三回泥棒に入られて、自分のものだけ盗まれなかった
大学生のとき、実家に三回泥棒が入った。しかも短い期間に、続けてだった。住宅街で、目の前が公園、交番も近い場所だったのに入られた。
警察が言うには、泥棒は住んでいる人間の生活のパターンを見ているらしい。正面玄関から入られたこともある。鍵をくるっと回すと外れてしまう手口で、当時流行っていた。
家族が何人で、誰がいつ家にいるのか。目の前の公園から、観察していたのかもしれない。
当時はパソコンがまだ高いもので、父のノートパソコン、母と姉の貴金属が持っていかれた。
三回入られて、僕のものは一度も盗まれなかった。
僕の部屋にも大事なものはいくらでもあった。漫画、それに竹内力のDVDボックス。ミナミの帝王と、カオルちゃん最強伝説。泥棒はそれを見て、何も持っていかなかった。
その頃、静岡出身の友人の家に、週に二回くらい泊まっていた。理工学部のキャンパスから、わざわざ離れた場所に部屋を借りていた。
溜まり場になるのが嫌だったらしい。その部屋は僕の通うキャンパスのすぐ近くで、僕が住み着いた。
友人は鍵を閉めなかった。静岡の人間は鍵を閉めないんだ、と何かあるごとに言っていたが、本当かどうかは知らない。
三回泥棒に入られた家から通っている人間としては衝撃だったが、大学生の一人暮らしで盗る価値があるものといえばゲーム機くらいで、デスクトップのパソコンはモニターがでかすぎて抱えて出ていくのは無理だ。
いつからか、僕も出るときに、合鍵で閉めなくなっていた。
一人暮らしを始めてから、僕は必ずオートロックの物件に住むようにした。実家から、漫画と竹内力のDVDボックスも持ってきた。オートロックに住むと、部屋の鍵をますます閉めなくなった。
ある日、鍵を持たずに外に出てしまい、管理会社に電話して締め出されたと伝えた。お急ぎであれば本当は公開していないんですが、と四桁の番号を教えてもらった。
番号を教えてくれと言われたことが、三回ある。
郵便受けのところで住人と一緒になり、僕がピピピと押して開けると、今の番号を教えてもらえませんかと聞かれる。事情があって教えられないんです、と答える。そのあとの会話は、弾まない。弾ませる方法が、番号を教えることしかない。
早朝、ロードバイクでマンションに戻ってくると、オートロックの前で酔っ払った女性が寝ていたこともある。住人の方ですかと尋ねると、違うと言う。僕がピピピと開けると、その番号を教えてくれと言われた。
お引き取りください、と人生で初めて口にした。
僕は、教えなかった。部屋の鍵は、閉めていなかった。
その癖は、結婚してなくなった。子どももいるから、施錠はしっかりしている。
竹内力のDVDボックスは、結婚してからもしばらく家に置いていた。妻に邪魔だと言われて、メルカリに出した。
買ったときと、ほとんど同じ値段で売れた。
