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息子はコナンを容疑者にした

十歳の息子が、名探偵コナンを観なくなった。

今年の四月ごろから、息子は毎日Netflixでコナンを観ていた。学校から帰って、宿題のあと、寝るまでの時間はほぼ全部コナンだった。どのくらい観たのか聞いたら、二ヶ月で四百話くらい、と言った。一日に七話近い。

同級生にもコナン好きがいて、過去の放送を最初から一気に観るのは、今時の小学生にはめずらしくないらしい。三十年分の過去回を、子供は第一話からどんどん観ていける。

僕らの子供の頃は、月曜の七時半なら月曜の七時半に、茶の間のテレビの前に座っていなければならなかった。見逃したら、次は一週間先だった。

息子は、夏になって観なくなった。理由を聞いたら、少し考えてから言った。

人が死にすぎる。コナンの周りだけで。

息子がまだ観ていた六月、コナンとプリキュアのコラボ回があった。5月31日のプリキュア側にコナンと蘭と小五郎が出て、6月6日のコナン側にキュアアンサーが出た。

プリキュアの世界にコナンを出すのは簡単だ。事件が起きて、その場に眼鏡の小学生が一人立っていればいい。

コナンの世界には超常現象が存在しない。幽霊が出ても人間のトリックに落ち、怪人が現れても中身は犯人だ。そこに魔法で変身する女の子をどう置くのか。読売テレビのプロデューサーも対談動画で、薬で小さくなる以外はオカルトも超常現象もNGの世界にプリキュアを出すことに悩んだと明かしている。

コナンたちの街でも『プリキュア』はテレビで放送されているアニメで、歩美ちゃんはそのファンだ、という設定だった。魔法少女は実在しない。テレビの中にいる。そのうえで本編に現れたキュアアンサーは、怪盗キッドの変装だった。

変装なら、コナンの世界の決まりのままでいられる。

息子に、デスノートの話をした。二十年以上前に流行ったマンガだ。

ノートに名前を書けば、その人が死ぬ。夜神月という高校生がそれを拾い、犯罪者を次々に消していく。世界中で犯罪者だけが不自然に死んでいく。その数と偏りから、Lという探偵が、これは一人の人間の仕業だと見抜く。

これ、コナンに当てはまるんじゃない?

息子の瞳孔が少し開いた。あー確かに、と言って、すらすら話し出した。

アニメは三十年やってるけど、アニメの中ではまだ一年も進んでないんだよ。三百六十五日しかないのに四百人以上死んでるんだから、コナンの周りでは毎日誰か死んでるってことじゃん。

調べると、作者の青山剛昌もインタビューで、コナンの世界ではまだ半年くらいしか経っていないと話していた。

コナンの行く先では、必ず人が死ぬ。修学旅行でも、正月でも、喫茶店でも死ぬ。半年のあいだ、一人の小学生の周囲だけで、何百人も死んでいる。

Lなら、その小学生を真っ先に呼ぶ。死者の数と偏り、それ自体が証拠になる。目暮警部は一度もコナンを疑わない。毎回、正しい推理を持ってきてくれるからだ。

コナンの世界に超常はない。プリキュアを出すときでさえ守った決まりだ。だとすれば、あの死者数は偶然でなければ、人間の意思だ。

コナンが、デスノートを持っているんじゃない?

息子が口を開けたまま僕を見た。少し間があって、あ、そっか、と言った。にやにやしている。

デスノートを持ったコナンなら、また観る?

息子は首を振った。

それはもう、コナンじゃないじゃん。

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