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【冒頭大賞】『タイタンの妖女』冒頭には人類の歴史が詰まってる

冒頭は大事。
とても大事。

という考え方は
今とても当たり前になっていますね。
だから、どんな作者も必死になって
心に刺さる冒頭を
練りに練って書く。

だから、素晴らしい冒頭が
増えてきました。

そんなこんにちにした第1人者の
一人が、今日ご紹介する
カートヴォネガットJrです。

そんなヴォネガットJrの中でも
『タイタンの妖女』の冒頭は
読者をわくわくさせてくれます。

「いまではどんな人間も、人生の意味を自分の中に見つけ出す方法を知っている。
しかし、人類がいつもそう運がよかったわけではない。ほんの一世紀たらずの昔まで、男も女も自分の中にあるパズル箱にやすやすとは近づけなかったのだ。
魂の五十三の入口のうち、たった一つの名もいえなかったぐらいである。
あらゆる人間の中にひそむ真実に気づかずに、人間は外をさぐった。ーーひたすら外へ外へと突き進んだ。
人類は先発隊を外へ外へとくりだした。そして、ついに先発隊を宇宙空間へ、無限の外界の、色もなく、味もなく、重さもない海へと投げこんだ。

外界は、ついに、その想像上の魅力を失った。
残された探測の場所は内界だけとなった。未知の国として残されたのは、人間の魂だけとなった。」

カートヴォネガットJr
翻訳者は浅倉久志。ハヤカワ文庫。

人間が神様を求めて
世界中を探索していた時代を
大航海時代というのなら、
魂の入口を探す
一大ムーブメントとして
19世紀末から始まる
フロイトやユングの心理学は
明らかに魂の探索でしょう。

そうして、
大航海も心理学も
人間の真実を探る手立てとしては
そろそろ魅力を失いつつある、
というのが現在なのでしょうか。

ヴォネガットJrの作品は
そんな時代の
新たな探索を始める物語という訳です。

ヴォネガットJr最大の傑作
『タイタンの妖女』は
こうして、ヴォネガットJrが
読者の期待をピークに引き上げてから
語られるのです。

この冒頭によって、
読者の期待は最大値に達してしまいます。
なんて大胆な!
なんて無謀な!
なんて純粋な!

ヴォネガットJrも、
よほど自信や手応えが
あったのでしょう。

その冒頭による期待値を
超える自信がないならば
人はこんな自信満々な冒頭を
書けないですものね?

私は『タイタンの妖女』を読む度、
ヴォネガットの
ニヤリと勝ち誇った顔を
思い浮かべてしまいます。

それこそまさにタイタンの微笑。

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