所属している3年間で、完成しなくていいと思っている
所属している3年間で、完成しなくていいと思っている
中学生を指導していると、よくこんな言葉を耳にします。
「もう2年生なんだから」
「最終学年なんだから」
「3年生なら、これくらいできないと」
もちろん、学年が上がれば求めるものは変わります。
1年生と3年生にまったく同じものを求めるわけではありません。
ただ、僕自身は、選手を「中学3年間で完成させなければならない」とは思っていません。
むしろ、完成させようとしすぎないことも大切だと思っています。
3年間はゴールではなく、道程
中学1年生で入ってきて、中学3年生で卒団する。
クラブから見れば、選手と関われる期間には区切りがあります。
でも、その選手のサッカー人生はそこで終わりではありません。
高校でもサッカーをするかもしれない。
大学まで続けるかもしれない。
プロを目指す選手もいるかもしれない。
社会人になってもサッカーを続けるかもしれません。
そう考えると、中学3年間だけを切り取って、
「この3年間で完成させる」
という考え方には、少し違和感があります。
僕たちが預かっている3年間は、その選手の長いサッカー人生の途中にある時間です。
だから僕は、
将来のための階段を、一段ずつ登っていく道程になればいい
と思っています。
「最終学年だから」という理由だけで急がせたくない
「もう2年生なんだから」
「もう3年生なんだから」
「最終学年なんだから」
こういう言葉が必要な場面もあります。
責任感や自覚を持たせるためには、学年に応じて要求を高くすることも必要です。
でも、
学年が上がったことと、その選手の成長段階が進んだことは、必ずしも同じではありません。
身体の成長も違う。
技術の習得速度も違う。
サッカーを理解する速度も違う。
精神的に成長するタイミングも違う。
中学年代は特に、同じ学年でも成長の個人差が非常に大きい時期です。
だから「3年生だから」という理由だけで、全員に同じ完成度を求める必要はないと思っています。
今できることだけで評価しない
中学生年代では、身体が大きくて速い選手が活躍することがあります。
逆に、身体の成長が遅く、今はなかなか試合で力を発揮できない選手もいます。
理解するまでに時間がかかる選手もいます。
技術を身につけるまで何度も失敗する選手もいます。
でも、それだけで将来が決まるわけではありません。
今すぐできるようになることより、
考える習慣をつけること。
自分で問題を解決しようとすること。
失敗しても挑戦すること。
サッカーを理解しようとすること。
自分の身体と向き合うこと。
練習する習慣を身につけること。
そういうものを中学生の間に積み重ねておけば、高校年代になって急激に伸びることもあります。
逆に、中学生の段階で「勝てる選手」にすることだけを優先してしまえば、その先で伸びるために必要なものを身につける時間を失ってしまう可能性もあります。
階段を飛ばして登らせない
指導者としては、早く成長させたくなります。
できなかったことができるようになれば嬉しいし、チームとして結果も出したい。
ただ、成長には順番があると思っています。
1段目を登ったら2段目。
2段目を登ったら3段目。
隣の選手が5段目にいるからといって、まだ2段目にいる選手を無理やり5段目まで引っ張り上げる必要はありません。
その選手には、その選手の速度があります。
大切なのは、
今どこにいるのかを見て、次の一段を用意すること。
指導者の仕事は、全員を同じ速度で階段の上まで連れていくことではないと思っています。
卒団するときに「未完成」でいい
極端に言えば、うちを卒団するとき、選手は未完成でいいと思っています。
というより、中学生で完成している選手なんていないはずです。
まだ足りないものがあっていい。
できないことがあっていい。
課題が残っていていい。
ただし、
「自分には何が足りないのか」
「これから何を身につければいいのか」
「どうすればもっと上手くなれるのか」
それを自分で考えられる選手にはなってほしい。
そして、高校へ行っても、その先へ行っても、自分自身で階段を登り続けられる選手になってほしいと思っています。
僕たちの3年間の成果は、3年後には分からないかもしれない
これは育成年代の指導の難しいところでもあります。
自分たちの指導が本当に良かったのか。
それは、卒団するときには分からないのかもしれません。
高校生になったとき。
大学生になったとき。
もっと先かもしれません。
「あの3年間があったから、今の自分がある」
選手がいつかそう思ってくれたなら、それも育成の一つの成果だと思います。
クラブに所属している3年間だけを見れば、もっと早く結果を求める方法もあるかもしれません。
でも僕は、選手の成長をクラブの在籍期間だけで区切りたくありません。
3年間で完成させるのではなく、3年間でその先へ続く階段をつくる。
一段でも二段でもいい。
その選手が入ってきたときよりも高い場所に立ち、さらにその先へ自分の力で登っていける状態で送り出す。
それが、育成年代のクラブとして大切にしたいことです。
