剤は同じものを続けると効かなくなりますので、2種類か3種類を順番に使ってください。落ちた葉は必ず拾って処分します。地面に残った葉が、来年の感染源になります。

しおれさせてしまったときの手当て

 見つけたときには、すでにぐったりしていた。そういう日もあります。慌てずに、順番どおりにやってください。

 まず、日陰に移します。水をやる前に、これが先です。しおれた状態で直射日光に当て続けると、葉が焼けます。

 次に、鉢ごとバケツに浸けます。土が乾ききっていると、上から水をやっても水路ができて素通りしてしまいます。鉢の高さの半分ほどまで水を張ったバケツに30分ほど置き、底から吸わせるのが確実です。

 そのあと、蕾を減らします。傷んだ株に全部の蕾を咲かせようとさせるのは酷です。小さい蕾や脇の蕾を摘んで、株の負担を軽くしてください。今年の花を1つか2つ捨てるかわりに、残りがまともに咲きます。

 このときに肥料を足してはいけません。 弱った根に肥料は毒です。回復して新しい葉が動き出すまで、水だけで待ちます。1週間ほどで判断がつきます。

まとめ

 9月のバラで覚えておいていただきたいのは、3つです。

 蕾の大きさは今決まっている。米粒から小豆ほどの蕾がふくらむこの時期の水切れは、あとから取り返せません。

 株の需要は真夏より大きい。葉が増え、残暑が続き、日ざしが横から入るようになります。涼しくなったという体感で水やりを減らさないでください。

 そして、朝たっぷり、夕方は株元に。持ち上げチェックで乾きを見て、受け皿に溜めない。やることはこれだけです。

 夏剪定という大仕事のあとの、地味な1か月です。しかし10月に花を並べたとき、しっかり水をもらった株と、二度ほど乾かされた株の差は、誰の目にもはっきりわかります。今年の秋バラを大きく咲かせるかどうかは、これからの30日で決まります。

 朝の水やりのついでに、鉢をひとつずつ持ち上げてみてはいかがでしょうか。1分もかからない作業ですが、10月の庭がずいぶん変わります。

 なお、大きく咲いた秋バラをさらに引き立てるには、株元や周囲の植栽が効いてきます。バラの足元に合う植物の選び方や、水やり・施肥の年間の組み立てについては、拙著「バラの魔法 自宅の庭をプロの技で美しく彩る バラ好きのための31の裏技」でくわしく書いています。Kindle Unlimitedなら追加料金なしでお読みいただけますので、あわせてご覧いただければうれしいです。




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